1年間にわたりお届けしたヨーロッパのSTEM教育探訪。今回が最終回です。最後に紹介するのは、チェコ・プラハ市内を見下ろす丘の上にあある国立技術博物館。チェコスロバキア時代からの科学技術のエッセンスがたくさん詰まっています。STEMを考える上でヒントとなる気づきがあったので紹介します。

チェコスロバキア時代からの科学技術コレクション

国立技術博物館は1908年にオープン。現在の建物は1941年に完成しました。地上4階、地下3階の展示スペースは2011年にリニューアルされ、現在14カテゴリーで常設展示を行なっています。

エントランス正面は、4フロア吹き抜けの広いホールを使った「輸送交通 (Transportation)」カテゴリー。主に陸と空で活躍してきた貴重なモビリティが数多く展示されています(ミュンヘンのドイツ博物館のホールも迫力がありますが、こちらも負けていません)。

画像: 広いホールに展示されたモビリティの数々

広いホールに展示されたモビリティの数々

中でも目を引くのが、ホールを見下ろす3フロア分の廊下壁面にズラリと並べられたモーターバイクと自転車のコレクション。1937年代にチェーチェーが製造したカラフルな「Böhmerland (ボーマーランド)」といったバイクや、チェコスロバキアの銃器メーカー「チェスカー・ズブロヨフカ・ストラコニツェ」が製造した「CZ」というオートバイなどが展示されています。

また訪問した2018年が、実はチェコスロバキアの創立100周年。そのため、1918年から1992年まで続いたチェコスロバキア時代の製品にフォーカスした企画展「チェコスロバキア製 (Made in Czechoslovakia)」が開催されていました。国立技術博物館が所蔵するコレクションより、高品質な輸出製品から生活用品までが展示されていました。

身の回りのテクノロジーをわかりやすく分解して伝える

常設展のうち、印象に残ったものを2つほどご紹介します。ひとつめは「私たちの周りにある科学(Chemistry around us)」の展示。ここでは産業科学の歴史を年表形式で解説し、生活用品の製造から販売までのプロセスを定義することで、自分の生活に寄り添うテクノロジーをわかりやすく分解して伝えています。また、関わった人物や時代背景も紹介することで、モノではなくコトから科学への理解を深めるきっかけを提供しています

たとえば、染料と顔料について説明するコーナー。ここではイギリスの科学者、ヘンリー・パーキン氏を紹介。彼の発明した染料により大量に繊維を染められるようになり、衣類やストッキングなどに広く転用されるようになりました。ここでは色をつけるという化学反応の紹介だけでなく、ファッションアイテムを同時に展示することで、身近なところに科学が活用されているという視点を与えています。

また、ソフトコンタクトレンズのためのハイドロゲル素材を発明した、チェコスロバキアの科学者オットー・ヴィヒターレ氏を紹介し、製品開発の歴史や機材などを展示しています。

展示の中には、コンタクトレンズ製造マシンの模型がありました。よく見ると、子ども向けのSTEM教材「メルクール組み立てキット」が用いられています。

画像: メルクール製のコンタクトレンズ製造マシンの模型

メルクール製のコンタクトレンズ製造マシンの模型

メルクール社はチェコで約100年の歴史があります。国立技術博物館の地下2階にあるプレイルームのスポンサーになっており、組み立てキットを使って誰でも自由に遊べます。

画像: 地下2階にあるプレイルーム

地下2階にあるプレイルーム

今簡単に使える技術をアナログにひもとく

もうひとつの印象に残ったものは「インターカメラ(Intercamera)」の展示です。ここではアニメーションの原型であるゾートロープや連続写真などを体験しながら、一枚絵の写真がどのように動画となり、またエンターテインメントとして進化していくかを知れます。以前もゾートロープは体験したことがありますが、目の前で馬が軽快に走る姿は何度見てもワクワクしますね。

今では、スマホを使えば写真や動画が撮れ、編集と加工がすぐできてしまいます。すなわち、写真技術はユーザーが仕組みを理解していなくても簡単に使えるテクノロジーになったと言えます。デジタルな時代だからこそ、そのテクノロジーをアナログにひもといていくと、科学技術の連続的・非連続的な進化の過程を垣間見ることができ、身近な技術に対する好奇心につながっていくのではないでしょうか。

画像: フォトグラメトリーの技術展示

フォトグラメトリーの技術展示

ちなみに筆者がインターカメラの展示でもっとも好奇心をくすぐられたのが、フォトグラメトリー (写真測量法) の技術展示です。フォトグラメトリーとは複数枚の写真を組み合わせて、2地点間の距離を測ったり、3次元データを作成する技術です。この技術が1851年にはあったというのには驚きです。いったいどういうふうにして計算できるという発想にいたったのか、今後探ってみようと思います。

STEMは教科ではなく、好奇心そのもの

2ヶ月ちょっとのヨーロッパ滞在を、1年かけて振り返ってきました。STEMは教科ではなく、好奇心そのものだと思っています。大人も子どももみんなで一緒にテクノロジーについて考え、STEMへの接点を増やしながら、好奇心をくすぐりあえる機会が増えれば幸いです。

基本情報
名称:国立技術博物館 (Národní technické muzeum)
開館時間:9.00–18.00(月曜閉館)
基本料金:250CZK/1回、460CZC/3回 (6ヶ月以内)、6歳以下は無料
※ガイドツアーは別料金。その他、割引デーなどが設定されています

住所:Kostelní 42, 170 78 Praha 7, Česká republika
(上記情報は2019/9/13現在のものです。詳細は施設の公式ページをご覧ください)

公式サイト(英語):http://www.ntm.cz/en
バーチャルツアー(英語):http://www.ntm.cz/en/en-expozice/virtualni-prohlidky

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