サイエンス作家として有名な竹内薫先生は、「トライリンガル教育」を推奨するYES International Schoolの校長という側面ももっています。
では「トライリンガル教育」とはどういったものなのでしょうか?この連載では、このトライリンガル教育を紐解きながら、今後のプログラミング教育の在り方を探っていきます。

竹内薫
1960年東京生まれ。サイエンス作家。東京大学、マギル大学大学院卒。理学博士。YES International School校長。最新刊は『「プログラミングができる子」の育て方』。
http://kaoru.to/

バイリンガルとモノリンガル

よくバイリンガルとかモノリンガルという言葉を耳にします。バイは「2つ」、モノは「1つ」、リンガルは「言語ができること」。つまり2つの言語を操る人と1つの言語しかしゃべらない人、という意味ですよね。

欧米の人の多く、とくにお医者さんや弁護士さん、大学教授などの知識層は、たとえばフランス語という自国語の他に英語をしゃべる人が多いので、バイリンガルだと言えるでしょう。あるいはカナダのケベック州などもフランス語と英語を操る人が多いので、バイリンガルであることが当たり前です。

日本には、いわゆるインターナショナルスクールがたくさんあって、その多くは英語で授業を行なっています。

そこに日本人の子どもが通うと、当然のことながら、母国語である日本語の他に英語が堪能になりますから、長じるとバイリンガルになるわけです。

日本人は英語にコンプレックスをもっている

日本人は、悪名高き学校英語のせいで、英語にコンプレックスをもっている人が多いようです。これはとても残念なこと。

すでに例に出した欧米人やカナダ人のバイリンガルの人々は、必ずしも完璧に2つの言語を操っているわけじゃありません。ほとんどのバイリンガルは、母国語が強く、プラスアルファとして2つ目の言語で自由に意思疎通が図れます。

2つ目の言語の発音も、母国語の強い訛りが残っていたりしますが、とにかく「通じればいい」と開き直ったバイリンガルが多いようです。ですから日本人も、日本語訛りのまま、とにかく英語をバンバン使っていけばいいのです。

おそらく、中学と高校で6年間も英語を勉強した人は、世界でもトップクラスの英語の語彙をもっているし、文法も完璧に近いのではないでしょうか。それなのに「私は日本語と英語のバイリンガルだ」と胸を張ることができないのは、長年の間に植え付けられた苦手意識が邪魔をしているせいだと私は考えています。 

さて、私が主宰するYES International Schoolというインターナショナルスクール(フリースクール)は、年長さんから小学六年生までが通ってきてくれますが、サイエンスは英語、算数は日本語、プログラミングは英語、社会は日本語という具合に、授業の半分は日本語、半分は英語で行なっています。

画像1: 日本人は英語にコンプレックスをもっている

幼少時から普通に日本語と英語の環境で育つので、子どもたちは、早期バイリンガルに育っていきます。実際には、学校の外、とくに家庭内では日本語環境のことが多いので、ほとんどの子どもは日本語の方が強くなりますが、それでも、アメリカ人やカナダ人の子どもと同じように、英語をしゃべってコミュニケーションを取ることを躊躇せず、自分が知っている基本単語だけで「なんとかしよう」とします。

もちろん、英語に対する苦手意識とも無縁です。 

ウチだけでなく、日本にはたくさんのバイリンガル小学校がありますから、ここまでの話は、特別なことは何もありません。

YES International Schoolが他のインターナショナルスクールやバイリンガルスクールと大きく違うのは、3つ目の言語として「数学=プログラミング」を採用している点です。3つは「トライ」なので「トライリンガル教育」と銘打っています。

画像2: 日本人は英語にコンプレックスをもっている

「トライリンガル教育」とは

それにしてもおかしな表現ですよね。数学=プログラミングの「=」(イコール)っていったい何でしょうか。

実は、いわゆる理数系の人間にとって、今の時代、数学ができるだけでなく、数式をプログラムとして「表現」し、コンピュータに膨大なデータ処理をさせたり、人工知能(AI)を機械学習させることはat当たり前になっています。

数学はもともと「自然現象を記述する言語」ですが、それだけでなく、エンジニアが自動車やカメラや機械を設計する際にも駆使されますし、仮想通貨の計算や株価変動を計算するのにも使われます。インターネット関連の仕組みの背後には必ず数学が隠れています。

そして数学言語を具体的なサービスや仕組みとして「表現」するのが、コンピュータ・プログラムなのです。

世界中で第四次産業革命が進行中です。世界とビジネスをするため、すなわちグローバルな、空間的な広がりを手にするために必要な言語が英語だとするならば、これから訪れる未来、すなわち時間的な広がりを支配するために必要な言語が「数学=プログラミング」なのです。

画像: 「トライリンガル教育」とは

 

2020年度から日本ではプログラミングが義務教育に組み込まれます。また、たとえばイギリスではすでに2014年からプログラミングが義務教育化されています。他の先進国でも同様の動きが見られます。

第四次産業革命では、これまでとは異なる次元のコンピュータ技能が必要とされます。肥大するAI産業やIoT産業は、「数学=プログラミング」ができる人材の雇用を拡大し続けます。旧態依然とした技能訓練だけでは、AIに仕事を奪われて失業する恐れが大きいのです。

今の小学生が成人して社会に出るころ、彼ら・彼女らの65%は、現在存在しない職業に就くという予測があります。
そして人類がはじめて目にする新種の職業の多くは、数学=プログラミング技能を必要とします。

第四次産業革命後の世界で生き残るために学ぶべき、日本語、英語の次に来る第三の言語が数学=プログラミング言語です。いまこそ、バイリンガルを超えるトライリンガル教育が強く求められているのです。

(写真・北本貴子)

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