前回は、4月時点での世界4カ国の「小学校の対応」についての記事をまとめましたが、今回は遠隔授業への移行が2日で行われたフィンランドについて、その秘密を探ります。

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フィンランドの教育専門家と対話しながら休校後の日本の教育を考える

コロナウイルスが世界中に広まってから、約3ヶ月。世界全体での感染者数は400万人を超え、各国は対応に迫られています。前回は、4月時点での世界4カ国の「小学校の対応」についての記事をまとめました。

フィンランドは、遠隔授業への移行が2日で行われたと話題になっています。そこで筆者は、フィンランド人のNiilo Kervinen(ニーロ・ケルビネン)さんとフィンランドで先生をしていた元高校教師である地下智隆さんによるZoomイベント「フィンランドの教育専門家と対話しながら休校後の日本の教育を考える」に参加し、終了後に地下さんにインタビューを実施。5月中旬現在、世界最高水準を誇るフィンランド教育のコロナ対応についてまとめました。

画像: フィンランドの教育専門家と対話しながら休校後の日本の教育を考える

フィンランドの学校でのコロナ対応は

画像: 地下さん提供
地下さん提供

フィンランド政府が緊急事態宣言を出したのは3月16日。この段階でのフィンランド国内の感染者数は244人(10万人あたり4.41人)でした。この宣言と同時に、政府は各学校に対して「3月18日から遠隔授業へ移行すること」を指示しました。準備期間は実質2日間。

前回の記事でもまとめましたが、フィンランドでは世界的に見てもトップクラスで遠隔授業への移行がスムーズでした。「What's up」「Zoom」「Google classroom」などを活用して、オンラインで授業しています。

基本的には、全科目授業しています。延々と先生が話し続けるわけではなく、はじめにレクチャーをして、その後は各自が課題に取り組む形式がメインです。実技科目であっても、美術であれば「家にあるものでなにかをつくる」、体育であれば「スキーやハイキングをする」など、工夫を凝らしています。家に保護者がいることが多いので、保護者のサポートも借りているようです。

ただし、筆者の友人であるフィンランドの小学校の先生にインタビューしたところ、他国に比べてスムーズであったというだけで、実際はものすごく大変だったそうです。移行期の仕事について尋ねると、「It was really, really hard」と強く言っていました。

そして5月15日から、フィンランドでは学校への登校を再開しました。なるべく密集を避けるために通常とは異なる時間割を組んでいる学校もあるようです。フィンランドでは6月から、2ヶ月以上に及ぶ夏休みがはじまるのですが、このタイミングで登校の再開を決めました。

なぜ遠隔需要への移行がスムーズだったのか

ここまでのフィンランドの対応を聞いて、どう思いましたか? 登校停止や、登校の再開に関しては日本と大きな差はないように思えます。一方で、いくら先生たちがハードワークをしたからといっても、公立学校でZoomやGoogleクラスルームを使って授業をスタートするのは、簡単なことではありません。

なぜフィンランドでは、遠隔需要への移行がスムーズだったのでしょうか? ニーロさんと地下さんは、以下のように話します。

1. 通信環境とデバイスが整っているため

画像: 1. 通信環境とデバイスが整っているため

The Digital Economy and Society Index (DESI)によると、フィンランドはEU加盟国でもっともデジタル化の度合いが強いと言われています。

特筆すべき特徴としては、iPadのようなデジタルデバイスの高い普及率。ひとつの背景として、フィンランドでは企業が地元の学校に、寄付をするという文化が根づいています。たとえば筆者の訪れた中学校では、地元のビール会社が iPadを寄付していました。

地下さんが働いていた学校でも、家庭にデジタルデバイスがある生徒は自分の物を使い、持っていない生徒に対しては学校が貸し出すことで、生徒全員がインターネットにアクセスできる環境にあるそうです。

2. 現場の先生の裁量権が大きい

たとえばヘルシンキ市が、遠隔授業期間に現場の先生に伝えた方針は「毎日必ず、子どもたちとコミュニケーションをとること。」大きな方針だけ提示して、あとは現場の先生の判断をなるべく優先させるそうです。

日本の校長先生と、フィンランドの校長先生、それぞれの先生の方針は興味深いです

こう話すのは、何度も日本に来てたくさんの校長先生と話した経験のあるニーロさん。

日本の校長先生は、一番大切な役割は子どもたちの安全・安心を守ること、と話す人が多いです。これはこれで、ものすごく大切。一方でフィンランドの校長先生は、一番大切な役割は現場の先生が働きやすい環境をつくること、と話す人が多いです。

3. 「自分のペースで学ぶスタイル」を重視している

講義形式のオンライン授業を30分、1時間と受けるとなると、大人でも大変です。短い時間で要点を説明し、あとは子どもたちのペースで、教科書やドリルなどを使って学習を進めていくスタイルのほうが適しています。

その点フィンランドでは、元々このような授業スタイルがよく行われています。問題を解いたり、読書をしたりするときに、自分の好きな場所で好きなペースで進められるように、廊下に机やソファーが置いてある学校が多く、授業中にもよく生徒を見かけました。

画像: 3. 「自分のペースで学ぶスタイル」を重視している

先生の目が届いていない場でも集中できる習慣が身についているため、オンラインにも移行しやすかったようです。

なぜこのタイミングで学校を再開したのか

あと2~3週間で夏休みがはじまるにもかかわらず、学校を再開したフィンランド。国内メディアでは出回っていませんが、こちらの英文メディアでは、「Finland reopens schools despite virus warnings from teacher's union」というタイトルで、コロナウイルスの危険が伴う中での再開に賛否両論があることを指摘しています。

ニーロさんに意見をうかがうと、このように話していました。

僕にはどちらの意見もわかります。たしかに安全も大切です。遠隔授業でも知識の習得だけなら大きくは遅れません。しかしこのタイミングでの再開は、学校という場所の目的が知識の習得だけではないから。オンラインでは学びにくい、大切なことを学ぶ場所でもあるからだからだと思います。

日本でも地に足のついた対応を

今回はフィンランドでの対応を紹介しました。「海外は進んでいて、日本は遅れている」などというつもりはありません。諸条件の違いはあれど、日本の国民一人あたりのコロナウイルス感染者数は、OECD諸国の中でも最低レベルで低いのですから。

そもそもの習慣や環境の違いも冷静に捉えた上で、海外の取り組みも参考にしつつ、地に足のついた対応に少しでもつながれば嬉しいです。

【フィンランドの情報について】
本日インタビューした地下さんは、フィンランド教育に関する情報をTwitterとInstagramで発信しているので、最新情報については、ぜひこちらもチェックしてみてください。
Instagram:@tomofinedu
Twitter:@tomofinedu

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