2018年3月までアメリカのシリコンバレーの小学校に子どもを通わせていた経験をもとに、シリコンバレーにおけるSTEM教育の実際についてレポートします。第3回は、シリコンバレーで毎年行われる「Maker Faire Bay Area」についてです。
画像1: 大人顔負けの展示とプレゼン。子どもたちのMaker Faire Bay Area【シリコンバレーのSTEM教育】

アメリカのシリコンバレーで、Maker(=ものをつくる人たち)の集まり「Maker Faire Bay Area」が毎年5月に開催されます。日本でも夏休みの終わりである8月に、東京ビッグサイトでMaker Faire Tokyoが開催され、多くのものづくりの人たちが自分が作ったものを展示するために集りますが、本家であるアメリカではどんな雰囲気なのでしょうか。この世界最大のものづくりイベントを、STEM教育的な観点から見てみましょう。

"Greatest Show and Tell on Earth"

世界中で開催されているMaker Faire。サブタイトルは「Greatest Show and Tell on Earth」
です。直訳すると「地球最高の展示と説明」という意味ですが、一見ちょっとわかりにくいですよね。

画像1: "Greatest Show and Tell on Earth"

「Show and Tell」というのは主に北米で行われる教育科目のひとつで、クラスの子ども一人一人が持ちまわりでクラスメートの前でプレゼンをする授業のことです。自分のお気に入りのモノを見せながら、そのモノについて他人にわかるように、数分間口頭で説明します。

Maker Faire Bay Areaでは3つのプレゼン用ステージがあり、個人で展示しているMakerたちがブースを飛び出し、聴衆の前でプレゼンをする機会が設けられています。Maker Faireは単に製作した作品を展示するだけではなく、Makerたちによる地球で最高のShow and Tellをやろう、というイベントなのです。その主役は大人だけではありません、子どもたちが行う発表もたくさんあります。

画像2: "Greatest Show and Tell on Earth"

大人顔負けの作品を展示する子どもたち

ここ数年のMaker Faire Bay Areaで気になった子どもたちの作品を見てみましょう。

マインドストームで3Dプリンターをつくってしまった中学生

レゴが出しているロボティクス用キットである「マインドストーム」。マニュアル通りのレゴロボットの組み立てに飽き足らず、オリジナル作品を展示している子どもが多数いました。

その中でひときわ目立ったのは、レゴにグルーガンを組み合わせて、3Dプリンターをつくり上げた高校生(2016年当時)のCyrus Cuencaさんの展示。厳密な数値制御をマインドストームのサーボモーターで実現する技術力の高さに、とても驚いた記憶があります。

画像: マインドストームで3Dプリンターをつくってしまった中学生

LEGO MINDSTORMS 3D printers

https://makerfaire.com/maker/entry/55328/

脳震盪の問題に立ち向かう高校生と中学生の姉弟

アメリカでもっともポピュラーなスポーツ、アメリカンフットボール。激しいぶつかり合いの中で脳震盪を起こす学生は160万人から380万人もいるそうです。これに心を痛めたサンノゼ在住の姉と弟の2人。衝撃センサーを使ったヘルメット用デバイスとスマホアプリ、そしてクラウドまで開発したとのこと。

画像3: 大人顔負けの展示とプレゼン。子どもたちのMaker Faire Bay Area【シリコンバレーのSTEM教育】

Aegis of Soteria
http://www.aegisofsoteria.com/

姉のAaliyah YuさんがMaker Faire Bay Areaのステージで説明する様子を記録したビデオがYouTubeで公開されています。4分弱のプレゼンですが、まさしく"Showand Tell"を大人たちの前でしている雰囲気がつかめると思います。

https://www.youtube.com/watch?v=wlwF6VR4IRo&

学校における銃乱射事件、悩ましい問題をIoTで解決

銃の数が国民の数より多いアメリカ。悲しいことに、学校を舞台にした銃乱射事件が立て続けに起こり、子どもが命を落とすことも珍しくなくなってきました。シリコンバレーのハイスクール(10〜11年生)の子どもたちは、これをSmart Bullet(マイコン搭載の弾)を開発することで、学校など公共の場では発射できない銃をつくりたいと考え、そのプロトタイプをつくってみた過程をパネルにして展示していました。

SmartBullet Project
http://www.smartbullet.org/

残念ながらタイミングが合わず、実際のプレゼンを聞いたり子どもたちと話したりする機会がなかったのですが、パネル展示からは子どもたちが社会課題を自分たちの目線で考え、テクノロジーでどうやって課題を解決するかを議論したことがよく伝わってきました。

Maker Faireでの大人たちの正しい対応とは

私もアメリカ駐在している間は、毎年Maker Faire Bay Areaに参加しましたが、子どもたちによるプロジェクト展示のクオリティの高さ、プレゼンのうまさにとても驚いたのを今でも鮮明に覚えています。そしてプレゼンを聞く大人たちの対応もすばらしいのです。「Good Job!(よくできたね!)」「Amazing!(すごいね!)」「Incredible!(信じられない!)」とその努力を褒めたり、相づちをうったり、質問をしたりするのがとてもうまいのです。

私たち大人も出展を褒められたり、作品に質問されたりすると嬉しくなり、多くを語ったりするものですが、子どもたちにも大人と同様に発表させることで、より大きく成長を促す、そんな1年に1回の場としてもMaker Faireがあるのかな、と考えさせられました。日本で開催されるMaker Faireも親子で見て楽しむだけでなく、子どもたちに発表を通じて学びを与える、そういった場を設けられればよりよくなるのではないでしょうか。

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