World Robot Olympiad(以下、WRO)は、小学生から大学生まで参加できる国際的なロボットコンテスト。そのオープンカテゴリーで日本代表になった2人の少年の、葛藤した日々の記録です。

小学生から大学生までが参加できるロボットコンテスト「WRO」

WROは小学生から大学生までが参加できるロボットコンテストで、毎年地区予選が全国各地で行われ、勝ち残った選手が全国大会や世界大会に進む、世界規模の大会です。参加を希望した子どもは、春に発表されるルールに沿って、夏の予選に向けての準備をはじめます。

2020年からはじまる小学校でのプログラミング必修化の煽りを受け、プログラミングスクールの需要も年々高まっています。小学校低学年からスクールに入会する人も多く、中でもロボットプログラミングのコースは、結果が目に見えることで楽しさを感じやすいため、プログラミング初心者の子どもたちに人気のコースです。

遊びながら学ぶことにより、知らず識らずのうちにアルゴリズムを深く学べるロボット製作は、子どもにとってもっとも楽しい勉強の一つになります。ある程度学習を進め実力をつけた後は、WROに参加することが多くの子どもたちの目標となっています。

WRO参加経験者と未経験者とでは大会に参加する意味が異なります。未経験者は、単純にワクワクする気持ちの中でスタートしますが、参加経験者の多くは大会参加の大変さとその有意義な時間を過ごす楽しさを知っています。

今回紹介する2人も、そんなWRO参加経験者。2人はそれぞれ2018年、2017年のレギュラーカテゴリー地区予選大会に参加した山本君(5年生)と成田君(6年生)。2人ともロボットプログラミングを学びはじめて4年目の、小学生ではベテランと言っていい子どもたちです。

画像: 左:山本樹君 右:成田清悟君

左:山本樹君 右:成田清悟君

2人はお互いのことを知ってはいたものの、チームを組むのがはじめてでした。オープンカテゴリーといわれる自由研究タイプの競技に参加することを希望した生徒の中でも、コツコツと着実に作業を進めるタイプの2人は相性がよく、2月にチームCherryBlossoms(チェリーブロッサムズ)を結成します。

2019年オープンカテゴリーのテーマは『スマートシティ』

毎年、SDGsのいずれかの内容に近いものがテーマとして掲げられます。2019年のテーマは『スマートシティ』。小学生には少々難しいテーマが与えられました。オープンカテゴリーは、テーマに沿ったロボットであればどんなものでもいいルールですが、その分テーマについてどのくらい理解しているか、どのくらい深く考察して製作されたロボットなのかが重要となります。

大人でもなんとなくは理解していても、簡単には説明できないスマートシティというテーマ。子どもたちだけで深く理解するには難しいと判断し、「スマートシティとは?」「スマートシティを実現させる未来はどんな世界?」といったテーマ解釈のレッスンから開始しました。

CherryBlossomsの2人と同じように、教室からオープンカテゴリーに参加した4チームは、早々に製作ロボットを決め準備を進めていく中、2人はテーマについては理解できたものの、どのようなロボットを製作するのかを4月末の時点で決められずにいました。

そんなとき、山本君が参加した下水道局のイベントで、『シュワネラ菌』という電子を帯びる微生物を知り、製作案が固まっていきます。

画像1: 小学生2人がロボコンで世界に挑戦!『スマートシティ』をテーマにつくったものは?【WROオープンカテゴリー参加のススメ】
画像2: 小学生2人がロボコンで世界に挑戦!『スマートシティ』をテーマにつくったものは?【WROオープンカテゴリー参加のススメ】

2018年9月に発生した北海道胆振東部地震の影響で、北海道全域295万戸が停電。自宅も含めブラックアウトを経験した2人は、電力レジリエンスに着目し、電力ポートフォリオに「シュワネラ菌を使用した発電システム」を導入するための、疑似ロボットを製作することに決めました。

ロボットを組み立てる

シュワネラ菌を放つ水道管を模した構造の装置の組み立てをはじめた2人でしたが、お互いに自分のイメージを上手に相手に伝えられず、作業は難航します。複数のソートや難解なアルゴリズムも難なく組み上げる2人ですが、アイデアを共有する難しさに直面したのです。

当初は『組み立ててからアイデアが噛み合わずに崩す』を繰り返していましたが、次第に細かな作業も話し合いや相談を経てから進めるようになり、効率が上がっていきます。コーチには「相談や報告をしながら進めなさい」とアドバイスされていましたが、最初の時点では取り入れなかった相談を頻繁にしはじめます。アイデアをもつことも大切ですが、それを人に伝える大切さを知る機会となりました。

画像: ロボットを組み立てる

レポートと動画づくり

オープンカテゴリーの予選は、2分間のプレゼン動画とロボットを説明したレポートを提出し、作品が認められた場合は、WRO Japan決勝大会へ選出されます。

CherryBlossomsは、ロボット製作を6月中旬に終え、動画づくりとレポート製作を並行して作業を開始しました。動画製作は、どこをどのように撮ると見やすくなるかを考え、それに合ったコメントを付けていく作業をします。レポート製作は、想像が容易にできるような内容にするために、シュワネラ菌について詳しく調べ、発電条件や用途方法、発電量や設置場所といった情報を極力細かに考えた上で、文章に起こしていきます。

どちらの作業もGoogleのドキュメントやスライドを使用し、リアルタイムでお互いの文章作成を確認し合いながら作業を進めました。並行作業にした理由は、ロボット、レポート、動画に矛盾点があってはならないためです。いずれかに変更を加える際は他の作業での微調整も考えられ、2人で共有しているコンセプトや与えられたテーマに合致しない内容の場合は、変更を加えないルールを自身で課し、ブレのない作品づくりを心掛けていました。

画像3: 小学生2人がロボコンで世界に挑戦!『スマートシティ』をテーマにつくったものは?【WROオープンカテゴリー参加のススメ】
画像4: 小学生2人がロボコンで世界に挑戦!『スマートシティ』をテーマにつくったものは?【WROオープンカテゴリー参加のススメ】

プレゼン練習とポスター製作

7月に提出したレポートと動画は見事審査を通過し、2人は8月中旬に開催されるWRO Japan決勝大会へと駒を進めます。1.8m×1.8mのロボット展示ブースが用意され、発表と質疑応答でそれぞれ5分ずつ時間が与えられプレゼンする競技方法となります。

必須となるポスターは、動画やレポートの一部を抜粋し製作を開始。発表練習、質疑応答に対応するためのデータ集めと回答内容の共有化、ロボットの調整、展示物の用意が必要です。1ヶ月の間やることだらけの2人は、所属小学校が違うため、平日は自宅で作業し、休日はスクールでお互いの進捗を確認し合いながら作業を進めました。

画像: プレゼン練習とポスター製作

「WRO Japan決勝大会」から「国際大会」へ

決勝大会のオープンカテゴリーは、前日の会場入りが許され、ロボットの用意を含む展示ブースを設営します。はじめて決勝大会の会場に入った2人は、緊張を隠しながらも黙々と作業を進めます。先に郵送しておいたロボットの一部に破損があったため、組み立て直したり、センサーの調整なども細かく行いました。大会当日は3回の審査があり、各回2名ずつの審査員が順番に回ってきます。

CherryBlossomsは、難しい質問にもしっかりと回答し、優秀賞を受賞。国際大会へ選出されます。

画像5: 小学生2人がロボコンで世界に挑戦!『スマートシティ』をテーマにつくったものは?【WROオープンカテゴリー参加のススメ】
画像6: 小学生2人がロボコンで世界に挑戦!『スマートシティ』をテーマにつくったものは?【WROオープンカテゴリー参加のススメ】

国際大会への準備

WRO国際大会は、毎年WROの開催国のいずれかの国で行われ、2019年はハンガリーでの開催でした。まさか国際大会に選出されるとは思っていなかった2人は、ここから急ピッチで作業を進めます。

まず、レポートや動画、ポスターや展示物、発表内容のすべてを英語に変更しないといけません。英語を話せない2人は、帰国子女のコーチとともに英会話のレッスンを開始。英語でのスピーチのほか、全国大会と変わらず5分間の質疑応答があるため、リスニングの練習もします。

また、ブースも1面から3面に変更されることを考慮し、ポスターも3種類に。ロボットはもちろん、国際大会用ではなかったために、改良を施すことを決定。セクションごとに1名、計6名のコーチが2人のサポートにつき、準備することになりました。

ロボットの変更は、使用したシュワネラ菌を再利用するための構造にすること。1ヶ月の時間をかけて、簡単には壊れずミニマムでコンパクトなロボットを完成させます。それに加え、英語で発表する際に視覚的にわかりやすくするために、Scratchでロボットの作業シークエンスを表示するプログラムを用意しました。

画像10: 小学生2人がロボコンで世界に挑戦!『スマートシティ』をテーマにつくったものは?【WROオープンカテゴリー参加のススメ】
画像11: 小学生2人がロボコンで世界に挑戦!『スマートシティ』をテーマにつくったものは?【WROオープンカテゴリー参加のススメ】

WRO国際大会

2019年のWRO国際大会オープンカテゴリー小学生部門は、22チームが参加。3日間をかけて行われる大会の会場は、子ども向けの大会とは思えない規模で、各国の子どもたちは会場に着くと同時に各々のブースの設置をはじめます。設置が終えると、各参加者が他チームのブースを回り、バッチや硬貨、自国のお菓子などを交換しながら友好を深める姿がありました。

2日目、3日目は計5回審査します。CherryBlossomsの2人は慣れない英語を駆使しながら各審査に臨み、最初はロボットが動かなかったり、bluetoothの混線で接続ができなかったりとトラブルに見舞われますが、後半はスムーズなプレゼンができるようになり、無事に審査を終えました。表彰台に上がることはできませんでしたが、「来年も国際大会に来る」と意気込む姿は、非常に凛々しく感じました。

「WROオープンカテゴリー」は子どもの大幅な成長が見込める

プログラミング教室を運営する中でよく感じることがあります。それはプログラミングを好む子どもほど、プログラミングやそういった分野のみを伸ばせればいいと思っている傾向にあることです。当たり前の話ですが、プログラミングだけできても、魅力的な仕事はできませんし、人としての成長も見込めません。

プログラミングの理解度だけで言えば、CherryBlossomsの2人よりも上のレベルで勉強している生徒さんも多くいます。彼らが人より優れていたのは、身に着けたプログラミングの活用に必須な「総合力」があったことです。

2人のように、WROオープンカテゴリーの参加を楽しみながら懸命に取り組める子どもは、大幅に成長し、どんな世界でも活躍できる人材になると確信しています。与えられたテーマと予算の中で、自身で考案したシステムを、仲間とともに議論する中で構築し、評価をもらってフィードバックする──WROオープンカテゴリーは、そんな社会のシステムを学べ、人として成長できる数少ない大会です。ぜひエントリーしてみませんか。

画像: 「WROオープンカテゴリー」は子どもの大幅な成長が見込める

小中高校生の国際ロボット競技会「WRO Japan」について

公式ホームページ: https://www.wroj.org/

  • WRO Japan 2020 決勝大会
    開催日:2020年8月29日(土)
    会 場:東京都立産業貿易センター台東館(アクセス)
  • WRO 2020 国際大会
    開催日:2020年11月13日(金)〜15日(日)
    開催地:カナダ モントリオール

参加申込みに関する情報は、4月ごろに公式ホームページで発表予定。大会への参加はもちろん、当日の見学(無料)も可能。

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