STEM教育ではとても重要なサイエンスミュージアム。アメリカのシリコンバレーにある「インテルミュージアム」は、PCの黎明期を支えてきたプロセッサーメーカーであるインテル社の歴史がわかるミュージアムです。

シリコンバレーの起源とスタンフォード大学

サンフランシスコから車や電車で1時間ほど南下したあたりに、シリコンバレー(Silicon Valley)と呼ばれる地域があります。今ではGoogle、Apple、Facebookといった大手IT(情報技術)企業がしのぎを削る中心地ですが、もともとはコンピューターの中核部品となるIC(集積回路)やLSI(大規模集積回路)といった半導体産業の中心地であり、半導体の材料であるシリコン(ケイ素)と、サンタクルーズ山脈などに囲まれた渓谷(バレー)の地形が、呼び名の由来となっています。

画像: シリコンバレー発祥のガレージ

シリコンバレー発祥のガレージ

シリコンバレーの中心には、1891年(明治24年)に設立されたスタンフォード大学があります。

1938年(昭和13年)に、この大学出身のウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードが、この地域の住宅街にある自宅のガレージで創業したのがシリコンバレーの起源とされています。このガレージは現在、アメリカ国立公園局により史跡登録され、外観を見ることができます。

大手IT企業として有名なHP社は、この二人のイニシャルから名付けられています。また、Appleの創業者の一人であるスティーブ・ジョブスも、この地域に住んでいてスティーブ・ウォズニアックとともに自宅で起業しました。アメリカの一軒家は日本に比べて広いことが多く、ガレージが必ずあるので、自宅の一室やガレージなどで起業することは少なくないようです。

画像: スタンフォード大学のキャンパス

スタンフォード大学のキャンパス

このようにシリコンバレーの中心にスタンフォード大学があるのではなく、スタンフォード大学を中心にシリコンバレーが発展してきた経緯から、必然的に産業と教育・研究機関の連携が強い土地柄となっています。スタンフォード大学の広大なキャンパスは開かれていて見学できるので、産学連携が当たり前と思えるスケールを実感できます。また、シリコンバレーにある企業の多くが広大な敷地面積を有しており、その敷地も大学と同様「キャンパス」と呼ばれています。

インテル本社の中にあるインテルミュージアム

そんなシリコンバレーの一角には、1968年(昭和43年)創業されたコンピューターのマイクロプセッサー/CPUの主要メーカー、インテル社( Intel Corporation )が当たり前のように本社を構えており、門を通ってすぐのところには、会社の歴史や最新の動向を紹介する企業ミュージアムがあります。

画像: 若干わかりにくい博物館入り口

若干わかりにくい博物館入り口

日本人の名前が消されたインテルの初期プロセッサー「Intel 4004」

入ると最初に目に飛び込んでくるのは、1971年(昭和46年)に発売されたマイクロプロセッサーの歴史の中でも最初期製品のひとつ「Intel 4004」です。このプロセッサーは日本のビジコン社とインテル社が共同開発したもので、基本部品をどのように組み合わせれば機能が実現できるかを数学的に導出する「論理設計」をビジコン社の嶋正利が、製造するための部品の配置などの「物理設計」をインテル社のフェデリコ・ファジンがしました。

画像: 4004の展示プレート

4004の展示プレート

よく言われる話ですが、インテル社がIntel 4004を紹介するとき、この展示プレートを含めて嶋氏の名前が出てくることはありません。これはもちろん、技術力の高さをアピールしたいインテル社のビジネス/PR戦略にもとづくものですが、自分のようなITエンジニアの立場からすると、ビジネス戦略の重要性を痛感させられる出来事のひとつでもあります。

ところで、このプロセッサーの「4」という数字は、4ビットのプロセッサーであることにちなんでいます。現在、一般的に利用されているプロッサは64ビットですが、Intel 4004から44年後の2015年に発売した64ビットプロセッサー「Core i5」は性能3500倍、電力効率(性能あたり消費電力)9万倍、性能当たり単価は6万分の1になっているそうです。

8ビットのマイクロセッサー「Intel 8080」

「Altair(アルテア) 8800」は1974年(昭和49年)12月にMicro Instrumentation and Telemetry Systems(マイクロインストゥルメンテーション・アンド・テレメトリーシステム)社から発売された「世界初のパーソナルコンピューター」です。とは言っても、今のようにキーボードと液晶ディスプレイがついているわけではなく、フロントパネルに並んだスイッチのON/OFFで操作し、ランプの明滅で実行結果を見る仕組みでした。

このコンピューターは、インテル社が1974年(昭和49年)4月に発売したばかりの8ビットのマイクロプロセッサー「Intel 8080」を搭載しています。

画像: Altair 8800

Altair 8800

ところで、Intel 8080では、論理設計の主任設計者をインテル社に転職した嶋氏がつとめました。この転職も競合製品の開発を阻止するためのヘッドハンティングという、インテル社のビジネス戦略によるものです。

また、Windowsで知られるマイクロソフト社は、ビル・ゲイツと共同創業者のポール・アレンが、初心者用プログラミング言語であるBASICを、Altair 8800用に開発(移植)したのがはじまりです。

半導体のつくりかた

ところで「半導体」とは、電気をよく通す「(良)導体」と、電気を通しにくい「絶縁体(不導体)」の中間的な性質をもつもののことです。現在の半導体は、シリコン(ケイ素)をベースに、製造工程の途中で微量のリン、ヒ素、ホウ素、ガリウムといった”不純物”を加える(ドーピングする)ことで出来上がります。

シリコンは砂などに含まれていて、ガラス(二酸化ケイ素)の材料としても使われる安価な元素。LSI製造は、シリコン以外の不純物や隙間がない「単結晶」の「インゴット(塊)」をつくるところからはじまります。このインゴットを薄くスライスして、「ウェハー」という状態にします。

シリコンインゴット

シリコンウェハーに、(いわゆる銀塩)写真をフィルムから印画紙に焼きつけるのと同じ手法で電気回路を書き込んでいき、ドーピング、他部品との接続用端子を付加し、最後に黒い樹脂で周りを固めて補強します。コンピューターなどの蓋を開けると見える黒い四角形の部品の色は、この樹脂の色です。

ムーアの法則

LSIが長期的にどのようなペースで高度化するかの予測として、1965年(昭和40年)にゴードン・ムーアが提唱した「ムーアの法則(Moore’s Law)」という経験則があります。

経験則とは、その時点までに実際に経験した事象を元にその傾向・関係を法則としたものを言います。ムーアの法則は現実に当てはまってきただけでなく、技術発展の目標値としても長く用いられてきました。ムーアはインテル社の創業者の一人でもあることから、同社は「ムーアの法則を死守するために研究開発を進めている」とまで言われたほどです。

しかし、プロセッサーによりたくさん書き込めるようにと回路の微細化が進み原子レベルに近づいていることから、2005年(平成17年)にはムーア自身が「ムーアの法則は間もなく限界がくる」と予測し、2017年(平成29年)には、同じくシリコンバレーに本社がある半導体企業NVIDIA(エヌビディア)社のジェン・スン・ファンが、「ムーアの法則は終わった」と言及しています。

画像: ムーアの法則

ムーアの法則

1時間弱程度で見て回れる

企業PRのためのミニ博物館ということもあり、1時間弱程度で見て回れますが、現在のコンピューター産業を黎明期から支えている企業なので、機会があればぜひ訪問してください。

基本情報

  • 名称:インテルミュージアム (Intel Museum)
  • 住所:アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタクララ郡ミッションカレッジ大通り2200 (2200 Mission College Blvd, Santa Clara, CA 95054, USA)
  • 公式サイト:https://www.intel.com/content/www/us/en/company-overview/intel-museum.html
  • 開館時間:月曜〜金曜 9:00〜18:00 / 土曜 10:00〜17:00
  • 見学目安時間:1時間弱
  • 入館料:無料
  • オーディオガイド:なし

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