今回オススメする古本屋さんは東京・自由が丘にある「西村文生堂」。創業 70 年を超える老舗で店主の西村康樹さんは街づくりや歴史にも詳しい、その三代目店主がオススメする一冊は『スーパーパティシエ物語 ケーキ職人・辻口博啓の生き方』です。

これまでの【子どものための古書探し】はこちら

自由を冠する街で「本」の可能性を探る

画像: 入口には絵本、単行本、雑誌が並ぶ。

入口には絵本、単行本、雑誌が並ぶ。

東京オリンピックイヤーを迎え、いよいよ再開発していた街々は変ぼうを遂げようとしています。期待が膨らむ一方、街の古本屋さんはどのように変化してしまうのでしょうか。

画像: 海外の絵本、メリーポピンズは箱入り。

海外の絵本、メリーポピンズは箱入り。

今回訪れたのは、自由が丘で創業 72 年目を迎えた老舗の「西村文生堂」。ここは古本屋の形は変わらずとも、「本」への捉え方を工夫し、再発見しようとするお店でした。

画像: 魅力的なミステリ本の数。

魅力的なミステリ本の数。

正直に言います。初めて店名を見かけたとき、私は「ニシムラフミオドウ」と誤読していました。正しくは「ニシムラブンセイドウ」。初代店主が名付けた「文生堂」の名前が長く残っています。

創業 72 年の古書店、三代目がみた景色

のれんを受け継いだ現在の店主は、三代目西村康樹さん。「古本屋さんになるしかなかった」と振り返ります。先代のお父様から仕入れや買い取りのノウハウを学んだとはいえ、
“独り立ち”は22 歳のころ。というのも、バブル崩壊後の経営難で、いつ店を手放してもおかしくない、マイナスからのスタートだったというのです。「365 日、寝る間を惜しんで働いた」と当時を振り返っていました。

画像: 本をハンガーにかけてディプレイしている。ハンガーも特注品。

本をハンガーにかけてディプレイしている。ハンガーも特注品。

「古本屋は流行らないよ」──と周囲の反対もあったそう。「でも、古本屋がなくなるなら『最後の一人』になってやると思ったね」と。若者のそんな覚悟にこたえるように、お店は破竹の勢いで成長をしていきます。不安はなかったのか尋ねると「そういうところは親に似て楽観主義者なんだよね。棚はスカスカでも大丈夫と教わったよ」と、意外な答えが返ってきました。

画像: 初代のれん、今でも店を見守っている。

初代のれん、今でも店を見守っている。

自由が丘を巻き込んだ、お店づくり

人脈もコネもない若者時代には、仕入れに苦労したことも。仕入れのために参加した「古本の競り」でのこと。欲しい商品に相場で値をつけても、常連やお得意さまを優先する暗黙のルールが。「バカになろうと思ったね」と、その場にいた人が驚くような高値で競り落としていくことを続けていると、次第に周囲も一目置くようになったそうです。

「ぶっとんでますね!」と、隣で聞いていた学生インターンの大竹志歩さん(産業能率大学3年生)。スタッフだけでなく、地域の学生さんも巻き込んで、お店を盛り立てているそう。

画像: 店主の西村さんと大学生スタッフのみなさん。

店主の西村さんと大学生スタッフのみなさん。

街とのつながりはそれだけでなく、仕掛け人としてこの20年間『自由が丘オフィシャルガイドブック』の企画から編集まで携わっているとのこと。現在は3月に発売の 2020 年最新版(vol.30)に向け、執筆中。

画像: ページの折り目で立体になる。大竹志歩さんの作成。

ページの折り目で立体になる。大竹志歩さんの作成。

どんな理由でもいい。本のある景色が増えていけば

「邪道と言われたよ」と西村さんが言うのは、洋書が机の脚代わりになったディスプレイ。ここ 15 年近く、読むための本だけではなく、見せるための本にも力をいれています。

画像: 机の脚替わりに洋書。かつて「邪道」といわれた見せ方。

机の脚替わりに洋書。かつて「邪道」といわれた見せ方。

そもそも自由が丘は、雑貨やインテリアのお店が多い街。「なぜ洋書が売れるか不思議で、お客さんに聞いたんだ。するとインテリアコーディネーターが内装に使うと明かしてくれた」と意外なニーズに気づいたそう。「昔からあった文学全集や百科事典も同じかもしれない」と、インテリア的要素の本も、専門的に取り扱うことに。学生インターンの大竹志歩さん、本を読むのは苦手でも「本って、インスタにアップするとカワイイんです」と、イマドキの感性で新たな本の魅力を発見していました。

どんな理由でも「本がある場所が増えていくことがいい」と思っていると話してくれた西村さん。本に触れる機会そのものが減っている現状にも、「本がおもしろいと気づく方法はまだまだある」と、どれだけ本を高く積み上げられるかを競争してもいい、そんな今ある価値観にとらわれないアイデアがどんどん沸いていました。

画像: 洋書セットの販売もしている。

洋書セットの販売もしている。

画像: 本を飾ったっていい。東京オリンピックで変化する街で変わらずにあり続けるもの【子どものための古書探し】

お店のディスプレイや映画の撮影にあわせセットの相談を受けることもあり、これからは洋書だけでなく、浮世絵や和書もコーディネートするサービスをローンチするのも間近(「KAZARU TOKYO」2020 年 3 月~サービス開始予定)。

有名なものだけではなく、情報的価値の高い浮世絵に目を付けた西村さん。町民の生活を描いた浮世絵には「彗星を見る画」や「地震を表した画」など、長い時を超えてみるからこそ楽しめる作品がたくさんあるいいます。

美術品の価値ではく、情報としての価値を提案したい。さらに、自由が丘から世界へ新しい魅力を届けたい、そんな今後の展望を語る表情がとても楽しそうでした。

オススメの一冊 生き方を代弁してくれる『スーパーパティシエ物語 ケーキ職人・辻口博啓の生き方』

最後に、店主の西村さんからオススメの一冊を選んでもらいました。『スーパーパティシエ物語 ケーキ職人・辻口博啓の生き方』です。

自由が丘に店をかまえるモンサンクレール辻口博啓さんは、NHKの朝ドラ「まれ」の製菓指導協力を行い、そのストーリーのモデルにもなったとも言われる人物。ケーキの道を追求する姿に、西村さん自身の生き方が重なるといいます。

店主の西村さんオススメの一冊は『スーパーパティシエ物語 ケーキ職人・辻口博啓の生き方』。

西村さんの息子さんも年ごろになり、今は「古本屋を継いでもいい」と考えているのだとか。自由が丘の街で、いつの時代でも古本とともに誰かが訪れることを待っていてほしいものですね。

基本情報

店長オススメの一冊

  • 『スーパーパティシエ物語 ケーキ職人・辻口博啓の生き方』
  • 著者:輔老心
  • 出版社:岩崎書店
  • 刊行年:2006 年 9 月

この記事が気に入ったら「フォロー」&「いいね!」をクリック!バレッドプレス(VALED PRESS)の最新情報をお届けします!

記事全文ページのみ
コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.