新型コロナウイルスで学校の休校が続く中、竹内先生が校長を務めるインターナショナルスクールでは、ついにオンライン授業への完全移行したようです。そのオンライン授業での様子をレポートします。

  • オンライン授業に移行できる学校は少ない
  • Zoomの授業は安全なのか
  • Mathematicaが活躍? オンラインで算数を教える
  • 創意工夫でオンライン授業も充分に可能

これまでの【竹内薫のトライリンガル教育】はこちら

オンライン授業に移行できる学校は少ない

画像: オンライン授業に移行できる学校は少ない

新型コロナウイルスが日本に襲いかかっています。中国から入ってきた第一波は、厚労省クラスター対策班のクラスター追跡が功を奏し、なんとか抑え込んできましたが、欧米から入ってきた第二波は、東京、大阪、福岡などで感染爆発を起こしそうな段階に達し、緊急事態宣言が出されました。

この30年、私は科学のあらゆる出来事を読者や視聴者にお伝えしてきましたが、今回のパンデミックは、東日本大震災に伴って起きた福島第一原子力発電所の事故以上の、科学的な大事件となってしまいました。 

世界中の学校が休校となり、オンライン授業が世界標準になっています。日本では、残念ながら公立学校のIT化が遅れており、生徒が一人一台パソコンを与えられていないため、オンライン授業に移行できる学校は少ないようです。

YES International Schoolは先進教育が「売り」なので、緊急事態宣言が出るかなり前の3月半ばから、専門家による数理シミュレーションを分析しつつ、オンライン授業への完全移行を準備してきました。

とはいえ、数理シミュレーションの予測は、使うデータや数式によって、微妙に結果が異なります。現在、北海道大学西浦教授によるシミュレーションでは、人と人との接触を8割減らせば、いったん感染者数が収束するとされています。しかし、たとえば横浜市立大学佐藤教授(データサイエンス)によるシミュレーションでは、8割減では再び感染者数が増加に転じ、98%減にしないと収束しないとされています。

西浦教授のシミュレーションでは、いったん収束した後、再びクラスター追跡をする対策を考えているようなので、佐藤教授とは「ゴール」が異なるのかもしれません。いずれにしろ、数理モデルによる予測にも幅があり、判断が難しいのです。

私は理論物理学専攻だったので、いわゆる数学屋です。ですから、数理モデルの限界と効用のバランスを睨みながら、自分の学校は早めにオンライン授業に(いったん)移行せざるをえないと判断しました。

Zoomの授業は安全なのか

画像: Zoomの授業は安全なのか

ウチの学校がオンライン授業のために選んだシステムはZoomでした。典型的なテレビ会議システムですが、新型コロナウイルスが世界中に蔓延しはじめて以来、一日の使用者が1000万人から2億人へと急増しているそうです。

実は、YES International Schoolは過去にZoomを使って、数回、実証実験をしていました。遠隔地のお友だちとつないで、実際に双方向の授業をやった経験があるのです。

 

Zoomには守るべき使い方があります。通常のミーティングには9桁のIDが割り当てられているため、悪意をもった人がランダムに9桁のIDを打ち込むと、そのミーティングに乱入できてしまいます。いわゆる「Zoom爆弾」という奴です。すでにニューヨークやシンガポールでは、授業が部外者に荒らされてしまい、政府が「Zoom使用停止」を勧告する騒ぎになっています。

どんなシステムにも完全はありませんが、ウチの場合、ミーティングではなくチャンネルを設定しており、パスワードでがっちり守られた状態で先生が授業します。まさか、完全にオンライン授業に移行しなくてはいけない日が来るとは思っていませんでしたが、過去の実証実験のおかげで、セキュリティ面もきちんと担保できる「練習」ができていて幸いでした。

Mathematicaが活躍? オンラインで算数を教える

画像1: Mathematicaが活躍? オンラインで算数を教える

オンライン授業にもいろいろあります。主に動画を流して、教科書やドリルを使う方法もありますし、通常授業と同じように双方向のやり取りをする方法もあります。

一クラスの人数が10名を超えてくると、双方向のやり取りは難しく、ほとんどの場合、動画と教科書・ドリルで授業を進めるしかありません。ウチの学校は、先生一人あたりの生徒数が平均して7名程度なので、リアルな授業と同じように双方向で授業を進めることが可能です。

私が教えている算数の場合、オンラインに移行して、大きなメリットがありました。私が愛用しているMathematicaという数学プログラミング言語があるのですが、その「簡易版」と位置づけられる「Wolfram Alpha」が大活躍なのです(インターネットのブラウザーがあれば誰でも使えます)。

生きた算数を学んでもらいたいので、私は生徒たちに「新型コロナウイルスの感染者数の増大」をあらわす指数関数を教えはじめました。とはいえ、小学生にいきなり指数関数を教えるのは難しすぎます。

画像1: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

2の2乗は?

画像2: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

4

画像3: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

2の3乗は?

画像4: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

8

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2の4乗は?

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16

という具合に2の累乗を練習してから、

画像7: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

4の2乗は16だけど、それは2のx乗と同じです。xはなんですか?

というなぞなぞに入ります。(答えは4)

次にちょっと大きな飛躍があります。

画像8: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

2を2回かけると4になるので、逆に、4を1/2回かけると2になります。いいですか?

画像9: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

ええっ? 1/2回かけるってなに?

画像10: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

0.5回かけるという意味です。半分かけるんだ

画像11: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

ええっ? そんなの変だよ〜

画像12: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

4を4回かけるとどうなる?

画像13: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

4×4×4×4=256

画像14: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

じゃあ、その半分の回数かけることにして、4を2回かけると?

画像15: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

16

画像16: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

じゃあ、さらに半分の回数かけることにして、4を1回かけると?

画像17: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

4

画像18: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

では、さらに半分の回数かけることにして、4を1/2回かけると?

画像19: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

???

画像20: Zoomの授業は安全か 創意工夫でオンライン授業も充分可能なのだ

いいかい。2を2回かけると4になるんだよね。4を2回かけると16になる。16を2回かけると256になる。これを逆にやっていって、256を1/2回かけると16になり、16を1/2回かけると4になり、4を1/2回かけると2になるんだ

大人にとっては、1/2回かけるというのは「平方根を取る」ことに相当するので、わかりやすいのですが、平方根なしに「1/2乗」を教えるのは、なかなか大変です。

なんで、こんなことをやっているかというと、新型コロナウイルスの感染者数の指数関数では、「何日で2倍になるか」が大切だからです。日本は2月から3月中旬までは10日で2倍になっていたのが、3月半ばからは5日で2倍になりはじめ、また、深刻な状況に陥っているニューヨークやヨーロッパでは2日半で2倍になってしまうのです。そして、その違いをグラフで理解するためには、1/2乗だけでなく、1/10乗、1/5乗、1/2・5乗がイメージできないとだめなのです。

さて、累乗がわかれば、2のx乗のグラフを描くことができます。インターネットでWolfram Alphaにつないで、plot 2^xと入力すると、こんな画面になります。{x,1,10}は「xについて1日目から10日目まで(をグラフに描け)」という意味です。

画像2: Mathematicaが活躍? オンラインで算数を教える

オンライン授業の大きなメリットですね。私のパソコンの画面を「共有」し、どうやるかを示すだけで、生徒たちは真似ができ、自分のタブレットやパソコンで「体験」できるのです。

いまの場合、xは「日」を意味します。そこで、10日で感染者数が2倍になる場合は、plot 2^(x/10)という命令を使います。xが10になると2の1乗、つまり2倍になるからです。同様に、5日で感染者が2倍になる場合は、plot 2^(x/5)、2・5日で2倍になる最悪の場合はplot 2^(x/2.5)になります。この3つのパターンを同時に描いたのが次のグラフです。

画像3: Mathematicaが活躍? オンラインで算数を教える

黄土色のグラフは上の方が振り切れています。これが欧米で起きてしまった「オーバーシュート」です。真ん中の紫が5日で感染者が倍増する日本の場合で、一番下の青が10日で倍増する日本の2月から3月半ばまでの状況をあらわします。

2020年4月半ばの日本の状況は、真ん中の紫であり、なんとかして、下の青のラインに戻したいのです。逆に状況が悪化して、上の黄土色のラインになってしまったら、医療崩壊が起き、大勢の人が命を失うことになるでしょう。指数関数が爆発する、おそろしいラインです。

 

いかがでしょう? ピンチは同時にチャンスでもあります。オンラインだから犠牲になるものもありますが、逆に、オンラインの強みを活かして、最先端の数学プログラミングを体験してもらう。そして、なぜ、いま人類が大変な状況に陥っているのかを、数学の言葉で理解してもらう。

創意工夫でオンライン授業も充分に可能

今回は、YES International School横浜校のオンライン授業の取り組みをご紹介しました。遠隔地のみなさんとのつながりを重視する、ホームスクーラーのための東京校でも、(1日2科目の頻度で)Zoom授業をはじめており、私はセンスオブワンダーと文章講座を受けもっています。創意工夫によって、生徒たちに寄り添う教育が、オンラインでも充分に可能だと思うのです。

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