小学生がプログラミング能力を競うイベント「GPリーグ」の競技委員長を務める竹林暁氏にインタビュー。前編では、大会が開催されるにいたった経緯と、プログラミング教育の現在について聞きました。

GPリーグとは

言語を覚えるだけでは意味がない、プログラミングを使って何ができるのかーー子どもたちが、自分の得意分野をみつけるきっかけとなるイベントが、2017年から開催されてます。
小学生がプログラミング能力を競うイベント「GPリーグ」です。

子どもたちが、自ら、情報を整理し、自分の頭で考える力を身につける」ことを目的とするイベントで、2017年には千葉県で開催。その大会の模様は千葉テレビやBSフジでも放送されました。

2018年は規模が拡大し、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の一都三県で開催。7月から予選が始まっており、9月22日には、地区予選を勝ち抜いた5チームが集まり、一都三県大会の最終決戦が行われる予定です。

この大会について、競技委員長を務める竹林暁 (たけばやし・あきら)氏にインタビューを敢行。前編では、大会が開催されるにいたった経緯と、プログラミング教育の現在についてお話をうかがいました。

画像: GPリーグとは

プログラミングはゴールではなく、その技術で何をするのかが重要

――まず、竹林さんの来歴について、教えてください。

竹林 東京大学在学中に、フリーエンジニアとしてプログラミングの仕事や、学習塾で理系科目の講師をしていました。エンジニアの仕事は卒業後も続けていたのですが、あるときに自分のプログラミングスキルと、学習塾時代に培った子どもに教えるいうスキルを合わせることを考えて、2011年からプログラミングスクール「TENTO」を運営しています。

――「GP リーグ」はどういった経緯で始まったんですか?

竹林 千葉県のUHF放送局である千葉テレビ放送で新番組の募集があって、当時一緒にプログラミング・イベントなどの活動をしていたフジテレビキッズ(当時)の武藤裕介氏が、「GPリーグ」の企画で応募し、採用されたのが始まりです。

千葉県の柏市では、1980年代から先進的なプログラミング教育が行われていたので、柏市教育委員会の先進的な取り組みを全国に広めたいという思いが、企画の背景になっています。

――一部の地方において、なぜこのように進んだプログラミング教育が行われていたのでしょうか?

竹林 日本で先進的なプログラミング教育が行われる地域では、かならず有志で主導される方がいらっしゃいます。そしてその弟子筋が脈々と受け継いでいっている。つまり、たまたま必要性に気づいた方がいた地域でのみ、プログラミング教育がスタートが行われているという状況です。

最近は、東京都内でも似たような例が出てきていますが、やはり校長先生個人の主導による部分が大きいですね。どこの学校とは言えないんですけど、ポケットマネーでパソコンの設備を準備する先生もいるほどです。

――イベント開催の背景には、2020年に小学校でプログラミング教育が必修化もあると思います。その2020年、学校ではどのような教育が行われると思いますか?

竹林 断言はできないですけど、やはり“知識偏重”の教育になる可能性があると思います。他の科目と同じで、結局はどの先生に教わるかによってかなりばらつきがあるでしょうが、コンピュータに使われる用語を覚えるだけの授業になる場合もある。

――すでにそういった事例があるのでしょうか?

竹林 そうですね。すでに一部の地域では実験的にプログラミング教育の授業が始まっていますが、残念ながら、「プログラミングには、『繰り返し』『条件分岐』『順次実行』が大事なんだよ。テストに出るから覚えましょう、じゃあ何回も暗証して…」みたいな、ただ覚えるだけの授業になる場合もあるそうです。

画像: プログラミングはゴールではなく、その技術で何をするのかが重要

――そういった“知識偏重”の授業では、どのような問題があるのでしょうか。

竹林 “知識偏重”の文脈では、プログラミング言語を覚えることがゴールであるように語られてしまうんです。でも、重要なのはプログラミング言語を覚えることそれ自体ではなくて、それを使って何をするか。アプリを作るとか、シミュレーションを使って何かの仕事に活かすとか…。さまざまな可能性があるなかで、その「何をするか」の課題設定のひとつとして、プログラミングの技術や発想力を競う大会を設定したかった。そういった思いも、「GPリーグ」開催の背景のひとつです。

親の言うことを聞いても意味がない時代が来ている

画像1: 親の言うことを聞いても意味がない時代が来ている

――他のプログラミングコンテストでは、アプリを開発して応募してその出来栄えを審査されるものが多いですが、この大会は4種類の競技にチームで出場する形式の大会となっていますね。

竹林 コンテストって、最終的には人と競っているように見えるんですけど、基本的にはひとりでコツコツと作る、いわば自分との戦いの側面が強いんです。計画を立てて、その通りに進めようと試行錯誤をする。

それに比べると、競技っていうのは、相手ありきのもの。相手がどう考えるか、それに対して自分たちがどう動くのかという、コミュニケーション思考です。このコミュニケーションをとる、という部分を大事にするために、競技形式の大会という設計になりました。

――プログラミング能力には、コミュニケーションという要素が重要ということでしょうか。

竹林 プログラミングスクールで教えていて、気づいたことがあります。それは、「子どもたちは誰の影響をうけやすいのか」という点です。親や学校、塾の先生から「勉強しなさい」って言われても、立場が違う相手からの言葉はリアルには感じられず、なかなか響かないわけです。

では、誰から影響を受けるのか。それは身近な友人たちです。子どもたちを見ていると、優秀な子が個別に成長していくというより、何人かのグループが形成されて、そのなかで刺激を与えあって育つ。要するに、友だち同士で影響を与え合うことがいちばんの成長につながる。これがスクールを運営した経験則です。

画像2: 親の言うことを聞いても意味がない時代が来ている

――たしかに、言われてみると他の部活やクラブでも、友だち同士の刺激は大きい気がします。

竹林 さらに、「仲間を作るのがいちばん成長につながる」という考え方は、昔に比べて現代のほうがはるかに意味が大きくなっています。というのも、今の時代って子どもが親の言うことを聞く必要があんまりないんです。

――どういうことですか?

竹林 たとえば、親の時代にはスマホがなかった。時代の動きがどんどん早くなっていっているので、親の時代の当たり前を押しつけることが、効果的じゃないんです
。それこそ、いい大学に行っていい会社に入るんだといっても、親の言う「いい会社」がバンバン潰れているわけです。

――では、子どものために親ができるのは、どんなことでしょうか?

竹林 さきほどの話に戻りますが、とにかく仲間を作らせること。今の時代で、一緒に立ち向かうライフラインっていうのは仲間だと思うんです。仲間がいると、同じ問題意識をもって対応することができます。

――仲間をつくったら、目指すものがあると望ましい。それが「GPリーグ」であると。

竹林 そうです。参加の単位が1チーム4人にしてあるのは、仲間づくりの場として機能してほしいと考えているからです。あと、コミュニケーションを重要視する理由はもう一つあります。

――何でしょうか?

竹林 スクールで子どもと接していて感じたことなんですが、プログラミングを学ぶ子どもたちは、大人が思っている以上につながりを欲しているということです。

私も小学校時代からパソコン少年だったから心情がわかるんです。もちろんiPhoneアプリが身近になったりIT企業が有名になって、エンジニアという仕事も、昔よりは認められているので、昔とは多少は状況が変わっているとは思うのですが。昔はパソコンを持ってるだけで、女の子から「オタクだ!」って言われて逃げられましたから(笑)。

人とのつながりはネットで得られるだろうと思う方もいるでしょうが、ネットは親が使わせてくれないこともよくある。昨今の事件を見ていれば心配するのもの当然です。

そこで、総務省やヤマハ発動機がついている、オフィシャルな大会ということであれば、親御さん方も安心して参加させやすいと思うんです。うまく子どもたちがつながる回路になるといいな、と願っています。

また、ヤマハ発動機が協力している海洋研究開発機構の深海探査プロジェクト見学会や、DeNAのIT業界お仕事体験といった、副賞も用意しています。これも、プログラミングに興味がある子どもにはうれしいポイント。

子どもたちって、我々が思っている以上に、大人たちの仕事について興味をもっているんです。これらの会は、実際に体験した子たちはもちろん、同行した保護者からもとても好評でした。

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後編では、大会で行われる4種目の概要や、それぞれの種目が子どもたちのどんな才能を発掘するのかなど、さらに踏み込んで聞いています。おたのしみに。

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