東京・根津にある本屋「ひるねこ BOOKS」の店主小張隆さんは、オリジナルレーベルによる絵本の出版をはじめ、ネットでも話題となった「VOTE! & READ!」や「#CatsParade」キャンペーン活動の仕掛け人でもあります。そんな小張さん、オススメの一冊は『図解 はじめて学ぶ みんなの政治』(晶文社)。

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やってみないとわからないところがある

根津駅から徒歩 6 分、地元の人からは「キッテ通り」と呼ばれるかわいいらしい小道に「ひるねこ BOOKS」があります。ひさしのあるガレージには小説や写真集や洋書絵本の数々。2 冊 300 円や、一冊 50 円と破格の文庫均一コーナーが並びます。

画像: 絵本や文庫、小説のジャンルもさまざま。つい引き寄せられてしまう

絵本や文庫、小説のジャンルもさまざま。つい引き寄せられてしまう

選びがいのある光景に、今年はコロナ禍の影響を受けて中止となった本のイベント「不忍ブックストリート 一箱古本市」を思い起こしました。店頭では、2020 年最新版の MAP も配布。小張さんは、なぜ本屋さんの道に進んだのでしょうか? 立ち上げの経緯からうかがいました。

画像: 「不忍ブックストリート MAP2020」が配布されている

「不忍ブックストリート MAP2020」が配布されている

「幼いときから本に囲まれて育ち、本があるのが当たり前の生活だったんです」と話す店主の小張隆さん。読み聞かせされるうちに本好きを自覚。大学卒業後は児童書の出版社、童心社で営業として 8 年勤務した意外な経歴の持ち主です。

使命感から出版社を退職、本屋の道へ

営業時代には、書店訪問だけでなく、保育園や幼稚園へ出向き紙芝居の実演販売も。「他社の本もまんべんなく紹介するのは児童書出版社ならでは」とやりがいもあったとお話される一方で、小張さんの胸の内では、次第に本との距離に違和感が生まれていたと言います。

営業として「書店本部や取次への提案を意識していると、デスクワークで数字だけをみてしまいます。はたしてお客さんに対して本をキチンと届けているのか? こんな仕事をいつまで続けるんだろうか?」

画像: てきぱきと本棚を整とんする店主の小張隆さん

てきぱきと本棚を整とんする店主の小張隆さん

小張さんはふっと「本屋さんの目を持ちたい」そんな使命感を抱きます。出版不況が叫ばれる状況を「打ち破れないか」と意識が変化していくにつれ、引き留める周囲や仲間にも「やってみないとわからない」と、とうとう本屋さんへの道を進み始めます。

小張さんの軽快さと行動力のギャップに驚かされましたが、ご自身でも「一度決めたらやる、頑固な性格なんです」と自覚があるんだとか。3年間で営業職に戻るのもいいと考えてはいたそうですが、オープンして間もなく「(本屋を営むことは)どうやら大変なことだ」と驚きの事実に直面します。

「自分」にしかできないこと

仕事柄もあり本好きが当たり前だった環境に身を置いていた小張さん。「本や本屋に興味をもたない人」が多い現状に気づきます。筆者にとっても日々当然のような行動、つまり「本」の看板文字だけで立ち寄ってしまったり、本屋があれば覗いてしまったりする人は、日常的にそんなに多くはなかったそう。

画像: 小さな店内でも、足元から天井まで見どころが多い

小さな店内でも、足元から天井まで見どころが多い

さらに同じ「本」を扱う仕事でも、180度ガラリとやり方が変わります。そこで小張さんは、お店の方向性をあえて、本好きの人たちをターゲットにするのではなく「本や本屋に興味のない人」に向けて、すそ野を広げていく方向に転換します。

「想像できることをやっても仕方ないですから。商売としては間違っていますが(笑)それからは書籍も固い内容ではなく、ビジュアルや触り心地、軽さを求めました」

画像: 入口に貼られた写真、実家や近所で飼われている猫たち。

入口に貼られた写真、実家や近所で飼われている猫たち。

今では、新刊本、古本、北欧雑貨、ギャラリー、猫とさまざまなものが顏になるお店になりました。展示をきっかけに「ひるねこ BOOKS」レーベルでオリジナルの絵本の出版もはじめ、第5弾まで刊行されました。主役はいずれも猫。数多くの作家さんやお客さん、版元さんとも手を取り合い、互いに場をもり立てる雰囲気が常に絶えません。

画像: ひるねこ BOOKS レーベル第 2 弾『ねこくんとねずみくん ふたりでおでかけ』

ひるねこ BOOKS レーベル第 2 弾『ねこくんとねずみくん ふたりでおでかけ』

当初辞めてもいいと話していた3年の期間は過ぎ、5年目に突入。「本屋の活動はまだまだ物足りないです。今はみんなで店を作っているから、自分のものだけじゃない」と発見したと話す小張さん。イベント開催もままならない状況が続いていますが、店も街も楽しんで欲しいという願いがしっかり伝わってきました。

きっかけを求めていた「VOTE! & READ!」「#CatsParade」

選挙に投票した証明書を掲げれば、本が安く買えるキャンペーンとして打って出た「VOTE! &READ!」。実は小張さんの呼びかけが発端で全国に広まっていきました。賛同した書店は 35 店以上にも。ビジュアルを意識したアイデアも小張さんならではで、お店をきっかけに交流しているイラストレーター・やまぐちまりこさんへお願いしたそうです。

投票率の低さも選挙のたびにニュースに取り上げられるなか、現状をただ見守るだけでなく、すぐ行動に移していくのは、お店の立ち上げのときと変わらない、小張さんらしい部分だと実感します。

2019 年 7 月 21 日の参議院選挙時に広まった

#CatsParade」では 2020 年 4 月、国政へデモをする猫たちのイラストが象徴的でした。取り組みも声をあげるのにハードルを下げるため、と小張さん。

画像: レジ周りの掲示物には思い出のエピソードも

レジ周りの掲示物には思い出のエピソードも

さまざまな発想力は、どこから生まれてくるのでしょうか。「髪をセットしたり、まゆげを整えたりしていると、ふとアイデアが浮かんできます。そうと決めたら瞬発力勝負で。準備しすぎるとわざとらしさで意外と響きにくい気がします。人が力を貸したい、ついていきたいと共鳴する背景には、想いがありますから」

『図解 はじめて学ぶ みんなの政治』

最後に小張さんオススメの本を紹介してもらいました。

画像: 『図解 はじめて学ぶ みんなの政治』

そんな小張さんが本棚から抜き取ったのが『図解 はじめて学ぶ みんなの政治』(晶文社)でした。大人が今さら聞けない疑問にも、子どもが誰に聞いていいかわからない問いにも、図解で解説した一冊です。

民主主義とはなにか、戦争とはなにか。コロナ禍により「このままではいけない」思いをどう行動に移していくべきなのか?「ひるねこ BOOKS」を後にしたとき、迷いよりも不思議と希望を見出していることに気がつきました。

ひるねこBOOKS

  • 住所:〒110-0001 東京都台東区谷中 2-1-14-10
  • 営業時間:11 時~20 時
  • 定休日:火曜日、第2水曜日
  • 新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当面の間、営業時間を以下のように変更いたします。
    【平日:12 時~20 時 土日祝:12 時~19 時】
  • 電話:070-3107-6169
  • ウェブサイト
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店長オススメの一冊

  • 『図解 はじめて学ぶ みんなの政治』
  • 著者:アレックス・フリス他
  • イラスト:ケラン・ストーバー
  • 翻訳:浜崎絵梨
  • 監修:国分良成
  • 出版社:晶文社

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