前回までで、小金井市立前原小学校のプログラミング授業をすべて「IchigoJam BASIC」で行った話をしました。今回はその要であるCutlery Appsを使った最初のプログラミング授業と、4色のLチカ基板である「M01」の開発秘話、そしてLチカプログラミングの広がりについてお話しします。

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これだけではおもしろくない! プログラミング教材を自作

さて、前回お話ししたとおり、Cutlery Appsが、非常に魅力的なIchigoJamBASICのカード型プログラミング言語であることは実感できたのですが、ひとつ困ったことがありました。

それは作成したプログラムを実行しても、IchigoDakeについている「小さな赤いLEDライト」が点滅するだけで、おもしろくないのです。

※IchigoDakeを使ったフィジカルプログラミングの要ともなるカムプログラミングロボット(以下、カムロボ)も、このときにはまだ発売されていませんでした。

せっかくのプログラミング体験です。ワクワクする楽しい活動にしたいと思いました。

説明を聞きながら、このことを開発者の松田(まった)優一氏(ナチュラルスタイル代表取締役。以下、まった氏)に率直話をすると、ブレッドボードを用意して、そこに色のついたLEDライトをつなげれば、カラフルなLチカ(LEDをチカチカ光らせること)ができるとのこと。

まった氏のアドバイスを実際に試してみようと、その週に秋葉原へ出かけ、ブレッドボードとLEDライトを購入してきました。

ブレッドボードに4色(白、赤、緑、黄)のLEDライトを挿し、ジャンパーワイヤーでIchigoDakeとつなぎ、さらにCutlery Appsでプログラミングするタブレットとも接続モジュールを介してつなぐことで、「Lチカのプログラミング教材」が出来上がりました。

画像: 自作のLチカ教材

自作のLチカ教材

やってみると、たしかにおもしろい!いろいろなアイデアが試せます。4色一緒に点滅すれば、それなりの迫力はありますし、一色ずつ順番に点滅させたり、点滅の色を組み合わせたりもできます。

LEDライトを光らせる「OUT 1」「OUT 2」「OUT 3」「OUT 4」のカードと、LEDライトの色との対応を確認して、LEDライトを点滅させるプログラムを作成すれば、子どもたちはプログラミングの基本処理のうち、「順次実行」と「繰り返し(反復)」を体感的に理解できます。

また「〜びょうまつ」カードを使えば、そこに小数を代入して、LEDライトの点滅を1秒より短く設定することで、「ストリームライト(流れ点滅)」もできるのです。このプログラミングは、子どもたちが3年生で小数を学ぶときの貴重な体験になると思いました。

さらに、音楽に合わせてLチカをプログラミングすることで、リズムとテンポを体感できます。デジタルアートに興味を抱くきっかけとなるかもしれません。

【コラム】校内研究とCutlery Appsを活用したプログラミング授業の関係

初めてCutlery Appsに触れたときの印象は、「構成がシンプルで操作がとてもカンタン」、そして、低学年の子どもたちはドラッグ&ドロップはお手のものなので、「プログラミングするのに最適なコンテンツだ!」と思いました。

ちょうど前原小に着任して2年目。プログラミングを全校で実施するために、校内研究のテーマに「新しい学びの創造〜プログラミングを通して」を掲げ、毎月、授業提案を行っていたときでした。

この年の校内研究は、低中高学年の分科会がそれぞれ2回ずつ、つまりは全学年がプログラミングの授業提案を行うことになっていました。魅力的なプログラミングツールをさまざま試しながら、それらを子どもたちの発達段階を考慮して、積極的に授業実践するチャレンジをしていたのです。

5月と6月は、3年生と1年生がアンプラグドで授業を行い、10月には、4年生がマインクラフト(Mincraft)で論理回路を作成しました。そして11月の2年生の授業研究で、Cutlery Appsを活用した授業を実施したのです。

この後、1月に6年生が「Hit&Blow」というゲームのアルゴリズムをプログラミングしたり、2月には5年生が加速度センサーをScrathでプログラミングしたりする授業を行いました。また、校内研究と並行して産学連携(Artec×CA Tech Kids×学芸大学)事業として6年生の理科でStuduinoを活用したプログラミング授業を行ったのもこの年でした。

さまざまなトライを重ね、小学校段階のプログラミングの授業そしてそれを通してSociety5.0を生きる子どもたちに必要な新しい「学び」の在り方をまさに模索していたのです。しかしこの11月のCutlery Appsを使った授業が1年後に、小学校のプログラミングをすべてIchigoJamBASICで貫く体系化のスタートになるとは、予想だにしていませんでした。

実際に授業開始!

写真が実際の授業の様子です。子どもたちは先生の説明をしっかりと聞いて授業に臨んでいます。そして予想通り、手なれた様子でカードをドラッグ&ドロップして並べ、プログラミングしていきます。「やってみる」をタップして、思い通りにLチカできたときの子どもたちの笑顔は、最高に愛しく感じられます!

当然、初めからうまくプログラミングできるわけはなく、グループ(机をくっつけた)活動にすることで、友だち同士で教え合う場が拓け、自然とアクティブラーニングが成立するのもプログラミング活動の素敵なところです。

困ったら「教えて!」、わからない人がいたら「どうしたの?」と声をかけあう援助要請や能動的援助の大切さを話し、そんな場面を指摘すれば、子どもたちの関係性はより豊かなものとなっていくでしょう。

「先生、コードが外れちゃった!」

画像: ガムテープで補強した教材

ガムテープで補強した教材

プログラミング授業の内容や構成と展開は大成功と確信しましたが、授業を実施した際に、自作教材の大きな不備が顕在化しました。

ジャンパーワイヤーがすぐに外れるのです。研究授業当日はジャンパーワイヤーが外れるのを極力避けようと、写真のようにガムテープで教材を固定して授業を行いました。それでも、子どもたちがプログラミングすれば、教室のあちらこちらから「先生、コードが外れちゃった!」との声が上がりました。

いくら内容と構成がよくても、教材に不備があってその対応に追われるようでは、教員が一人で行うような授業で活用することはできません。

ところが、その研究授業からたった9日後に、当時授業を見に来ていたまった氏から、校章入りの「前原1号」と命名された4連LED基板が学校に届けられたのです。

IchigoDakeに4連LED基板を上からはめ込んで、接続モジュールを介してタブレットと接続すれば、ジャンパーワイヤーが外れることなく、安心してプログラミングに取り組めるのです。

※現在この「前原1号」は改良されて「M01」(写真:青色の4連LED基板)として、ナチュラルスタイルで販売しています。

前原小では、この研究授業の後に、1年生がこの4連LED基板(M01)をCutlery Appsでプログラミンするカリキュラムを作成して、その実践が確実に引き継がれています。そして2年生では、同じくCutlery Appsを使ってカムロボを縦横無尽に動かすプログラミングで、楽しく「学び」を進めています。

Cutlery Appsは低学年の子どもたちにとって、まさに最適なプログラミング言語となったのです。

【コラム】4連Lチカ基板(M01)開発秘話

今回の授業研究には、当日わざわざ福井からまった氏が参観に来てくれていました。ただ、その授業研究では、私とまった氏が助けに入ったことでなんとか授業が展開できたのも紛れもない事実でした。これでは、授業後の研究協議会で指摘されるのも仕方ありませんでした。

低学年の子どもたちが行うプログラミング体験としては、最適な教材になるのに……という思いは捨てきれずにいたものの、私にはガムテープでの補強策しか思いつきません。そんな私に、翌日まったさんから連絡がきたのです。

「4連LED基板、回路を設計して中国に発注したから。すごいよ。楽しみにしていて!」

話を聞くと、「帰りの新幹線の中で4つのLEDライトを取りつけた基板を考え、その回路を設計して中国に発注した」というのです。

まった氏のこの話を聞いたときは、言葉に詰まりました。子どもたちの楽しそうに「学ぶ」姿が、開発者の矜恃(きょうじ)を揺さぶり、4連LED基板の開発に向かわせたのだと感じました。

「ランプシェード」に「教室に電飾で飾り付け」Lチカで広がるプログラミング

最後に、Cutlery AppsによるLチカプログラミングの発展について紹介します。

4連LED基板の上に、和紙などでランプシェードを作って被せれば、それはもう光アートの体験です。そしてLEDコードを用意すれば、教室の飾り付けができたり、ツリーの電飾もできたりします。その可能性は無限に広がり、STEAM教育のArt(芸術と技術)を子どもたちが低学年の段階で体感できる、極めて貴重な体験も可能にします。

低学年の子どもたちのプログラミングの様子を見ていれば、それは「現代の砂場遊び」です。「砂場遊び」を教える大人はいません。ただ危険に晒されないよう、子どもたちの活動を見守るだけです。私自身が子どもたちのプログラミングの様子を見ていて、「学び」に対する考え方が大きく揺らぎました。

「委ねる」ことが、子どもたちにとってとっても大事な「学び」になるんだと。そんな思いを、次回もお話ししたいと考えています。

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