「学校の常識は世間の非常識」という言葉があるように、学校という場所はかなり特殊な世界です。学校特有の文化だけでなく、配備されているコンピューター環境にも同じことが言えます。今回は、学校の環境の特殊性についてご紹介し、プログラミング教育にどのような影響があるかを考えてみたいと思います。

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ブラウザ問題

2019年8月にもなって、いまだにデフォルトのブラウザがインターネットエクスプローラー(IE)の学校は、かなり多いのが現状です。IEは開発元であるMicrosoftが利用しないことを推奨していますし、本連載でも紹介した Scratch は、2019年1月2日にリリースされた Scratch 3.0 からIEをサポートしていません。

しかし、学校で使われているコンピューターは自治体レベルで管理されていることが多く、なかなか簡単にバージョンを上げることは難しいのが現状です。渋谷区は2017年9月から1人に1台のタブレット端末を導入してICTを活用した授業をしていますが、そのタブレットに導入されているブラウザがIEだったため、Scratchが使えないということがTwitterで話題になりました。

このような事例は多くの学校で起こっており、文部科学省・総務省・経済産業省からなる「未来の学びコンソーシアム」では「未来の学びを実現するブラウザ環境について」という案内を出しています。

たとえば、Scratchを例にとれば、オフラインエディターが提供されているため、ブラウザを利用せずに使うことは可能です。しかし、オフラインエディターにはScratchのよさである「コミュニティ機能」はついていません。やはりすべての機能を使うためには、モダンなブラウザ環境の必要があります。

USB問題

学校ではセキュリティの観点からUSBメモリーによるデータの移行が許可されていない場合がほとんどです。これは児童用のコンピューターだけでなく、教員用のコンピューターでも許可されていないことがあります。そのため、micro:bit をUSBケーブルでコンピューターと接続してScratch や MakeCode でつくったプログラムを入れることはできません。Bluetoothを通じてやり取りすることはできますが、なかにはそれすら許可されていない学校もあります。

新学習指導要領の6年生理科では、電気の利用という単元のなかでプログラミングをする場面が想定されています。

“身の回りには,温度センサーなどを使って,エネルギーを効率よく利用している道具があることに気付き,実際に目的に合わせてセンサーを使い, モーターの動きや発光ダイオードの点灯を制御するなどといったプログラミングを体験することを通して,その仕組みを体験的に学習するといったことが考えられる。”(【理科編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説より)

もう少し具体的に見てみましょう。この単元では、手回し発電機を使ってコンデンサに電気を貯めて、それを別のもの(熱や光、音など)に変換することを学習します。新学習指導要領では、それをプログラミングで制御する活動が加わりました。効率よく電気を利用するために、たとえば外が明るいときには電気を消す、人がいるときに電気を点けるなどのプログラムを実際に体験します。

この活動はScratchだけで完結することはできません。必ずなんらかのハードウェアを利用しなければなりません。しかし、そのときUSBメモリーによるデータのやり取りができないとどうでしょうか。たとえば micro:bit を使ってこの活動をしようと思ってもできません。また、専用のアプリケーションを利用したくてもインストールするハードルはとても高く、あまり現実的と言えないのが現状です。学校の環境によって、子どもたちの学びが制限されてしまう可能性があります。

USBを使わずに、電気の利用を学習する

この問題を解決するために開発されたのが、TFab Works 社と Innovation Power 社が共同開発した「カシワニキット」です。カシワニキットで使われている Scratch用プログラム制御スイッチではUSBを使わずにオーディオ信号でやり取りするため、ヘッドフォンジャックのあるすべてのデバイスで利用できます。これはNHKの番組「Why!?プログラミング」で使われている「スーパーロボットわんだふぉー」を参考にしてつくられています。

画像: カシワニキットの特徴

カシワニキットの特徴

カシワニキットでは、Scratch用プログラム制御スイッチの他に先生用の学習指導案やプログラム指導書、ワークシートが付いているのですぐに授業をはじめられます。また、Scratch 3.0の拡張機能に対応しているため、新たな学習コストが発生しないのも特徴です。

画像: カシワニキット用の専用拡張機能

カシワニキット用の専用拡張機能

私はこのキットの開発に関わっていますが、USB接続ができない学校がある以上カシワニキットは現状に対する最適解だと考えています。Scratch用プログラム制御スイッチは文字通りスイッチをON/OFFをすることしかできないため、拡張性はあまりありません。しかし、2020年からプログラミング教育がはじまる以上、学校の環境によって、子どもたちの学習が妨げられることだけは避けなければなりません。

この問題の本質は、学校の特殊なコンピューター環境をどうやって改善していくかということですが、変えるには時間がかかります。カシワニキットは入門機として捉え、その後 micro:bit など拡張性が高いハードウェアに移行していくのがよいのではないでしょうか。

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