20ヶ国40の学校を訪れ、教育現場に飛び込みで参加してきた私が、フィンランドの教師を見て気づいたことは、日本の半分の労働時間、長い夏休みが保障されることで、のびのびとしたフィールドワークができているということでした。そしてそれが生徒にも還元されているのです。

フィンランドと言えば

「世界中の学校で先生になる旅」をテーマに1年間かけて世界を一周し、20ヶ国40の学校を訪れ、教育現場に飛び込みで参加してきた私が、今回はフィンランドで重視されている「教員のライフスタイル」について紹介します。

まず、フィンランドと言えば……

  • 国際学力テスト「PISA」で世界一位になった国(2006年)
  • 国民の幸福度ランキングが一位になった国(2018年)

さまざまなデータから、高い教育水準をもつ国として噂されるフィンランド。しかしその実態は謎に包まれているところも多く、真偽のわからない情報がネット上に飛び交うこともしばしば。そこで、筆者は真相を確かめるべく、3年かけてフィンランドに4回の渡航。計4ヶ月滞在しながら20校近くの学校を訪問しました。

4ヶ月というと微々たる期間のように思えますが、新たな視点もたくさん得られました。まず学力については、単純比較ができるものではありませんが、少なくとも日本が明らかに劣っているとは感じませんでした。むしろ算数の単純計算の速さで言えば、日本の子どものほうが速いかも、と感じたぐらいです。

私は他にも20カ国以上の小学校を訪れましたが、決して日本の教育レベルは低くありません。それどころか、最新のPISAのテストによると、日本のほうがフィンランドより高いスコアを出しているというデータもあります。このデータを見れば、「学力」という指標だけで、国内の教育を卑下して海外の教育を絶賛しすぎる必要はないでしょう。

画像: フィンランドと言えば

しかし一方で、私がフィンランドの教育を見てきて学んだことがあります。それは学力テストのスコアの上げ方ではありません。「教師の豊かなライフスタイル」です。

フィンランドの教師の豊かなライフスタイルを支える2つの特徴

1. 14時過ぎには退勤

画像: 1. 14時過ぎには退勤

一般的にフィンランドの小学校は8時に1時間目がはじまって、14時に最後の6時間目が終わります。フィンランドの小学校を訪れて一番驚いたのは、多くの先生が14時過ぎに退勤することです。もちろん会議や研修でそれ以降も働く日もありますが、そうでない日のほうが多い。

日本教職員組合のデータから、初等中等公立学校教員の1週間の労働時間について調べてみると、日本が「61時間33分/ 週」に対して、フィンランドは「37時間36分/週」と発表しています。

ただし、翌日のための準備がないわけではありません。自宅で翌日の授業準備や、テストの採点や宿題をチェックすることもしばしばです。

2. 夏休みが10週間ある

画像: 2. 夏休みが10週間ある

冬が寒くて暗いフィンランドでは、短い夏をたっぷり楽しむという習慣が極めて強く、子どもたちと同じく教員も6月上旬〜8月中旬ぐらいまでが丸々休みとなります。ある小学校の先生に聞いたところ、夏休みはじめの1週間程度は保護者からのメール対応などがあるそうですが、それ以降はメールも学校への出勤も一切必要ないとのことです。

また、別の小学校の先生にインタビューしたときに、「本当に夏休みは10週間もあるのですか?」と質問したところ、「This is most important thing(それはもっとも大事なこと)」と笑いながら答えていました。どんな職業でも夏休みが取りやすいフィンランドですが、さすがに10週間も休める職業は少なく、先生たちにとっても夏休みはとても重要なようです。

フィンランドの小学校の先生の日常を紹介

勤務外の時間がたくさんあるフィンランドの先生たちはどんな生活をしているのでしょうか。私がフィンランドで生活する中で実際に出会った、ある先生の日常を紹介します。

平日の15時からキノコ狩り

画像: 平日の15時からキノコ狩り

14時に勤務を終えたある小学校の先生のご自宅にお邪魔しました。よく晴れた秋の一日。先生は「こんな晴れた日に家にいるのはもったいないわ」と言って、倉庫から取り出したのは、小さなバスケットとナイフ。「森にキノコ狩りに行きましょう」と、自宅から徒歩5分の森に向かいました。

フィンランドでは「自然享受権」という法律があり、私有地を除く自然の中で、ベリーやキノコなどを自由に採ることが認められています。2人で1時間ぐらいかけてバスケットがいっぱいになるまで、キノコを採りました。

小学校で1日授業をしてから、キノコ狩りを終えても時刻はまだ16時。そこから取れたてのキノコを調理して美味しいパスタの夕食をとりました。デザートには、ベリーの手作りケーキ。まるで小説「西の魔女が死んだ」のような世界観の生活を体験しました。

フィンランドの教育から学べることとは?

画像: フィンランドの教育から学べることとは?

私がフィンランドで学んだことが2つあります。

1. 教員の豊かなライフスタイルは、巡り巡って子どもたちに還元される

たとえば、フィンランドは日本と同じく野外教育を非常に重視しています。森の中でのクロスカントリーやベリー摘み、体育の授業は裏山でスキーなど。先生たち自身が日ごろから自然の中でアウトドアを楽しんでいるため、一人一人の先生が豊富な野外教育のスキルをもっています。

その他にも、先ほど紹介した先生は、毎週平日の夜に日本語の語学レッスンに通っていました。クラス内でも生徒たちと一緒に日本語の簡単な表現を練習したりしているため、私がはじめて学校に訪れたときには子どもたちから日本語で挨拶されました。先生たちの生活の豊かさは、このように生徒たちにも還元されているようです。

2.先生のライフスタイルを尊重することの大切さ

僕がフィンランドに渡航する計画を立てていたときによく現地の人から言われたことは「学校と連絡を取りたければ、夏休みは5月までに連絡を取ったほうがいいよ。夏休みは連絡取れないから!」ということです。休みの間には、先生たちも休暇を楽しんでいるということが、国全体で尊重されているように感じました。フィンランドの先生のライフスタイルは、「保護者や生徒たちが学校にすべてを求めすぎない」ことで成り立っているのかもしれません。

フィンランドの教育制度は、消費税が24%もする福祉国家だからこそ成り立っている側面もあるので、すべてをそのまま日本に取り入れることは現実的ではありません。しかし、「教員の豊かなライフスタイルを尊重することが、子どもたちの教育に還元される」という考え方は、非常に参考になると思います。

近年注目されている教員の働き方改革には、社会からの理解、とりわけ保護者からの理解は必要不可欠です。フィンランドの教育を知ることによって、少しでも「教員のライフスタイルを尊重することの大切さ」が広がればと思います。

この記事が気に入ったら「いいね!」をクリック!プログラミング教育・STEM教育などの情報をお届けします!

記事全文ページのみ

This article is a sponsored article by
''.