最近発売されたプログラミング教育関連の書籍を中心に、現役のパソコン書籍編集者が、実際に役立つ本なのか、少し辛口に見ていきます。
第二回はインプレスの「できるキッズ 子どもと学ぶJavaScriptプログラミング入門」です。
画像: [書評]子どもの参考書としてわかりやすい工夫が随所に。でもふりがなはいらない【パソコン書籍編集者から見たプログラミング教育関連の本】
タイトルできるキッズ 子どもと学ぶJavaScriptプログラミング入門
著者大澤 文孝/できるシリーズ編集部
出版社インプレス
価格2376円

勉強に適した「Scratch」ではなくプログラムに適した「JavaScript」

「できるキッズ」とデカデカと書いてあるので、20年以上続いているインプレスの人気入門書「できるシリーズ」の“子ども向け”であることがわかります。さらに「小学3年生~中学生向け」とうたっていることから、2020年からはじまる小学校の「プログラミング教育」を見据えた書籍のひとつとして出版されたものなのでしょう。「できるシリーズ」は定番のパソコン入門書なので、パソコンやソフトの使いかなどを学ぶときに、参考書として手にとった経験がある人も多いのではないでしょうか。

ただ本書は、もてはやされている「Scratch」のようなブロックプログラミングではなく、大人のプログラミング言語の入門書と同じように、コードを記述することを前提とした「JavaScript」の入門書です。「HTML」や「JavaScript」のような一般的なコードを記述するので、実際のコードプログラミングの知識を学べます。

しかし、実際にコードプログラミングを学ぼうとすると、開発環境の準備が必要だったり、次々に出てくる「命令」や「関数」を、英単語を暗記するように覚えていく必要があります。少し……いや少しどころではなく、ブロック・プログラミングと比べると、数段ハードルが高い。簡単に言ってしまえば、「JavaScript」を題材にしたプログラミングの入門書を、子ども向けに超!わかりやすくアレンジしたもの、と言ったところでしょうか。

前回紹介したような「Scratch」の入門書とは違い、「できるシリーズ」の構成に沿ってつくられています。題材として「JavaScript」が選ばれたのは、生まれたときからインターネット環境に囲まれてきた子どもたちにとって、Webブラウザで実行できるアプリがつくれたり、ホームページやブログの作成時にちょっとした拡張ができたりするのが、ちょうどよいと判断されたからでしょう。

「JavaScript」を学ぶ実践的な書籍

画像: 「JavaScript」を学ぶ実践的な書籍

本書の流れとしては、まずプログラミングの準備と概論的な話、そして「画面の表示」「計算と変数」「条件判定」「繰り返し操作」など、アプリをつくる上で必須ないくつかの基本的な機能を解説して、最終的に「落ちモノパズル」をつくり上げるという、スタンダードな構成になっています。またレッスン(紙面の一区切り)ごとに、無料の練習用ファイルも用意されているので、紙面で学ぶだけではなく、実際にキーボードを叩いて覚えていくことになり、身体でプログラミングの感覚が身につきます。

「できるシリーズ」の良いところは、本の制作(企画・ライティング・レイアウト)に、編集者が多分に介入しているところです。もちろん、原稿を執筆するライターはいますが、編集者が最初から最後まで介入することで、ライターの独りよがりなコムズカシイ原稿にならず、また、レイアウターに原稿を放り投げていないので、原稿内容に即したレイアウト作りができるなど、メリットが多いです。

編集とレイアウトの工夫が随所に

画像: 編集とレイアウトの工夫が随所に

他にも、私が気に入ったポイントを挙げてみましょう。

・見出しの付け方がうまい

意味をもたない大雑把な見出しが多い理工系の書籍の中で、「○○を表示するには」「○○を設定するには」など、やりたいこと(目的)をそのまま見出しにしているので、わからないところが非常に探しやすいです。また一項目のページ数が少なく、目的ごとにまとめられているので、必要なところだけが読めます。

・画像の配置やコメントの入れ方が的確

単に画面を見せるだけでなく、画面のどこをクリックすればよいのか、どういう順番でクリックすればいいのかが一目でわかります。紙芝居のような画面配置になっているので、漫画を読むように読み進められます。

・紙面の色分けが効果的

入力するリストか、行を示す番号か、注釈的なコメントか、手順なのか……ページのさまざまな部分が色分けされているので、それがなにを指しているのか、なにを意味しているのかが理解しやすいです。慣れた人間にとっては必要無いものかもしれませんが、はじめてプログラムに触れるような読者には、すべてが意味不明な呪文に見えてしまうので、こういう細かい色分けは非常に効果的です。

技術を学ぶための技術書にそんなもの必要なの?と思う方もいるかもしれませんが、これらをするとしないとでは、読者への伝わり方に雲泥の差が出ます。とくにパソコンやプログラム言語を、はじめて学ぶような子どもには、「できるシリーズ」のつくりは非常に効果的です。

難点を挙げるなら「多すぎるふりがな」

画像: 難点を挙げるなら「多すぎるふりがな」

ひとつ残念なところをあげるとすれば、子ども向けを意識し過ぎているせいか、本文のほぼすべての漢字によみがなが振られていることです。正直、これは不要ではないかと思います。中途半端に振るならすべて振っちゃえ!的にやったのかどうかは分かりませんが、小学生低学年でも普通に読めるような漢字にまでよみがなが振られているので、本文がゴチャゴチャしすぎて、読みにくくなっています。

それに、「HTML」や「JavaScript」に挑戦するような子どもであれば、大半の漢字は読めるだろうし、たとえ読めなくてもプログラム言語を覚えるのと同じく、本文の内容も自力でなんとかするのではないでしょうか。大人でも読み間違えしそうな難しい漢字や重要なところはよみがなを振る必要があっても、全部付ける必要はなかったと思います。読者を減らしてしまうだけです、

子どもが読者対象になるような書籍であっても、作り手側の「いたれりつくせり=子ども向け」という認識はなくしたほうがいいでしょう。

実際にプログラムを記述するコードプログラミングの入門書としては非常によくできています。小学生でも、目が慣れてくれば充分理解できるでしょう。

ワンランク上のプログラミング入門

ところで、文科省が掲げている「小学生プログラミング教育の手引」では、プログラミング言語の技能習得は目的としていません。「パソコンやプログラム言語に触れて、コンピュータ社会を身近に感じて、論理的な思考を養う」ことが目的ですから、本書が必須かと言われれば、「必要ない」とも言えそうです。

ただ、コードプログラミングは実践に役立つので、小学校のプログラムの授業をきっかけに、将来プログラマーを目指したいとか、自分でオリジナルのアプリをつくってみたいとか、すでにパソコンを触ってインターネットや動画は見ていたが、さらにパソコンを使いこなしたいとか、そういう目的のために、「ワンランク上のプログラミング入門」という位置づけで考えるとよいのではないでしょうか。

子どもでなくても、その昔オリジナルゲームを作りたくてBASICやC言語を学んだが途中で挫折してしまったといった大人でも、非常に読みたくなるつくりになっているので、本書をきっかけに再度プログラミング熱に火を付けることができるかもしれません。

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.