全国の自治体や教育委員会が主催者となって、子ども向けプログラミングコンテストが開催されることが増えてきました。そこで、すでに開催されたコンテストの担当者をお招きしてWebセミナーを開催。また、IT業界をあつかったドキュメンタリー映画『GENERAL MAGIC』についても紹介します。

その他の【遠藤諭の子どもプログラミング道】はこちら

一生の宝となるような体験になる

長野県、静岡県、和歌山県、鹿児島県で、すでに子ども向けのプログラミングコンテストを開催されている担当者をお招きして、Webセミナーを開催することになりました。9月15日(火)に開催の「プログラミングコンテストの作り方」です(主催:全国小中学生プログラミング大会実行委員会、共催:株式会社朝日新聞社)。

日程的に、この原稿が掲載されるタイミングがギリギリなので、“生”ではご覧いだたけない可能性があるのですが、アーカイブかレポートの形で残したいと思います。

オンライン登壇していただけるのは、以下の4つのコンテストの担当者で、全国小中学生プログラミング大会実行委員会から、NPO法人CANVASの土橋遊さんと私がモデレーターをつとめます。

コンテストの概要やねらい、開催のきっかけや経緯、運営体制や資金面、いままでの応募状況や成果などについて、コンテストごとに紹介いただいたあと、意見交換をしていきます。

そんな登壇いただくコンテスト担当者と、先日、事前打ち合わせをオンラインで行ったのですが、次のことをテーマにしたらどうか、という意見がでました。

「新型コロナ禍下で発表会や表彰式はどのように行うのがよいのか?」

たしかに今年は、いままでリアルで行われていたイベントや見本市などが次々とオンライン開催となり、実際にコンテストを運営する側としてはとてもなやましいことだと思います。子どもたちの感染リスクを考えると、表彰式などもオンラインでということも考えられます。ポリシーやノウハウの話になるのかもしれません。

画像: 9/15(火)18:00よりWebセミナー「プログラミングコンテストの作り方」開催。長野、静岡、和歌山、鹿児島の各県で開催されているコンテスト公式ページより。これら4つのコンテストは全国小中学生プログラミング大会のエリアパートナーにもなっていただいている。

9/15(火)18:00よりWebセミナー「プログラミングコンテストの作り方」開催。長野、静岡、和歌山、鹿児島の各県で開催されているコンテスト公式ページより。これら4つのコンテストは全国小中学生プログラミング大会のエリアパートナーにもなっていただいている。

今回担当者においでいただくコンテストは、いずれも作文や絵画のコンテストのように一定期間に作品を制作して応募する《作品コンテスト》です。プログラミングのコンテストとしては《競技プログラミング》(あるいはプロコン)と呼ばれるスポーツのように、一斉にプログミングの問題を解くというタイプもあります。

たとえば、私が第1回から一昨年の第16回まで審査員をつとめた「パソコン甲子園」(正式名称は全国高等学校パソコンコンクール )では、「プログラミング部門」が競技プログラミング、「モバイル部門」が作品コンテストになっています。

プログラミング部門は、広い会場にチームごとの机の“シマ”を作って、その場でプログラミングの問題を解いていきます。問題が解けると、そのシマに難易度によって色の異なる風船があがる仕組みになっていて、本当に白熱した戦いが繰り広げられます。

一方、モバイル部門は、何カ月もかけて開発してきたオリジナルのアプリ作品をプレゼンしたあと、審査員に対するデモンストレーションと質疑応答で審査されます。

競技プログラミングならオンラインで同時に競いあえばできるような気もしますし、作品コンテストなら、仕上がったものを審査してもらえばよいようにも思えます。ところが毎年感じるのは、ライバル校や審査員・関係者とのやりとりに、大きな価値があるということです。

本戦まで勝ち残った70名の高校生・高専生が、会場である会津大学までやってきて、2日間の会期の1日目の夜に行われる交流会はとても刺激的だと思います。しかも、その日はそのままホテルに泊まるので、プログラミングという共通理解のある、ふだん会話する機会もない仲間たちとのつながりもできます。これがなんとも、見ているだけでも楽しそうだし、うらしやましい気分になります。

このあたりご興味のある方は、「世界水準《プログラミング部門》の今年の問題も大公開! 日本のITは"部活"が支えている!! パソコン甲子園2016レポート」などご覧ください。

画像: パソコン甲子園のプログラミング部門の風景。交流会といえば、個人的に苦い思い出がある。中学3年生のときに「日本学生科学賞」の授賞式に長岡から東京まででかけて、そのあとのホテル一泊と交流会に参加できなかった(学校の都合)。あの日、ほかの生徒と同じように山の上ホテル(お茶の水)に泊まって誰かと友だちになれていたら、一生の宝物になったと思う。

パソコン甲子園のプログラミング部門の風景。交流会といえば、個人的に苦い思い出がある。中学3年生のときに「日本学生科学賞」の授賞式に長岡から東京まででかけて、そのあとのホテル一泊と交流会に参加できなかった(学校の都合)。あの日、ほかの生徒と同じように山の上ホテル(お茶の水)に泊まって誰かと友だちになれていたら、一生の宝物になったと思う。

「失敗」は終わりではないということを知ること

作品コンテストというのは、(これは当たり前なのですが)それを作る“人”のためのコンテストであるということです。ところで、プログラミング作品を作ることが、子どもたちに教えてくれるものは何なのかを連想させる映画を、角川アスキー総合研究所でオンライン上映します。

『GENERAL MAGIC』という、IT業界をあつかったドキュメンタリー映画で、一昨年米国で公開されて数々の賞を受賞しました。有料上映なので、いささか宣伝みたいになってしまうのですが紹介させてください。というのは、この映画で描かれた内容が、プログラミングを学ぶことの魅力や価値そのものともいえる部分があると思うからです。

GENERAL MAGICというのは、1990年に、アップルコンピューターが作った会社で現在のスマートフォンに相当するデバイスを作ろうとしていた会社です。元になったのは1980年代なかば、「ポケットクリスタル」という端末のアイデアなのですが、これを考えたマーク・ポラットは本当にビジョナリーだと思います(もっとも電子手帳はそろそろ出てくるころで日本のポータブルオーディオにも刺激されたらしい)。

画像: 映画『GENERAL MAGIC』は、シリコンバレーで最も重要な失敗企業の記録。アップルの子会社として将来を嘱望されていたがゆえに豊富に撮りためられた映像と現在の当人たちへのインタビューの対比がみどころ。

映画『GENERAL MAGIC』は、シリコンバレーで最も重要な失敗企業の記録。アップルの子会社として将来を嘱望されていたがゆえに豊富に撮りためられた映像と現在の当人たちへのインタビューの対比がみどころ。

まだモバイルでのデジタル通信は行われておらず、インターネットはあってもWebがなかった時代。はやくも「クラウド」という言葉と概念を提唱して、ほぼスマートフォンそっくりといってよい端末を世に送り出します。

画像: 映画の中で紹介されるポケットクリスタルのスケッチ。これをもとに作られた端末(ソニーのMagicLinkやモトローラのEnvoy)は、同時期に登場したザウルスやニュートンにくらべてクラウドを介したコミュニケーションを重視した設計。エージェント指向言語のTelescriptも先進の技術だった。

映画の中で紹介されるポケットクリスタルのスケッチ。これをもとに作られた端末(ソニーのMagicLinkやモトローラのEnvoy)は、同時期に登場したザウルスやニュートンにくらべてクラウドを介したコミュニケーションを重視した設計。エージェント指向言語のTelescriptも先進の技術だった。

ところが、なんと親会社アップルが、これを潰しにかかるかのような「ニュートン」というライバル端末を発売してしまうのでした。GENERAL MAGICの端末は、当時のデバイス技術や通信方式の未成熟から開発は難航。

それでも、その先進性ゆえ株式公開されるや世界的な注目を集め、1994年には、ソニーやモトローラ、AT&TやNTTを巻き込んで製品化にこぎつけます。しかし、高価格である上にまだユーザーがこれを求めるところまできていなかったことなどから、まったく売れず大きな挫折を味わうことになります。

画像: 映画の中に出てくるミーガン・スミス。彼女はアップルジャパンにいた時期があり、私が『月刊アスキー』の編集長になったころの日本の状況もよく知っているそうだ。つまり、私個人としては、ネット前夜の同時代の人たちの記録なのだが、米国での映画の評判を見てもわかるとおりテクノロジーやスタートアップ、さらにはすべてのビジネスパーソンに捧げられた内容となっている。つまり、モノを作ることやイノベーション、仕事をすることについてのお話だ。

映画の中に出てくるミーガン・スミス。彼女はアップルジャパンにいた時期があり、私が『月刊アスキー』の編集長になったころの日本の状況もよく知っているそうだ。つまり、私個人としては、ネット前夜の同時代の人たちの記録なのだが、米国での映画の評判を見てもわかるとおりテクノロジーやスタートアップ、さらにはすべてのビジネスパーソンに捧げられた内容となっている。つまり、モノを作ることやイノベーション、仕事をすることについてのお話だ。

そんな“失敗”の伝説としても知られていたGENERAL MAGICですが、00年代に入って眺めてみると、そこに在籍した若者たちが大きく育っていたことが明らかになってきます。iPodをアップルに提案、iPhoneを作ることになるトニー・ファデル(その後もIoTブームの先駆けとなったNestを創業)、アンドロイドの生みの親であるアンディ・ルービン、グーグルアースやグーグルマップで重要な役割をはたし米オバマ政権時に米国CTOとなったミーガン・スミス、ほかにも何人もがさまざまな形で活躍。eBayの創業者であるピエール・オミダイアの顔も見えます。

映画のトレーラーの最後に、

ジェネラルマジックを知るべき理由は、すべての人に共通する根本的ななにかに関わるものだからです(The reason you should care about General Magic is that it involves something fundamental. )

という言葉が出てきます。そして、

それは、失敗は終わりではない。失敗は実は始まりであるということです( And that is, "failure isn't the end, failure is actually the beginning.)

という言葉で結ばれているのでした。なにしろ、シリコンバレーでも有名な大失敗をしたはずの会社が、実は、いまの我々の生活のようすを変えるほどの仕事をしていたけわです。

プログラミングコンテストで作品を作ろうとするとき、子どもたちも子どもたちなりに、この映画に出てきた若者たちと同じように夢を想い描きます。そして、コードを書いたり素材を作るなかでは必ず小さな壁に直面するはずです。コンテストでは、そもそも、誰にも評価されないこともあるかもしれないので、そういう意味での挫折もあります。

しかし、孤独な失敗や挫折とはちがって自分と同じような誰かを発見したり、出会ったりすることは、成長していく物語の原型でもあります。《失敗》は終わりではないことが子ども本人にも感じてとれていくのがコンテストではないでしょうか。

9月15日(火)「プログラミングコンテストの作り方」は、こちらからお申込みください。参加費無料、どなたでもご覧いただけます。

映画『GENERAL MAGIC』(日本語字幕付き)特別上映会は、こちらからお申込みください。上映のあとには、ミニ座談会が用意されており、10月1日(木)川島優志(Niantic, Inc. アジア・パシフィック オペレーション 副社長)+齋藤洋(当時のソニーの事業企画担当)、10月2日(金)清水亮(株式会社ギリア代表取締役社長)+原野守弘(株式会社もり代表 クリエイティブディレクター)、10月3日(土)鈴木直也(当時のソニー端末開発者)+林信行(テクノロジージャーナリスト/コンサルタント)といった方々をお呼びしています(敬称略)。

この座談会参加者の方々からいただいた映画へのコメントが、この映画をさらにうまく説明しているので、ご興味のある方は、こちらもご覧ください。

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