私は教育を0から見つめ直したいと思い、「世界中の学校で先生になる旅」をテーマに1年間かけて世界を一周し、20ヶ国40の学校を訪れ、教育現場に飛び込みで参加してきました。そこから見えてきた海外の教育事情について紹介します。第1回はフィリピンの教育事情について。

驚異的な人口増加率を誇るフィリピン

フィリピンの人口は2017年のデータで、1億490万人です。まだまだ人口は日本のほうが多いのですが、20年後には人口の数は逆転すると言われています。徐々に人口が減りだした日本に比べて、フィリピンの人口は1年間で約180万人増えているからです。

画像: 1時間あたり約200人の人口が増えており、2016年の経済成長率は6.8%

1時間あたり約200人の人口が増えており、2016年の経済成長率は6.8%

実はフィリピンは、世界屈指の人口増加率を誇り、経済成長率も6.68%と、今とても勢いのある国なのです。そんな勢いのある国、フィリピンではどんな教育が行われているのでしょうか。ここではいくつかの項目に分けて、フィリピンの教育事情について紹介します。

【キーポイント1】学費が無料でも、学校に通えない子がいる

フィリピンは、義務教育の学費は無料です。給食はなく、家からお弁当やスナックをもってくる子どもが多くいます。一見、教育にはお金がかからなそうに見えますが、実はそうとも言えず、金銭的事情で学校に通えない子どももたくさんいるのが実情です。

まずいちばん大きな理由は、学習用品のためにお金が必要ということです。授業料は無料ですが、制服やカバン、文房具に靴などは各家庭で用意しなければいけません。たとえば制服はジャージなども合わせると約2000ペソ(日本円で約4300円)かかります。しかし、フィリピンの下位10%の貧困層の月収は、1万ペソ以下です。この数値を見れば、学習品が揃えられないために学校に通えない子どもがいるのも無理はありません。

また次に大きな理由としては、家の仕事を手伝うために、学校に通えない子どももいます。子どもといえど、家からすれば貴重な労働力となることがあります。

これらの理由で、フィリピンでは経済的事情で義務教育課程で、学校に行けなくなる子が少なく

ありません。進学率はそれぞれ以下のようになっています。

画像: 【キーポイント1】学費が無料でも、学校に通えない子がいる

【キーポイント2】1つの学校に、子どもが3000人以上通う

先ほども述べた通り、フィリピンの20歳未満の若者の人数は、日本をはるかに上回ります。しかし、十分な校舎や教室を確保できていないフィリピンでは、どうしても1つの学校あたりの生徒の人数が多くなります。

1クラスの人数が40から50名。1学年のクラス数が10クラス近くになることも多々あります。また校舎や教室が足りないので、朝7時から小学校の授業が始まり、午後からは同じ校舎を使って高校の授業を実施するということもよくあります。

慢性的に学校や教室の数は足りておらず、筆者が訪れたセブ島の小学校では、学校の畑を切り開いて新しい校舎を建設中でした。

画像: 【キーポイント2】1つの学校に、子どもが3000人以上通う

【キーポイント3】小学校からの特進クラス「サイエンスコース」

教育も発展途上のフィリピンですが、実は小学生のころから公立小学校でも特進クラスがあります。「サイエンスコース」と呼ばれており、主に理数系の教育に力を入れています。小学校入学当時に試験を受けて、成績が高ければサイエンスコースに入れます。毎年、テストの結果次第でサイエンスコースから外れてしまう人や、逆に通常クラスからサイエンスコースに入る人もいるとのこと。

筆者は、通常クラスにもサイエンスコースにも両方訪れましたが、英語力にしても基礎的な計算能力にしてもサイエンスクラスの方が学力は高く、英語での会話も弾みました。

画像: 【キーポイント3】小学校からの特進クラス「サイエンスコース」

フィリピンの理数系教育の現場を拝見

算数の現場

小学校5年生の算数の教科書を拝見。円周の長さや円の面積についての学習のページの中で、日本との最大の違いとしては小学生の教科書で「π」を学習(日本では中学生から)。

しかし、私が見た主観にはなりますが、学習が高度に進んでいるわけではなさそう。むしろ5年生でも九九が遅い子や、2〜3桁の四則演算の筆算が苦手な子が見受けられます。あくまでも仮説ですが、「π」を使うのも「3.14」の掛け算が難しいから、という可能性もあるかもしれません。

理科の現場

日本と同じく、「地学・物理・化学・生物」の分野を満遍なく学習します。たとえば、生物の授業では「内臓の仕組み」や「骨の仕組み」に関する学習をしていました。

フィリピンでは英語と歴史を除くすべての授業において、小学校3年生からは英語で教えられます(地域にもよりますが、ほとんどの子どもにとって英語は第二言語に当たります)。これは算数も同じですが、専門用語が多い科目は、わからない英単語も多いようで、言語の壁が学習の妨げになっている要因かもしれません。

情報の現場

フィリピンの代表的な輸出品として、バナナなどの農作物をイメージする人が多いかもしれませんが、実は金額で一番多くを占めるのは半導体などの電子電気機器なのです。まだすべての人がもっているわけではないですが、スマホを携帯しているフィリピン人もたくさん。小学生でもスマホをもっている子をたまに見かけます。

そんなフィリピンでは、年々「ICT」に関する教育も少しずつ伸びてきています。しかし、まだまだ学校によってばらつきがあるのが現状です。たとえば、筆者の訪れたセブ島の小学校では、コンピュータールームの充実も図っていました。

サイエンスコースの子のほうが、コンピューターを使える時間は長いそうですが、通常クラスの子どももコンピューターを学ぶ時間はあるとのこと。指導内容を伺ったところ、初めはタイピングの練習などからはじめ、ワード・エクセル・パワーポイントの使い方も学ぶそう。高学年になると、ビデオプレゼンテーションを作成したり、テーマに沿ってブログを書くこともあるとのことでした。

画像: 情報の現場

教育はまだ発展途上。でも子どもの情熱はすごい

フィリピンの教育は、まだ発展途上です。学校も足りていなければ教育の予算も足りていない。そんなフィリピンの教育を見る中で、日本の教育の水準の高さを改めて実感することもあります。

一方、フィリピンの教育を見ていて学ぶこともたくさんあります。まず何よりも、子どもたちはすごいエネルギーです。先生の発問に対して、まずは元気に手を挙げてみて、当てられると何も答えられないというフライングもしばしば。

また、高等教育を受けた国民のほとんどが2〜3言語を流暢に話すほど、言語教育は高いレベルを保っています。次回は、フィリピンの英語教育についてフォーカスします。

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