“フィンランドスタイル”のアフタースクール「KIDS PORT Fin」に、インターンとして入ってきたEmmaとの会話の中で気づいた、“フィンランドスタイルとはなにか?”について共有します。

フィンランドの先生の習慣

画像: Finで子どもたちにパペット劇場をしているEmma

Finで子どもたちにパペット劇場をしているEmma

私が代表を務める「KIDS PORT Fin(以下「Fin」)」では、2年間のフィンランド滞在・現地の大学院のコース(教育科学を専攻)で学んだことを活かし、小学校低学年の子どもにおける非認知スキルの成長や日常の中から学ぶということを重視する“フィンランドスタイル”のアフタースクールを提供してます。

このFinのインターンシップとしてEmma Golnick(以下「Emma」)さんを招きました。今回から、そのEmmaさんとの会話の中で気づいた“フィンランドスタイルとはなにか?”というエッセンスを「フィンランドの先生の習慣」という切り口で、数回に分けて共有していきます。

小学校の先生になるために

Emmaは大学卒業後、パペットアーティストとして劇場や海外のプロジェクトで活躍した後に、小学校の先生になることを志して大学の教育学部に再入学。現在、小学校の先生になるためのトレーニングを受けている最中です。

フィンランドの教育システム

まずは、フィンランドの教育システムについて簡単に共有します。

画像: フィンランドの教育システム

フィンランドの教育システム

学校種別や進学の年齢などはほぼ日本と同じですが、以下の3点で大きく違いがあります。

1. 6歳からのプリスクールが義務

小学校に入る準備をする期間です。一日数時間机に座ったり、文字や数字に触れる練習をします。また発達上や学習上の障害を早期に発見し、小学校や家庭との連携をとることで子どもの小学校入学後のスムーズな成長をサポートする役割もあります。

2.中学校以降の各教育機関の間の行き来が活発

たとえば、中学卒業後に専門学校へ行き仕事をしてから大学に入る、あるいは大学を卒業してから専門学校に入るなど、「学び直し」が頻繁に行われています。これはフィンランドの手厚い教育福祉制度による恩恵です。

3. 国の教育システムの中心にある“Life Long Learning” の概念

いくつになっても、学び・働き・生活をするといった国民に対するビジョンを強くもっているからこそ、それを支えるための教育福祉制度が伴っています。小学校では、「6年生までに、●●ができているべき!」という学習目標が大切にされており、それと同時に「一生続く“学ぶ”ということへのポジティブな姿勢を形成する」といった目標も重視されています。

「習慣」を支える要素

これからEmmaと私が合意した“フィンランドの先生の習慣”についてお話ししますが、その前に「習慣」を支える要素についてお伝えします。どんな習慣でも、よいからといって実行や継続はできません。それを支えるシステムや思考の癖が必要です。フィンランドの先生の習慣においては、「フィンランドの教育システム」と「教育においての社会構成主義という考えかた」の2つの視点から見ていきたいと思います。

子ども一人一人の個性を受け入れる

個性を受け入れることが子どもの発達にとって非常に重要であることを否定する人は少ないのですが、実行することは難しいと多くの教育・保育関係者は感じている思います。フィンランドの教育の中では、「子どもを受け入れる」というのはどういったものなのでしょうか。Emmaが教育実習の間に体験した2年生の女の子とその担任の先生とのやり取りを紹介します。

ある女の子は、「他の人からどう思われるか」が気になって学習に集中できませんでした。授業中も前後左右のお友達を見たり、話しかけたりと周囲にも影響が出てしまいます。そんな彼女のことを考えた担任の先生は、「一斉授業のときは教室の中で先生の話しを聴いて欲しいけれど、演習問題のときには廊下に出した机で学習しましょうか?」と提案しました。

それ以降、授業の途中で先生が女の子に声をかけると彼女は教室を出ていき、周囲の目が気にならないところで集中して学習ができるようになったそうです。この先生は女の子の個性を理解し、可能な範囲内彼女にとっても周囲にとってもいい学習環境アレンジをしたと言えます。

そんな先生はいったい、どんな考えかたを根底にもっていたのでしょうか?フィンランドの教育哲学の根底にある“社会構成主義”の出番です。社会構成主義をもとにした教育では先生と子どもは対等な存在として考えられます。

画像: 教育における社会構成主義のコンセプト

教育における社会構成主義のコンセプト

先生も、子どももそれぞれの知識や経験をもとにコミュニケーション(授業や学習活動)し、その中で“確認や交渉(●●は△△ですよ/では、○○の場合は? など)”をしながら、それぞれの「学び」を構成します。

その際、先生の知識や経験だけでなく、子どもの知識や経験も学びにとって重要なファクターとなることが上の図からわかります。ですから、先生はそれぞれの子どもたちの知識や経験(そして、個性や特性)を見極めながら、“どのようなアプローチで確認や交渉をしたらよりよい学びになるか”を考えてコミュニケーションをとっていきます。むしろ、子どもたちの知識や経験といった“基礎データ”なしにはフィンランドの先生の仕事は成立しません。

さらに「知識や経験」は学びによって塗り替えることが比較的簡単ですが、「個性や特性」はそうではありません。学ぶに際して子どもの個性や特性がハンディになっている場合は「環境」を変えることで対応するというのが合理的な判断だったと言えます。

「子どもの個性を受け入れる」ことを可能にする教育システム

次に「子どもの個性を受け入れる」ことを可能にしている教育システムについて。フィンランドの小学校は「先生一人につき、子ども20人程度の小規模クラス」が基本です。さらに、場合によってはサブティーチャー(先生の資格とは別にサブティーチャーの資格がある)がつくので、日本の小学校のクラス構成よりも“手厚い”です。

しかし、フィンランドでの昨今の“都市部への人口集中” さらには “教育予算の削減”といった社会全体の変化を受けて1クラス30名程度・サブティーチャーなし・フィンランド語や英語さえも通じない移民の子どもが多くいるクラスもあります。

そうしたクラスでは、先生にも余裕がなくなり、子どもたち一人一人を受け入れるよりも1日1日のタスクをこなすことで精一杯という状況も増えてきていることは、前回、前々回の記事でも共有しました。フィンランドの教育現場をよく知るEmmaも同意しています。

世界の中でも評価の高いフィンランドの教育。そのよさを保つには、根底に流れる考えかたとそれを支える教育システムの両方が必要なのです。

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次回以降も、Emmaとの会話でわかった「フィンランドの先生の習慣」について共有していきます。

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