18人中12人の内閣大臣が女性になったフィンランド。国民の多くは時代の変化としておおむねポジティブに受け止められているようです。そのような素地はどこから生まれているのでしょうか?フィンランドの公教育カリキュラムで定義づけられている、子どもたちが身につけるべき7つの能力について紹介します。
  • 【TC1】自分で考え、学ぶことのできる能力
  • 【TC2】いかに自分がもつ文化を大切に思い、それを表現する能力を育むか
  • 【TC3】自尊心をもち、自立した生活をする能力

 これまでの【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】はこちら

「自分がどう感じ、どうしたいのか」よりも「周囲から何を求められているのか」を優先する子どもたち

先日、フィンランド人の友人との会話の中で「若い女性の首相をフィンランドの国民はどう受け止めているの?」と質問したところ「彼女(サンナ・マリーン:2019年12月からフィンランドの首相を務める)は以前から政界にいたし、首相になったこと自体は、国民からもそれほど驚かれなかったけれど、首相交代とともに18人中12人の内閣大臣が女性になることは、時代の変化としておおむねポジティブに受け止められている(もちろん、少数のネガティブに受け止めている人もいる)」とのことでした。

私は日々アフタースクールで、日本の小学生の子どもたちと過ごしていますが、“将来の職業”
“性別による振る舞いや言動”について、子どもたちから感じ取るのは「自分がどう感じ、どうしたいのか」よりも「周囲から何を求められているのか」を無意識に優先して思考していることが多く、その中で顕著なのが性別による役割の区分けだと思っています(男子だから・・・になるべき/女子だから・・・すべき、など)。

では文化の中で属性(性別など)による役割期待より、さらに根底にあるものを、私たちはどう子どもたちの中に見出し育んでいけたら、子どもにとって自然なのでしょうか。

そのヒントとして、フィンランドの公教育カリキュラムの中で定義づけられている、科目や学年を横断して子どもたちが身につけるべき7つの能力「Transversal Competences」(横断的な能力)について、今回と次回とで2回に分けて紹介します。

まずは7つの「Transversal Competences」(以下、TC)のうち、その基盤となる最初の3つ(TC1-TC3)についてみていきましょう。

画像: Transversal Competencesの全体像。”Competences”と表現をされているものの、単に“能力”を指すのではなく知識、スキル、価値観、姿勢、意欲を総称するものとして大切にされている。

Transversal Competencesの全体像。”Competences”と表現をされているものの、単に“能力”を指すのではなく知識、スキル、価値観、姿勢、意欲を総称するものとして大切にされている。

【TC1】自分で考え、学ぶことのできる能力(Thinking and Learning to Learn)

学校を卒業しても生涯学び続けるために必要なもので、“学ぶのが楽しい!”と感じる能力や意欲と言い換えることができます。それには学び方にも多様な方法があることを知り、正解が一つではないことを体得し、自分には問題を解決できると信じることがカギになる、と書かれています。

”Thinking and Learning to Learn”の記述の中で、フィンランドにおける学びについての考え方をよく表現していると思われる部分を抜粋して、英文とともに紹介します。

The way in which they learn to make observations and to seek, evaluate, edit, produce and share information and ideas is also essential.
学びの過程で物事を観察・洞察・評価・編集したり、新たな考えを生み出し共有する“方法” がとても重要。(それによって子どもは学びの方法が一つではないことを知り、学びに対してポジティブになれる)

Encouragement is also needed for facing unclear and conflicting information. The pupils are guided to consider things from different viewpoints, to seek new information and to use it as a basis for reviewing the way they think. Space is given for their questions, and they are encouraged to look for answers and to listen to the views of others while also reflecting on their personal inner knowledge.
先生の役割として大切なことは…
・子どもが難しい問題に直面したときに励ますこと
・個々の子どもの考え方にもとづいて「他の観点から考えてみよう」「どうやったら別の情報が得られるかな」などとサポートすること
・子どもが疑問に思ったり「他の人の意見も聞いてみよう」と思える余地を残すこと

一人一人の子どもが“今学んでいることを習得” し、かつ“自分にはもっと学ぶべきことがある!”と常に意識できることが、大切な能力の一つとして挙げられています。

【TC2】いかに自分がもつ文化を大切に思い、それを表現する能力を育むか(Cultural Competence, interaction and self-expression)

表題には“Cultural Competence”と書かれていますし、多様な文化的バックグラウンドをもつ人たちとともに生きていく社会を見据えての“必要な能力”とされていますが、書かれている内容の多くは“いかに自分のもつ文化を大切に思い、それを表現する能力を育むか”に割かれていると感じます。

Preconditions for a culturally sustainable way of living and acting in a diverse environment are possessing cultural competence based on respect for human rights, skills in appreciative interaction and means for expressing oneself and one’s views.
自分自身や自文化について理解し表現する手段をもっていること。そして相手に敬意をもって伝えられることが、多様な文化が混在する社会の一員としての前提条件。

The pupils learn to know and appreciate their living environment and its cultural heritage as well as their personal social, cultural, religious, philosophical and linguistic roots.
子どもたちは、自分たちの生活環境や受け継いだ文化だけでなく、自分の家族、社会、文化、宗教、哲学、言語(という個人的なもの)がどんなルーツをもっているのかを理解し、それらを大切に思うことを学ぶ。

Respectful and trusting attitudes towards other groups of people and peoples are reinforced in all activities, also by means of international cooperation.
さらに、お互いに協力するためにどうやって相手と敬意や信頼のある関係を結べるのか(ソーシャルスキル、コミュニケーションスキル)が大切な学び。

文化的に自分とは違う相手に対してオープンになるには、まずは自分の文化を知り、それが自分にとってかけがえのないものであると実感すること。そして誰にでもそういった文化的バックグラウンドがあることをコミュニケーションを通じて体得することが、フィンランドの異文化教育において強調されています。

【TC3】自尊心をもち、自立した生活をする能力(Taking care of oneself and managing daily-life)

フィンランドでは“自立”と表現したときに、その意味は広範囲に渡ります。

This area covers health, safety and human relationships, mobility and transport, acting in the increasingly technological daily life, and managing personal finance and consumption, all of which are elements of a sustainable way of living.
健康、安全、人間関係、交通や移動、IT関連、経済面などサステナブルな生活を送る上でのすべてを指す。

The pupils are encouraged to take care of themselves and others, to practice skills that are important for managing their daily lives and to work for the well-being of their environment.
子どもたちは、日常を送る上でどうしたら心身ともにいい状態をキープできるかを学ぶ。

たとえば私がフィンランドの小学校に行ったとき、子どもたちがこんなことを学んでいるのをみました。

画像1: 自分がどう感じ、どうしたいのか。フィンランドの子どもが性別や文化を越えて考えるための7つの能力とは【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】

睡眠時間はどのくらい必要かな?

画像2: 自分がどう感じ、どうしたいのか。フィンランドの子どもが性別や文化を越えて考えるための7つの能力とは【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】

“7歳くらいの子どもは10時間必要”と教科書に書いてあった!

画像3: 自分がどう感じ、どうしたいのか。フィンランドの子どもが性別や文化を越えて考えるための7つの能力とは【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】

人との物理的距離感はどれくらいがいいかな?家族と友達で違うかな?

画像4: 自分がどう感じ、どうしたいのか。フィンランドの子どもが性別や文化を越えて考えるための7つの能力とは【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】

会ったばかりのお友達にいきなりハグすると、相手を嫌な気持ちにさせるかもしれないね。

画像5: 自分がどう感じ、どうしたいのか。フィンランドの子どもが性別や文化を越えて考えるための7つの能力とは【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】

気温が-10度くらいになったら、どんな服装をするのがいいかな?

画像6: 自分がどう感じ、どうしたいのか。フィンランドの子どもが性別や文化を越えて考えるための7つの能力とは【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】

ジャケットのジッパーを首まで閉じることが大事だよ!

画像7: 自分がどう感じ、どうしたいのか。フィンランドの子どもが性別や文化を越えて考えるための7つの能力とは【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】

怒ってしまったとき、どうやって感情をコントロールする?

画像8: 自分がどう感じ、どうしたいのか。フィンランドの子どもが性別や文化を越えて考えるための7つの能力とは【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】

怒りの気持ちは自然な感情だから、恥じたり隠す必要はない。言葉に出してみる!

“自分が自分や周囲のために“いい”選択をしている“ という確信が、自分の将来をポジティブに考えることにつながるのだという考えのもと、フィンランドでは子どものころから周囲にあるさまざまな事象と自分とのつながりに、子どもたちが気づき、自ら選択できるよう促すことが重視されています。

次回は引き続き、フィンランドのカリキュラムに明示され、学校現場でも大切にされている「Transversal Competences(TC)」の4から7までを解説します。

この記事が気に入ったら「いいね!」をクリック!バレッドプレス(VALED PRESS)の最新情報をお届けします!

記事全文ページのみ
コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.