小学校における「プログラミング教育」の必修化は、2020年4月から一斉にスタートとする予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で休校が続いたため、5月末時点で、すでに実施されているところもあれば、まだはじまっていないところもあるなど、足並みが乱れました。

しかし、これからの時代は明らかにプログラミング教育を求めています。本記事では、どうしてプログラミング教育を必修化するのか、授業がどう変わるのか、また中学や高校ではどう展開されるのかなど、さまざまな疑問を解説します。

【ポイント】

  • コロナ禍のさなか、プログラミング教育の必修化はじまる
  • 小学校では、主に5~6年生の算数、理科の教科書に登場
  • 中学では技術分野で、高校の情報科では共通必履修科目に登場
  • 直感的に学べる教材が充実しているので、楽しみながら学べる
  • これからの時代を生き抜く力が鍛えられると期待される

国内におけるコロナ禍と小学校の動き

画像: 国内におけるコロナ禍と小学校の動き

2020年4月は、全国の小学校で「プログラミング教育」が幕開けるはずでしたが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染の影響により、それどころではなくなってしまいました。

3学期の途中から大半の小学校は(臨時)休校となり、ほとんどそのまま春休みに入りました。4月になると、一部の地域では入学式などが行われたものの、緊急事態宣言を受けて、直ちに全国的に休校となります。その後、まず、5月中旬に北海道や首都圏を除く39県が、下旬に残りの都道府県が解除され、ようやく6月から1学期の学びが本格的に進められました。

月日コロナ禍に対する動き小学校の動き
1/15国内初の感染者
2/21全国の感染者数100件を超える
2/27全国の感染者数200件を超える北海道で一斉休校開始(札幌市など一部は28日から)
2/28北海道で緊急事態宣言全国で一斉休校開始(3月2日~春休み)
3/9全国の感染者数500件を超える
3/19北海道の緊急事態宣言解除
3/20全国の累計感染者数1,000件を超える地域ごとに感染状況に応じ再開可能に
3/24オリンピック延期決定
3/30全国の累計感染者数2,000件を超える
4/5一部(6割程度)で入学式
4/77都府県に緊急事態宣言(~5月6日)入学式の中止、延期
4/8全国の累計感染者数5,000件を超える
4/16全都道府県に緊急事態宣言全国で(臨時)休校へ
4/17全国の累計感染者数10,000件を超える
5/2全国の累計感染者数15,000件を超える
5/6緊急事態宣言の延長
5/1439県で緊急事態宣言の解除以降、順次、段階的に再開
5/25北海道や首都圏の緊急事態宣言解除以降、順次、段階的に再開
表1 コロナ禍と小学校との動き(2020年1月~5月)

*感染者数はサイト「都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ」(ジャッグジャパン株式会社提供)より

この後、第二波が来ることも考えられますし、当面は予断を許さない状況が続きますが、ひとまずこの時点で、プログラミング教育を開始する意義について、むしろ、こうした緊急事態下での生活をふまえたうえで、あらためて、プログラミング教育の意義や内容、展開などをふりかえってみましょう。

「情報活用能力」の育成を目指して

画像1: 文部科学省 / CC BY-SA creativecommons.org
文部科学省 / CC BY-SA
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まず、プログラミング教育の必修化は、「学習指導要領」の改訂によってもたらされました。学習指導要領は、文科省(文部科学省)が学校(小中高)で教える科目の内容を定めたもので、改訂は2018~19(平成29~30)年度に行われ、2020年(令和2)年度から実施となりました。そのなかで最大の話題が、小学校における「プログラミング教育」の「必修化」でした。

ただし「必修化」と言っても、「国語」や「算数」のような科目と同じように「プログラミング」という新たな科目が増える、ということではありません。「算数」や「理科」など、これまであった科目のなかに「プログラミング教育」の要素が必ず組み込まれる、ということです。

しかし、独立した科目でないにもかかわらず、なぜ「必修」なのでしょうか? それは国語のような「言語活用能力」以外に、「情報活用能力」の育成が「学習の基盤となる資質・能力」として位置づけられ、そのためとくに「プログラミング教育」を充実させることが目標となったからです。

省庁で言えば、文部科学省内部だけでなく、総務省や経済産業省がプログラミングの必修化を後押ししてきました。IT人材は世界中で不足しており、裏を返せば、世界中で働く機会があります。また、これからの時代、これからの社会、パソコンやスマートフォンなどIT機器の使用は、今まで以上に暮らしや仕事に組み込まれることが予想されます。単に道具として使いこなすだけでなく、その仕組みを知り、能動的に活用することが、将来どのような暮らしをするにせよ、どのような仕事に就くにせよ、重要であると考えられているのです。

そればかりか、2020年春に国内を襲ったコロナ禍は、学校教育はもとより、就労においても、オンライン化と在宅化を推し進めました。また、思い付きや力ずくではなく、ファクトやデータにもとづいて現状を把握し、今後の対応や対策を考えようという姿勢がよりいっそう求められるようになりました。プログラミング教育は、これからの時代を生きるために重要な役割をはたすであろうことは、誰もが認めることでしょう。

ところで、こうしたプログラミング教育が必修化されたのは、どういった経緯からでしょうか。学習指導要領の改訂の変遷から探ってみましょう。

学習指導要領の改訂の変遷

画像2: 文部科学省 / CC BY-SA creativecommons.org
文部科学省 / CC BY-SA
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これまで「学習指導要領」は、ほぼ10年ごとに改訂が行われ、その時代に必要な内容が盛り込まれてきました(表2参照)。

改定年特徴
1958~60(昭和33~35)年科学技術教育の向上
1968~70(昭和43~45)年算数に「集合」を導入
1977~78(昭和52~53)年ゆとり教育(目標内容の絞り込み)
1989(平成元)年「生活科」の導入、道徳教育の充実
1998~99(平成10~11)年「総合的な学習の時間」の新設
2008~09(平成20~21)年小学校に「外国語活動」を導入
2017~18(平成29~30)年小学校に「プログラミング教育」を導入
表2 改定時における学習指導要領の特徴

1989(平成元)年の改定では、第1章の「総則」の最後の部分にあたる「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」に、「視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用」が強調されていましたが、この時期にはまだ「コンピューター」は登場していませんでした。

これが、1998~99(平成10~11)年の改定では、「視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用」に加えて、「コンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ、適切に活用する」学習活動を充実させることが新たに加えられました。つまり、この時点から小学校教育にコンピュータ教育が開始されました。

2008~09(平成20~21)年の改定では、「コンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ、適切に活用する」具体的な内容として、「コンピューターで文字を入力」するなどの「基本操作」と「情報モラル」を身につけることが書き加えられました。SNSの利用が広まり、教育の現場で書き込み内容などの指導が必要となってきたのです。

そして最新の2017~18(平成29~30)年の改定では、「総則第3:教育課程の実施と学習評価」において、「コンピューターで文字を入力」するなどの「基本操作」の習得に加えて、「プログラミングを体験しながら、コンピューターに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身につけるための学習活動」を計画的に実施することが明記されました。

これまでの次元とは異なり、コンピューターを使えるようにする、というだけではなく、コンピューターの仕組みや原理を知り、能動的に使えるようにすることが目指されています(表3参照)。

改定年情報関連の特徴
1998~99(平成10~11)年コンピューター教育の導入
2008~09(平成20~21)年コンピューターの基本操作と情報モラルの習得
2017~18(平成29~30)年プログラミング教育の導入
表3 情報関連の導入の変遷

プログラミングの初歩を技術的に習得するとともに、コンピューター言語を支えているルールや規則などを具体的な側面から学ぶことになります。

さて、それでは続いて、実際にプログラミング教育が各科目でどのように行われるのか、実例をみていきましょう。

プログラミング教育が導入される科目

プログラミング教育は、単一の科目ではなく、いくつかの科目のなかで、必要に応じて登場します。主に、算数や理科、総合的な学習などで、プログラミングを行う場面が例示されています。学年別でみると、1年生の算数からプログラミングにふれている教科書もありますが、大半は、5~6年生の算数や理科で登場します。

画像: 2020年度から使用される教科書の中のプログラミング miraino-manabi.jp

2020年度から使用される教科書の中のプログラミング

miraino-manabi.jp

たとえば、5年生の算数では、「図形」のところでプログラミングが扱われています(東京書籍、大日本図書、学校図書、教育出版、新興出版社啓林館、日本文教出版など)。正多角形や円を書く手順を考えるという題材(Scratchなどを使用)です。これは、「正多角形の作図を行う学習」として位置づけられているもので、「正確な繰り返し作業を行う必要があり、更に一部を変えることでいろいろな正多角形を同様に考えることができる」ことを学ぶためです。

また、6年生の理科では、「物質・エネルギー」における「電気」のところに現れます(東京書籍、大日本図書、学校図書、教育出版、信州教育出版、新興出版社啓林館など)。センサーやLEDを使って人がいるときだけ明かりがつく装置をつくるうえで、プログラムを作成し、コンピューターに命令を出させるという題材(ScratchやMESHなどの使用も想定)が、教科書に載っています。これは「与えた条件に応じて動作していることを考察し、更に条件を変えることにより、動作が変化することについて考える」ことを学ぶためです。

「論理的思考力」を身につけることが強調されているものの、具体的には、教育用プログラミング言語やツール(電子ブロックやロボットキットなど)を教材として操作することになります。それほど堅苦しいものではなく、ゲームや遊びに近い感覚で学べます。

最後に、こうした小学校での取り組みが、その後の中高ではどのように展開されるのかを見ておきましょう。

中高におけるプログラミング教育

画像: 中高におけるプログラミング教育

「新学習指導要領」は、中学校は2021(令和3)年度から、高等学校は2022(令和4年)度から実施されます。

中学校では、技術・家庭科(技術分野)の教科書に、情報セキュリティに加えてプログラミングに関する内容が加わります。「プログラムによる計測・制御」は必修で、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」も学びます。

また、高等学校では「情報科」の「共通必履修科目」である「情報I」が新設され、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎に加えてプログラミングが加わります。

これまで情報科では「社会と情報」と「情報の科学」の2科目のうちの1科目をとる「選択必履修」のカリキュラムでしたが、「情報の科学」を履修する生徒の割合は約2割で、約8割は、高等学校でプログラミングを学ばずに卒業していたことから、「情報I」を新設し必修化しました。

このように、高校の「情報科」ではプログラミングを本格的に学びます。それと比べると小学校では、何よりもプログラミングに親しみをもつことと、実際の使われ方の基礎を理解することに重点が置かれていると言えるでしょう。

楽しみながら覚えられる機会が増える

画像: 楽しみながら覚えられる機会が増える

これまで、パソコンやスマートフォンの使用が一般化しても、「プログラミング」をする人はそれほど多くはありませんでした。しかし、これからの時代の仕事や暮らしを考えると、子どものころから「プログラミング」(とその背景にある論理的思考力)を学んでおくことが大切だと考えられ、小学校教育から必修化が行われました。

はじめての試みなので不安も多いとは思いますが、教育用に開発されたプログラミング言語やツールは直感的に操作できるように工夫されていますので、むしろお子さんにとっては楽しみながら覚えられる機会が増えることになると思います。保護者のみなさんも、プログラミングはハードルが高いと感じる方がいると思いますが、あまり身構えず、教材を通じてお子さんと一緒に学んでいくといいと思います。

ただし、2020年度はコロナ禍によって、正規の授業時間が十分に確保できなくなることから、どうしても、国語や算数以外の科目にそのシワ寄せがゆき、予定の時間よりも短く済ませてしまうこともりそうですし、場合によっては省略されるおそれさえあります。

しかもそれは「プログラミング教育」ばかりではありません。学校でパソコンに触れる機会もこの近年必ずしも増えているわけではありません。以前と比べると子どもたちのコンピューターツールはスマートフォンやゲーム機器が中心となっているため、WindowsやMacましてやLinuxで動いているコンピューターの操作や仕組みに慣れる機会が大幅に減少しています。

他の科目とのかねあいもあるので、そう簡単ではありませんが、できることなら、ハード面ではパソコンの基本的な操作と、ソフト面ではWordやExcel、PowerPointそしてメールやインターネットが普通に使えるくらいのスキルは、小学校のうちに磨いておいてほしいと思ってしまいます。これから、コードを書けてもExcelは使えないという小学生が増えるかもしれません。

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