活字離れが叫ばれている昨今、たまには誰かのぬくもりを感じる「本」を探しにおでかけしてみませんか? 今回オススメする古本屋さんは東京・八王子にある「むしくい堂」です。店主がオススメする一冊「ちいちゃんのかげおくり」も紹介。

これまでの【子どものための古書探し】はこちら

画像: 均一棚がひろい。お客さんもひっきりなし

均一棚がひろい。お客さんもひっきりなし

「そこにある」事実。本を並べるのだってひと苦労

3,000冊の本を並べてきました。10名弱の人出はありましたが、段ボールはおよそ80箱分。本を出しても、出しても次の本が箱の中で待っている。トランプの「七並べ」のように、出したところからキレイにそろえばいいのですが、そんなわけにもいかず。

タイトルや内容、背の順を見比べては並べ、並べては並べ替え、それを何度も繰り返し。うむむ、これまで当たり前の風景に感じていた「本の風景」。実はかなり異様なことだったのかもしれません。本がそこにあるだけなのに。誰のために、何のために、そこに答えはあるのか……。

今回紹介するのは、八王子にある「古書 むしくい堂」。賑やかな駅前ロータリーから、おもちゃ屋さんやお茶屋さん、カフェもある懐かしいアーケード街へ。

画像: 店内のどこを見渡しても「読みたい本」「ほしい本」がそろう。それも買い取りで集まった本だという。

店内のどこを見渡しても「読みたい本」「ほしい本」がそろう。それも買い取りで集まった本だという。

きっかけは一冊の本との出会い

もともとはサラリーマンをしていた店主の高橋さん。いつのころからか、古本屋さんになることを夢見て、気づけば全国各地の古書店を巡っていたのだとか。「(古本屋は)やめたほうがいい」とアドバイスを受けたことも。

それでもめげず「後にも先にも、あんなに夢中になったことはない」とおっしゃったように、その熱意を受け止めた他の店主さんたちは、お店づくりの「いろは」を高橋さんに伝授したと言います。その縁で、イベント開催もされたそう。

ひたむきな情熱を注ぎはじめたそのきっかけは、宇田智子著『本屋になりたい この島の本を売る』(ちくまプリマー新書)を読んだこと。

画像: この本棚のつくり――実は「古書 青いカバ」と同じ職人さんが手掛けていた!

この本棚のつくり――実は「古書 青いカバ」と同じ職人さんが手掛けていた!

この本は那覇に移住し、小さな古本屋をスタートさせた店主の日常がつづられています。華やかな都内から、一転させたその姿に感銘を受けた高橋さん。

画像: 整理中、未開封の段ボールも。どんな本が入っているか気になってしまう

整理中、未開封の段ボールも。どんな本が入っているか気になってしまう

ラジオリスナーの店主、背中を押してもらったメール

ただ、店を構えようと考えているうちに月日はあっというまに過ぎてしまって、もう一歩、勇気が踏み出せない。そんなときにTBSラジオ『たまむすび』にメッセージを投稿。

画像: 「古書むしくい堂」店名の由来は......

「古書むしくい堂」店名の由来は......

「古本屋を名付けてください」と送り、それが読まれました。「むしくい堂」の店名は、パーソナリティ赤江珠緒さんのアイデア。

画像: TBSラジオ、おなじみパーソナリティの本がそろう。

TBSラジオ、おなじみパーソナリティの本がそろう。

とうとう名前もついたんだ、引き返せないぞ、と「むしくい堂」は東京・雑司ヶ谷で開催される「みちくさ市」にも出店。古本屋を思い描いてから数年、着々と古本屋を形にしていった話をうかがうと、

やりたいという気持ちにエールが重なり、どんどんと形がつくられていく様子にとてもグッときます。

また店内にラジオパーソナリティの本や、毒蝮三太夫のサインも。ここは、さすがラジオリスナーらしい店内に仕上がっています。

買い取りは「偶然」

小説、エッセイ、絵本、実用書、趣味、旅、歌集、詩、児童書、雑誌など、「そうそうこれを読んでみたかった」とはっとする本ばかり。選書はせずに、あくまで「偶然の買い取り」を中心に。「偶然の出会い」が多いということは、筆者と地域の本好きさんとの相性がかなりいいということでしょうか。

いついっても「ほしい本が出てくる」──これは大切にされている古本屋さんの特徴かもしれません。店内にある本は約8000冊。当初は約3000冊でスタートしましたが、どんどん売れてしまうので「売るものがなくて困った」「自分の蔵書も並べたんだ」と思い出も語ってくださいました。

オススメの一冊 空を見上げたい『ちいちゃんのかげおくり』

最後に、店主の高橋さんからオススメの1冊を選んでいただきました。

『ちいちゃんのかげおくり』は、筆者にとって小学校の国語の教科書に載っていた作品。青空を使った「かげおくり」という子どもたちの遊びが、戦争がはじまり……。とあらすじも多くは語れず思わず、本を差し出されても、内容を知っているからこそためらってしまいました。

高橋さんも「泣いちゃいますよね」と言うほど悲しいストーリーではありますが、グッときたのが「飛行機がやってきて、もう青空で遊べなくなってしまうシーン。空まで奪われてしまうのか、と衝撃を受けた」そうです。「エンディングも直接的でない描写がいい」と言います。

店主の高橋さん、レジの周囲にも本は山積み

かつては子ども目線で読んだ「かげおくり」で、小学校の校庭で楽しんだ思い出がよみがえりました。今では大人側の目線に立って読んでいる自分に、意外な発見もできました。時代は変わっても、読み継いでいきたいお話です。

画像: 「古書むしくい堂」オリジナルしおりと、『ちいちゃんのかげおくり』

「古書むしくい堂」オリジナルしおりと、『ちいちゃんのかげおくり』

なぜ、人は古本屋を目指すのか。真夜中そんなことに頭を巡らせていると、砂漠にぽつねん佇んでいる気持ちになってきました。しかしそこには、冒険のはじまりのような、どこかワクワクする響きも秘めています。古本屋に惹かれてしまうワケは、まだまだ探りがいがありそうです。

この記事が気に入ったら「いいね!」をクリック!バレッド(VALED PRESS)の最新情報をお届けします!

基本情報
「古書むしくい堂」
住所:〒192-0081
東京都八王子市横山町10-17 グエルスクエア八王子102
ウェブサイト:http://www.mushikuido.com
Twitter: https://twitter.com/mushikuido
営業時間:12:00-20:00
定休日:火曜日
※営業時間等の変更はHPやTwitterでお知らせします。

店長オススメの一冊
『ちいちゃんのかげおくり』
作: あまん きみこ
絵: 上野 紀子
出版社: あかね書房
刊行年: 1982年8月
シリーズ紹介ページ:https://www.akaneshobo.co.jp/search/info.php?isbn=9784251030115

記事全文ページのみ

This article is a sponsored article by
''.