サイエンス作家として有名な竹内薫先生は、「トライリンガル教育」を推奨するYES International Schoolの校長という側面ももっています。前回までの連載で「トライリンガル教育」の必要性を説いてきましたが、今一度なぜ3言語が必要なのかを確認していきましょう。

国語、英語、数学プログラミング——3言語の必要性

私が実践しているトライリンガル教育は、国語、英語、数学プログラミングという3言語の基礎(=土台)の上で、生徒たちがさまざまなプロジェクトを遂行します。

というわけで、プロジェクト学習の本質と実践例について書こうかと思ったのですが、そもそもプロジェクト学習には、どうしても欠かせない前提があります。その前提とは、「言語できちんと考える能力」です。この前提が充たされないと、プロジェクトをやっても格好だけとなってしまい、実ることがありません。

そこで、一部くりかえしになりますが、ここでもう一度3言語の必要性について確認した上で、プロジェクト学習へと話を進めていきたいのです。

なぜ英語が必要なのか

私が選んだ3言語がどうして「この」3言語なのか、それにはきちんとした理由があります。インターネットの言語空間は英語がデフォルト。これは歴史的な事実であり、英語の独占状態が崩れることは、少なくとも今後数十年はないでしょう。第四次産業革命の舞台はインターネットであり、ゆえにインターネット空間で自由に生きるために、英語は不可欠です(英語ができないと文字通り「桁違い」の情報弱者になってしまいます!)。

もちろん神様のような翻訳AIが登場し、インターネット空間でも日本語だけで生きていかれるようになる可能性はあるでしょう。でもそれは今ではないし、おそらく10年後も完璧な翻訳AIは登場しないはず(個人的には、そのようなAIには「意識」が必要ではないかとさえ考えています)。

さて、インターネットの言語空間は英語だと言いましたが、それはあくまでも表のレベルでの話。Webだろうがアプリだろうが、裏ではプログラムが動いているだけであり、プログラミング言語は、ほとんど「英語」そのもの。だから二重の意味で、インターネット空間で生きるためには英語が必要なのです。

画像: なぜ英語が必要なのか

プログラムの本質は「数学」

とはいえプログラムの本質は、英語ではなく「数学」だったりします。日常会話の英語を文法的に厳密にし、英単語からニュアンスや比喩といった機能をなくして、数学の方程式を解いたり、いろんな計算ができるようにしたものが「プログラム」だからです。学校で教わった数学のすべてはプログラミング言語で書くことができるのです。計算だけでなく、学校で教わった証明問題も図形問題もプログラムとみなすことが可能です。

ゲームやアプリやWebや銀行のATMの背後で動いているのはプログラムであり、それは表面的には英語の形をしていますが、その本質は「数学」なのですね。この本質を理解せずに、ただプログラミング言語を漫然と学び、あまり数学を駆使しないプログラムばかり書いていると、いつのまにか「下働きのプログラマー」としてこき使われるようになってしまいます。ようするに、あまりお金が儲からなくなってしまうのです。

画像: プログラムの本質は「数学」

そうではなく、プログラミングの本質が数学であることを子どもの頃から自覚し、充分な数学力をつけた上でプログラムを書いている人は、「主役」になることができます。現在でもそういった超一流のプログラマーたちは、大リーグの選手よりも高給を取っていますし(たとえばマイクロソフト社などのトップクラスのプログラマーたち)、起業して時代を引っ張っていたりしますが(たとえばGoogleの創始者たち)、この傾向は、少なくとも今後数十年は続くことでしょう。

いかがですか? 駆け足で説明してしまいましたが、なぜこれからの世界で英語や数学プログラミングが必須なのか、少しは納得していただけましたか?

母国語は「思考言語」

ただし日本人として生きていくために一番大切なのはなにかと問われれば、私は躊躇なく「日本語」(国語)だと答えます。母国語は「思考言語」であり、それなしでいくら英語や数学を勉強しても「深く考えられない」からです。母国語なしで数学が習得できるかどうかは興味深い問いですが、いまだそれを試した人間は存在しないので、永遠に解けない謎かもしれません。

では母国語よりも英語を優先するとどうなるか。私の友人には企業経営者が多いのですが、彼らの多くから、こんな苦言を呈されることがあります。

「竹内くん、インターナショナルスクールがすべてダメだというつもりはないけれど、表面的な英語教育だけはやめてほしい。英語はペラペラだけど仕事ができない、インターナショナルスクール出の新人を採用してしまって難儀しているんだ。ちゃんとした日本語教育ができていないから、ようするに考える力がついていない。竹内くんの学校では、きちんと母国語で考える力をつけた上で英語がしゃべれるようにしてほしい」

もちろん英語を「母国語」として、英語で考えさせる教育もあるでしょう(当たり前ですが、アメリカやイギリスはまさにそうなっています)。その場合、日本語は第二言語ということになります。それでもかまわないのです。実際私のスクールの算数の授業で、私は英語で考えるほうが得意な子どもには英語で算数を説明し、英語の文章題を解かせています(その子は帰国子女なのです)。それでも、ほとんどの日本人の子どもにとって、思考言語は自然と日本語になっています。ですからトライリンガル教育においても、国語力が「軸」になってくるのです。

画像: 母国語は「思考言語」

以上、トライリンガルという「3言語」の重要性について、私なりの考えを述べてみました。もともと娘の将来を考えて、トライリンガル教育の学校を作ったわけですが、YES International Schoolも、もうすぐ3年目。年長さんから小学校6年生まで、在校生が20名近くになろうとしています。

今年の11月から、盛岡のお友達とインターネットでつないで授業を配信しています。双方向の授業で、英語やプログラミングだけでなく、ペーパークラフト、ウクレレ、マット体操も「一緒」にやっています。インターネットの利便性はますます高まり、「学校の授業」も横浜と盛岡で、リアルとバーチャルがシームレスになりつつあります

さて次回は、3言語という基礎の上で遂行する「プロジェクト学習」の本当の意味について書いてみたいと思います。

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