今年から小学校でプログラミング教育が始まったものの、早々にコロナ禍に見舞われ、さっそく先が見えない時代へと突入してしまいました。しかし、NPO法人CANVASの理事長で慶應大学教授の石戸奈々子氏は、こんな時代だからこそSTEM教育は重要だと言います。その真意はどこにあるのでしょうか。

新連載【STEM教育で広がる子どもの未来】のその他の記事はこちら

第5の文明刷新「Society5.0」

画像: 内閣府のサイトより( https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/ )

内閣府のサイトより(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

新しい技術の発明は、社会を変化させてきました。18世紀末の蒸気機関の発明は、第一次産業革命を起こし、世界に機械化、工業化の波を起こしました。19世紀後半には、電力を用いた大量生産化をもたらす第2次産業革命が、そして20世紀後半には、コンピュータ技術の発達により自動化を促す第3次産業革命が起こりました。

そして今、AI、IoTなどの技術が牽引する第4次産業革命を迎えようとしています。これは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5の文明刷新「Society5.0」でもあるとされています。

技術の進化は、これからを生きるに当たり必要とされる力に変化をもたらします。それに伴い、学びの場も変化せざるを得ません。これまでの教育は、より多くの知識を得ることに評価の力点が置かれていました。均一化された知識を身につけた人材が求められるキャッチアップ型の工業型社会には、効果的だったからです。

しかし、経済がグローバル化し、大量の情報が国境を越えて行き交う情報社会になると、たとえ多くの知識を得たとしても、それはすぐに陳腐化してしまいます。社会の構造が大きく変化する中で、情報技術を使いこなし、世界中の多様な価値観の人と協働し、新しい価値を創造する力が、今まで以上に必要となりました。

快適な時代「平成」から、先が見通せない「令和」へ

30年間続いた「平成」は、情報技術の著しい発展により、便利で快適な時代へと変貌を遂げました。第3次産業革命の時代。同時にさまざまな秩序が崩れ、「いい学校」「いい会社」という考えも持続性が失われました。すでに、国際間競争の激化や産業構造の変化は、新卒一括採用、年功序列、終身雇用制度といったこれまでの日本型雇用システムの継続を難しくしています。しかしながら、これまでは「ムーアの法則」に代表されるように、変化は早いが法則はある、つまり未来が見通せる時代でした。

令和への改元とともに第4次産業革命、Society5.0を迎えようとしています。これは、見通しのきかない、法則のない、変化に次ぐ変化の時代です。産業に留まらず社会・文化・暮らしの全場面に変革をもたらしうる技術発展を前に、世界中で、これからの新しい時代をよりよく生き、よりよい社会にしていくために求められる資質・能力、それを育む学習環境について議論があらためて進んでいます。

子どもたちに求められるのは「変化に対応する力」

画像: 子どもたちに求められるのは「変化に対応する力」

OECDは、今の時代を「VUCA(Volatility『不安定』,Uncertainty『不確実』,Complexity『複雑』,Ambiguity『曖昧』)」の時代と表現し、その時代において必要とされるコンピテンシーとして「変革を起こす力」を掲げています。

 私は、予測できない未来を生きる子どもたちに求められるのは「変化に対応する力」だと考えます。それは、答えが決まった提示される問題を効率的に解く力だけではなく、大量の情報の中から必要な情報を取捨選択し、自ら課題を設計する力、生涯に渡り学習し続ける力であると言えます。

そして、その変革をもたらすのは言うまでもなく科学技術です。技術革新は社会を大きく変革させると同時に、雇用環境の変化ももたらします。ニューヨーク市立大学のキャシー・デビッドソン氏は、「子どもたち65%は将来、今は存在していない職業に就く」とし、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン氏が発表した論文「雇用の未来」では、コンピュータによる自動化が進み、約半数の仕事が機械に代替されると予測されています。

科学技術の発展は社会や経済発展の原動力

画像: 科学技術の発展は社会や経済発展の原動力

2019年の世界時価総額ランキングでは上位10位のうちIT・通信企業が6社入っています。それは、多くの仕事がなくなる一方で、新たな仕事が多数生まれることを意味します。これまでもなくなった職業の多くは新しい技術によって自動化され、代替されてきました。今後、あらゆる仕事が科学技術、とくに先端IT技術とは無縁でいられません。

現に、私たちはすでに、AI,ロボット,ドローン,ビッグデータ,フィンテック,エデュテック,アグリテックなどSTEM(Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉)に囲まれて生きています。すべての産業領域においてSTEM関連知識が必要とされるのです。そういった観点からSTEMの力は今まで以上に重要となると言えるでしょう。

科学技術の発展は、社会および経済発展の原動力であり、高度科学技術人材の育成と、すべての国民の基本的STEMリテラシーの向上は急務なのです。

画像: 不確実な未来に求められるのは「変化に対応する力」 STEM教育が目指すもの

著者紹介

石戸奈々子(いしどななこ)

NPO法人CANVAS理事長/一般社団法人超教育協会理事長/慶應義塾大学教授

東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、NPO法人CANVAS、株式会社デジタルえほん、一般社団法人超教育協会等を設立、代表に就任。慶應義塾大学教授。
総務省情報通信審議会委員など省庁の委員多数。NHK中央放送番組審議会委員、デジタルサイネージコンソーシアム理事等を兼任。政策・メディア博士。
著書には「プログラミング教育ってなに?親が知りたい45のギモン」「子どもの創造力スイッチ!」「デジタル教育宣言」をはじめ、監修としても「マンガでなるほど! 親子で学ぶ プログラミング教育」など多数。

これまでに開催したワークショップは 3000回、約50万人の子どもたちが参加。
実行委員長をつとめる子ども創作活動の博覧会「ワークショップコレクション」は、2日間で10万人を動員する。
デジタルえほん作家&一児の母としても奮闘中。http://creativekids.jp/

この記事が気に入ったら「フォロー」&「いいね!」をクリック!バレッドプレス(VALED PRESS)の最新情報をお届けします!

毎週最新情報が届くメールマガジンの登録はこちらから!

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.