“フィンランドスタイル”のアフタースクール「KIDS PORT Fin」に、インターンとして入ってきたEmma。彼女と話していくうちに、現在のフィンランド教育における課題とその解決方法が見えてきました。

【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】は毎月17日更新!これまでの記事はこちら]

私が代表を務める「KIDS PORT Fin」(以下「Fin」)のインターンとして7月初旬まで在日していたEmma Golnick(以下「Emma」。フィンランドで小学校の先生になるための勉強中)と私が、“フィンランドの先生たちが、いい学びの環境を作るために大切にしている習慣ってなんだろう?”といった会話をしている中で、まとまった内容を前回の記事で共有しました。今回はその続きです。

ポジティブな姿勢でいること

フィンランドの先生たちは、概して優しい雰囲気です。もちろんルールに関してはとても厳しく、時にはイライラしたりもしますが、“子どもは、怒って罰するよりもポジティブに接するほうが学べる”
という信念を多くの先生たちがもっています。

ここで、前回の記事で紹介した学びにおける“社会構成主義”の考え方に再度触れます。

画像: ポジティブな姿勢でいること

子どもにも知識や経験があり、そのバックグラウンドと新たな学びを結びつけることによって、その学びが子どもの中に生きた学びとして定着します。先生がポジティブでいることによって子どもが学びのプロセスである「確認と交渉」を継続するモチベーションが高まります。もし、子どもの言ったことに先生が否定的な態度をとったり「間違いだ」と言って罰したりすれば、子どもは「もう、なにかを言うのはやめよう」とコミュニケーションをとる気がなくなってしまいます。

また、将来の先生を育てる教育学部の入学試験においても「ポジティブであること」が重視されています。教育学部の教員養成コースはフィンランドの中では競争率が高く、筆記試験とグループ面接、そして個人面接を行う大学もあるそうです。厳しい選考過程に残った、フィンランドの先生の適性のある人のみが先生になるトレーニングを受けることができるのです。

画像: フィンランドの先生は笑顔が素敵で雰囲気がやわらかい人が多い

フィンランドの先生は笑顔が素敵で雰囲気がやわらかい人が多い

さらに、教員養成コース5年(学士課程3年・修士課程2年)の中で1年ごとに2、3週間の教育実習があり、子どもたちと関わる中で、授業の内容や教材だけではなく、自分自身のパーソナリティも子どもたちの学びに大きく影響をすることを学ぶのです。

こうして書くと、フィランドの先生たちは人間離れをした存在のように思われるかもしれませんが、先生たちも人間です。「疲れる、イライラするといった感情を出してもいい」という共通認識をもっています。リラックスできる職員室で授業での失敗を同僚に話すこともありますし、子どもに対しても怒りや悲しみ、イライラの感情を見せることも許されています。

協調学習を取り入れる

日本の新カリキュラム同様、フィンランドのカリキュラムでも“協調学習”が推奨されており、学校が新しくリノベーションや新築される場合には、従来の「先生が前で子どもの机が並ぶクラスルーム」ではなく、「グループで話しながら調べたりできるレイアウト」をコンセプトにデザインされます。

この「子ども同士の協調学習」の有効性を、学びにおける社会構成主義の観点から見ると、“子ども同士のほうが、確認や交渉のプロセスが活性化する”と解釈できます。フィンランドの小学校では、日本と比較して先生と生徒は「平等」、先生の言ったことに疑問を感じれば質問ができる雰囲気は、フィンランドでは大いにあります。しかし、やはり子ども同士のほうが会話は弾みます。

フィンランドから来たEmmaにも、この協調学習にまつわるエピソードがありました。フィンランドは東側にロシアがあり、ロシアとは何度かにわたる戦争・領土を奪ったり奪われたりの歴史があります。フィンランドにとってロシアは「領土を奪った国」であり、さらに国の規模がフィンランドとロシアではまったく違うため、歴史の授業では“大国ロシアに立ち向かった、勇敢なフィンランド”といったニュアンスで教えられることが多いそうなのです。

ところが、Emmaの学生時代の同級生にロシアから来た子どもがおり(フィンランドにはロシア人やロシアにルーツをもつ人が多く住んでいます)、ロシア側から見たフィンランドとの戦争のエピソードを聞くうちに、Emmaはロシアに対する固定観念が変化するのを感じたそうです(「酷いことをしたのは、ロシアだけではないんだ!」)。

協力するスキル

さらに、協調学習を通して子どもたちは協力することを学びます。「協力するスキル」はフィンランドのカリキュラムでは“学びを通して身につけるべきスキル”とされており、生きていく上で、あるいは社会で働く上で子どものうちから意識して身につけたいスキルのひとつです。しかし、子ども同士で協力して学び合うというのは難易度が高いのが現実です。とくに小学校低学年であれば、学びの目的を見失ったり、お友達同士でトラブルを起こしたりすることが多く、「先生がお話をする一斉授業のほうがやりやすいのでは?」とEmmaに聞いてみたことがあります。

Emmaは小さな子どもにとっての協調学習の難しさに共感した上で、“スモールステップ”と“役割分担”について大学で学んだことを共有してくれました。

まずは“スモールステップ” ーー先生たちは、最初から大きなプロジェクトを子どもたち同士に任せるのではなく、本当に小さなタスクを一緒にするという練習を何度も積むことを小学校1年生から意識しています。たしかに、私がヘルシンキの小学校を訪問した際も授業の中の5分〜10分の間だけ、「隣のお友達が算数パズルで作った図形を、まねして作ってみよう」「個人ワークが終わった人は、まだわからないお友達に教えてあげよう」など、先生が子どもたちに“一緒に学ぶことを促す”シーンをたくさん見てきました。

次に“役割分担” ーーなにかを一緒にするには役割を分けて、それぞれの役割を遂行することが大切ですが、子どもたちには「どんな役割があって、それぞれがどんなことをするのか」が不明確なことが多く、それが協調学習の際に“することがなくなったから遊んでしまった(喧嘩してしまった)”という結果を招いているとも考えられます。低学年の子どもが協調学習をする際は、先生が子どものスキルや適性を見ながら「リーダー」「調べる人」「書記」「絵を描く人」などの役割を決めることで、子どもたちの協調学習が成功するようにサポートをしています。

さらに、協調学習の振り返りでは多くの先生が子どもたちに「今回の協力はうまくいきましたか?」と質問をします。その質問によって、子どもたちは自分の働き、お友達との協力関係をどうしたら改善できるのかを知ることができます。

私が以前訪問したクラスで、先生が同様の質問をした際に、ある子どもが「今回のディスカッションはうまくいかなかった、●●くんが発言をしなかったから」と答えていました。先生は、「発言をしない人がいたら、“どう思う?”と聞きながら鉛筆を渡して見るといいわよ!」と答え、クラスルームがポジティブな雰囲気になったことを思い出しました。

画像: 8月中旬は日本ではまだ夏休みですがフィンランドでは新学期のスタート。

8月中旬は日本ではまだ夏休みですがフィンランドでは新学期のスタート。

次回も引き続き、フィンランドの先生たちが大切にしている習慣について共有します。

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