前回の記事で、フィンランドのNational Core Curriculum で明記されている「子どもの年齢に関わらず、どんな教科を学ぶ際にも意識すべき7つの能力(TC : Transversal Competences)」のうち、最初の3つについて書きました。今回は残り4つのうち3つの能力について紹介します。

これまでの【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】はこちら

  • 【TC4】多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力(Multiliteracy)
  • 【TC5】ICTを活用する能力(ICT Competences)
  • 【TC6】自分の仕事をもって自立していく能力(Working life competence and entrepreneurship)

フィンランドが義務教育で重んじているエッセンス

画像1: フィンランドの小学校の風景

フィンランドの小学校の風景

私が普段、アフタースクールを運営し、日々保護者と接するなかで、今の親御さんが教育や保育に対して、漠然とした不安をもっていることを感じています。“子どもとの接し方はこれでいいのか”“学校の勉強だけでいいのか”“塾は子どもに合っているのか”……など、数えたらきりがありません。

もちろん、教育や保育に唯一の正解はありませんし、どんな状況、どんな子どもにとってもフィンランドの教育理念や目的が合うとも考えていません。しかしフィンランドが義務教育で重んじているエッセンスを学べば、日本の親御さんや教育、保育に従事している人が、ポジティブな気持ちで前進できるのではと考えています。

フィンランドの小学校の風景

前回の記事で、フィンランドのNational Core Curriculum で明記されている「子どもの年齢に関わらず、どんな教科を学ぶ際にも意識すべき7つの能力(TC : Transversal Competences)」のうち、最初の3つについて書きました。

  • 【TC1】Thinking and Learning to Learn:自分で考え、学ぶことのできる能力。
  • 【TC2】Cultural Competence, interaction and self-expression:自分のもつ文化背景を大切に思い、異文化を受け入れる能力。
  • 【TC3】Taking care of oneself and managing daily-life:自尊心をもち 《経済的な自立も視野に入れた》自立した生活をする能力。

今回は残り4つのうち3つの能力について言及しながら、フィンランドではいかに“教科的(国語・算数・理科など)な学び”よりも社会性や人格形成、自立などの一般的スキルの形成が大切にされているのかを、事例を交えて紹介します。

※なおTC1からTC7の基本コンセプトは、フィンランドの義務教育において一貫していますが、学齢ごとに目指すものが違っており(小学1-2年、小学3-6年、中学1-3年の3つのカテゴリーに分けられています)、この記事では小学1-2年生における7つの能力を、詳しく読み解いています。

【TC4】多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力(Multiliteracy)

画像: 【TC4】多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力(Multiliteracy)

Multiliteracy is the competence to intepret, produce and make a value judgement across a variety of different texts, which will help the pupils to understand diverse modes of cultural communication and to build their personal identity.

Multiliteracy とは多種の情報を解釈したり、自分で生み出す際の価値を判断する能力。その能力をもつことで、子どもたちは文化によってコミュニケーション内容や方法に違いがあることを理解し、スムーズに自身のアイデンティティーを形成できます。

このMultiliteracyを説明する本文中に、"text"というワードが頻出するのですが、この場合の"text"は、文字情報だけではなく、口語情報や視覚聴覚情報、数的情報、ジェスチャーや動きから得る情報といった、広範囲を指します。

情報の受け手として、あるいは発信者としてクリティカルに考えることで、情報の背景にある文化や社会について理解を深められます。教育におけるMultiliteracyという概念は、日本でいうところの「情報リテラシー教育」や「作文力」「プレゼン力」と共通項が多いと考えています。

たとえば、フィンランドの中学の授業で「雑誌を分析する」という課題がありました。そのなかで「複数のティーン誌に出てくる“メイクアップ”についての写真や文字情報から、雑誌ごとにもつ“美”に対する考え方の違いを見いだす」といったアウトプットをしているグループがありました。

このようなワークによって、雑誌に書いてあることをすべて鵜呑みにするのではなく、背景にあるものを見た上で、自分がそれを受け入れるかどうかを判断するといった能力が養われます。

私の頭のなかは……

【TC5】ICTを活用する能力(ICT Competences)

画像: Sway を使って虫についてプレゼンスライドを製作

Sway を使って虫についてプレゼンスライドを製作

フィンランドでは、ICT スキルは【TC4】の「Multiliteracy」とも深く関連する大切なスキル(能力)だと考えられていて、どんな授業でもICTを用いることが推奨されています。

プレゼンテーションに、Power Pointの簡易版のSwayを使ったり、算数の計算ドリルや国語の読み物をiPadを通して学ぶこともあります。地域や学校に差はありますが、ラップトップかiPadをクラスで一人一台使えるように整備されている教室が多くあります。

The pupils develop their ICT competence in four main areas: 1) They are guided in understanding the principle of using ICT and its operating principles and key concepts, and supported to develop their practical ICT competence in producing their own work. 2) The pupils are guided in using ICT responsibly, safely and ergonomically. 3) The pupils are guided in using information and communication technology in information management and in exploratory and creative work. 4) The pupils gather experience of and practise using ICT in interaction and networking.

ICTスキルに関しては4つの大切な学ぶべきカテゴリがある。
1.学習に使う道具としての基本的な使い方
2. ICTを活用するに伴う責任、そしてICTを安全に使うための方法
3. ICTを使って情報を得たり、探究的・創造的な学習をすること
4. ICTを使って生産的・建設的な協働学習をする方法

ある小学校では、低学年向けに半日をかけて「パスワードの作り方」についての授業があったと聞きました。「パスワードがなぜあるのか」「パスワードを他人に知られるとどんなリスクがあるのか」「簡単に推測されない、かつ自分で覚えやすいパスワードはどんなものか」などのレクチャーを受けた後に、実際に子どもたちがパスワードをつくってみる、という授業でした。

フィンランドの小学校では、ICTを使う上でのリスクとメリットの両方を、段階的に学んでいるという印象を受けました。

iPadで数学を学んでいるところ

【TC6】自分の仕事をもって自立していく能力(Working life competence and entrepreneurship)

画像: 家庭科の授業のグループワークでも、「好きではない人と同じグループで作業することの意義(働くときには、好きかどうかは関係なく協力できる)」を先生が話していました。

家庭科の授業のグループワークでも、「好きではない人と同じグループで作業することの意義(働くときには、好きかどうかは関係なく協力できる)」を先生が話していました。

一言で言うとタイトルの通りですが、前提としてこう書かれています。

Working life, occupations and the nature of work are changing as a consequence of such drivers as technological advancement and globalisation of the economy. Anticipating the requirements of work is more difficult than before.

技術の進歩や経済のグローバル化により、“仕事” というものの性質が変化しているがゆえに、将来どんな仕事やどんな能力が必要になるかはもはや予測できない。

だからこそ、働くことやさまざまな職業へ興味をもち、働くことの根源である“人を助けることの喜び” を得る経験をし、起業することの可能性や価値を子どものころから学ぶことが大切だと考えられています。

「働く」ことを単に自分の時間や労力の対価として考えるのではなく、働くことに伴う以下のこと、

  1. 他者と協力する
  2. 働く際のスタンス(時間を守る、すべきことを確認するなど)
  3. 起業に伴うリスク判断と必要なリスクをとる
  4. 失敗にどう向き合うか
  5. 外的環境の変化にいかに柔軟に対応するか
  6. そしてより自分に合った仕事を探すスキル

などを、義務教育のなかでの教科学習や課外授業、自由時間に学ぶことが推奨されています。

就業観の育成の事例

フィンランドの義務教育における「就業観の育成」には、特筆したい事例や制度が多くあります。次回の記事では、この【TC6】に関連する事例をいくつか紹介するところからスタートしたいと思います。

日本の小学校にも“係”はあったが、フィンランドのクラスの係は“黒板を消す” “鉛筆の数を数える” “ドアの開閉” など具体的で実践しやすい業務が多いと感じた

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