2018年3月までアメリカのシリコンバレーの小学校に子どもを通わせていた経験をもとに、シリコンバレーにおけるSTEM教育の実際についてレポートします。第2回は、現地校のクラス担任が授業においてITとインターネットをどう活用しているかについて、レポートします。

クパチーノ学区のITポリシー

前回の連載では、STEM教育をどう設計するかはクラス担任の考え方次第、ということをお話ししました。ただし各学校共通の決めごとやポリシーは、学区レベルで決められています。

新年度となる8月、クパチーノ学区にあるLincoln Elementary Schoolの保護者には「Opening Day Packet」という冊子が配布されました。

ここには新学年・新学期を迎えるにあたり、必要となる学校内でのポリシーや取り決めについて記載されています。具体的には校内におけるセキュリティの確保、人種差別やセクシャル・ハラスメントの防止、ボランティア、給食について
など、多岐に渡ります。

その中でITに関しては「Student Responsible Use of Technology Policy」(テクノロジー利用における生徒の責任に関するポリシー)という項目があり、生徒と保護者がこの内容に同意する旨の署名文書を提出します。

このテクノロジーポリシーは、2年生以下と、3〜5年生、6年生以上で内容が異なりますが、それぞれITやインターネットを扱う上で必要となる約束事、具体的には下記のような内容が決められています。

・コミュニケーション(インターネットでシェアできる内容)

・デジタルエチケット(授業中にやっていいこと、悪いこと)

・著作権・肖像権の扱い、不適切なコンテンツの扱い

・他の生徒の作ったデジタル上の成果物をコピーしていいか

・メールやウェブサイトのパスワードを親や担任と共有していいか

ITリテラシー教育とか、小学生には漠然としていて難しく感じますが、こういったことを具体的にキチンと決めてあるというのは、アメリカらしくていいと思いました。

クラス担任 Eller先生のホームページ

日本だとクラス担任とのコミュニケーションはほとんどが紙・プリントですが、4年生の担任だった Luth Eller先生は、すべての情報をホームページに載せていました

前回紹介したSTEM学習サイトのリンクや、算数の宿題PDFのダウンロード、推奨図書リストや読書記録のとり方など、豊富なコンテンツが揃っています。

英語での読み書きが上達していない駐在員の子どもにとっては、毎日の宿題をこなすだけでもとても大変です。毎週末は親子で宿題を一緒にしないと、ついていけないという状況もあり、普段の仕事の合間や夜にホームページからクラスのプロジェクト課題をチェックできるのはとても便利でした。

実は、クパチーノ学区のクラス担任は、毎年同じ学年をもつことが普通で、Eller先生も毎年4年生の子どもを受けもっています。なので子どもの学習段階に応じたマテリアルやカリキュラムは、毎年同じものを流用することができて、手作業で毎年同じプリントを配るよりも、ホームページのコンテンツに手を加えていったほうがクラス運営も楽なのです

G Suite for EducationやWikiを活用する4年生の授業

Googleが無料で提供する学校向けコラボレーションツールに「G Suite for Education」というのがあります。クラスの生徒全員にはクパチーノ学校区(cusd.org)のGoogleアカウントが用意されて、3年生になった段階から息子のクラスでも活用されていました。

4年生のクラスで出されるプロジェクト課題の一部はインターネットで提出することもあります。たとえばカリフォルニア州の地理についてレポートをまとめる、蜂の生態についてインターネットで調べた内容についてプレゼンテーションを作って発表する、などです。

ときには同じクラスの同級生同士で、Google Hangoutのチャットを使って相談してアイデアをまとめたり、Wikiに進捗をレポートしたりすることもあります。その際、クラス担任からは「Wikiに書いた内容はインターネット上にあり、クラスメイト以外の誰もが閲覧できること」「そのため実名ではなくあらかじめ決めておいたニックネーム(蜂の名前)で投稿すること」など、正しく指示されます。

学区で設定されるテクノロジーポリシー※を踏まえて、先生同士でも意見交換を行い、クラスの現場でも工夫されていることが親の目線からも見て取れます。

※なおWebサイトの利用においては、COPPA(児童オンラインプライバシー保護法:12歳以下の子どもの個人情報保護を定めた連邦法)およびCIPA(児童のインターネット利用における保護法)に準拠するよう学区から担任に指示が出ています。

STEMを語る前に、メディアリテラシーを身につける

さて、公教育であるLincoln Elementary Schoolでは、ロボットやプログラミング教育などの「STEMらしい」授業はあまりなかったと思います※。小学校の段階では、一生使えるITリテラシーを身につけることが最重要という前提で、カリキュラムが設計されているのではないかと思います。

小学校3、4年生ではすべての子どもに論理的な思考を育むにはまだ早く、サイエンスも岩石だったり昆虫だったり、日本の理科や社会とさほど変わらない内容です。

※ただしクパチーノ学区でも、一部の小学校ではGoogleのコンピュータ・サイエンス・カリキュラムGoogle CS Firstを使った授業に取り組んでいるようです。

他方、この地域には、MakerFaireなどといったものづくり系のイベントや、博物館での展示、夏休みのサマーキャンプなど、より実践的なSTEM関係の展示やプログラムが豊富にあり、親子でよく行ったりしていました
。夏休みは日本の子どもたちと同様、自由研究の宿題が待っています。

次回はSTEM的視点から見た、シリコンバレーの子どもたちの夏休みの過ごし方について書きたいと思います。

画像1: STEMを語る前に、メディアリテラシーを身につける
画像2: STEMを語る前に、メディアリテラシーを身につける
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