世界的にも進んでいるフィンランドの学校教育。その根底に流れている教育の理念について、今回は具体的に小学校1、2年生で学ぶ数学の狙いや内容について、踏み込んでいきます。

4つのカテゴリーに分かれる「数学の学び」

数学の学びは4つのカテゴリーに分かれます。(C=Contents 1-4 )

C1 Thinking skills (考える力を身につける)

まず、物事の“似ている点”“違っている点”、そして“規則性”を見つけるという経験を積むことからはじめます。比較する・分類する・順序に並べる・物事の因果関係を導くことによって、考える力の基礎を育みます。

同じ数学の式を別の角度から考えてみること(たとえば“1+2=3” という式を“りんごの数”にするのか “面積”や“時間”とするのか、といったこと)や、プログラミングの基礎として簡単な「命令文」を書いてみることもその一つです。

C2 Numbers and operations (数字を扱うスキルを身につける)

“数”という概念や”デジタル表記”に親しむために、まずはものを数える・数的なものに触れる・数を見積もってみる(estimating:どれくらいあるかな?)ことを大切にします。1、2年生では、“奇数・偶数”“倍数”“等分”“分解”などの概念を“1-10まで”といった比較的小さな数の中で学びます。

※C2で書かれているスキルは、日本の算数と性質が似ていると考えられますが、計算の正しさや速さを評価する傾向の日本と比較し、“1-10まで”といった狭い範囲の中で多くの計算をするといった点に、フィンランドの特徴があると言えます。

C3 Geometry and measuring (幾何学と計測)

子どもたちが、周囲にある3Dのものについて、知覚するスキル・平面の図形をより詳細にみるスキルを養います。主に“方向”と“位置”について学び、その概念を使う練習をします。

平面の図形(四角形・三角形・円など)について呼び名を理解することに加え、自分で描いてみたり紙を切ったりしてつくってみることも大切にしています。それによって“線”・“点”・“面”といった言葉がより身につくのです。

また計測においては、実際に長さ(cm/m)・質量(g/kg)・体積(L/dl)・時間などの尺度を測り慣れていくために、生活の中でよく使うものを使って学びます。

C4 Data processing and statistics (データの扱い方や統計)

フィンランドの教育では、情報をただ受け取るだけではなく、批判的に考え処理することを早くから実施しています。小学校1,2年生においても興味のあるトピックの中で、データを集めそれを表現する(簡単な表や棒グラフ)練習をします。

「学びの狙い」と「スキル」の関係

次にC1-C4が、12あるObjectives(学びの狙い:O1-O12)、そして7つあるTransversal Competencies(教科を横断する子どもたちが身につけるべきスキルや能力:T1-T7)と、どう関連しているのかを表でお伝えします。

先生たちは、下記の学びの狙い、学びの内容を軸としながら、地域や学校単位で決めた、より詳細のカリキュラムを自分のクラスに合う形でアレンジし日々の授業や課題を準備し、振り返り……を繰り返していくのです。

  • T1. 自分で考え学ぶことのできる能力
  • T2. 自分がもつ文化を大切に思い、それを表現する能力
  • T3. 自尊心をもち、自立した生活をする能力
  • T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親、使い分ける能力
  • T5. ICTを活用する能力
  • T6. 自分の仕事をもって自立していく能力
  • T7. 持続可能な社会の一員としての自覚とスキル

※T1-T7は、国語・算数などのすべての教科で共通です。

学びの狙い学びの内容教科横断のスキル・能力
Significance, values, and attitudes(数学と向き合う基本的スタンス)
O1. 数学を使うことに自信をもち、ポジティブに向き合うための素地としての興味や関心へ導くC1 Thinking skills (考える力を身につける)
C2 Numbers and operations (数字を扱うスキルを身につける)
C3 Geometry and measuring (幾何学と計測)
C4 Data processing and statistics (データの扱い方や統計)
T1. 自分で考え学ぶことのできる能力
T3. 自尊心をもち、自立した生活をする能力
T5. ICTを活用する能力
Working skills(数学的スキル)
O2. 数学をさまざまな状況で有効に使えるようにするため、数学的に“観察する力”と“解釈する力”を自らつけていくよう導くC1 Thinking skills (考える力を身につける)
C2 Numbers and operations (数字を扱うスキルを身につける)
C3 Geometry and measuring (幾何学と計測)
C4 Data processing and statistics (データの扱い方や統計)
T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
O3. さまざまな形で(算数セットのような具体的なもの・お絵かき・スピーチ・作文・その他ITツールなどを使用して)、数学的な考えや解決法をアウトプットし表現すするようなきっかけをつくるC1 Thinking skills (考える力を身につける)
C2 Numbers and operations (数字を扱うスキルを身につける)
C3 Geometry and measuring (幾何学と計測)
C4 Data processing and statistics (データの扱い方や統計)
T2. 自分がもつ文化を大切に思い それを表現する能力
T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
T5. ICTを活用する能力
O4. 論理的思考力・問題解決力を自ら育てて行けるよう導くC1 Thinking skills (考える力を身につける)
C2 Numbers and operations (数字を扱うスキルを身につける)
C3 Geometry and measuring (幾何学と計測)
C4 Data processing and statistics (データの扱い方や統計)
T1. 自分で考え学ぶことのできる能力
T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
T6. 自分の仕事をもって自立していく能力
Conceptual objectives and objectives specific to the field of knowledge(数学的な概念/知識の獲得)
O5.数学の概念や数学的な書き方(数式など)を理解できるよう導くC1 Thinking skills (考える力を身につける)
C2 Numbers and operations (数字を扱うスキルを身につける)
C3 Geometry and measuring (幾何学と計測)
C4 Data processing and statistics (データの扱い方や統計)
T1. 自分で考え学ぶことのできる能力
T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
O6. 数の概念や10進法の考え方に慣れるようサポートするC2 Numbers and operations (数字を扱うスキルを身につける)T1. 自分で考え学ぶことのできる能力
T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
O7. 基礎的な計算方法に親しむきっかけをつくる(どんなときに、足し算/引き算を使うのか、など)C2 Numbers and operations (数字を扱うスキルを身につける)T1. 自分で考え学ぶことのできる能力
T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
O8.実際の数字や暗算を試してみることで、自然に(fluentに)数を扱うことに慣れるよう導くC2 Numbers and operations (数字を扱うスキルを身につける)T1. 自分で考え学ぶことのできる能力
T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
O9. さまざまな図形に親しみ、それぞれの特徴を観察できるようなきっかけをつくるC3 Geometry and measuring (幾何学と計測)T1. 自分で考え学ぶことのできる能力
T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
T5. ICTを活用する能力
O10. “計測する”ということの主旨を理解できるよう導く(数・量・長さ・時間、何のために測るのか?)C3 Geometry and measuring (幾何学と計測)T1. 自分で考え学ぶことのできる能力
T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
O11. 表や図表と親しむきっかけづくりするC4 Data processing and statistics (データの扱い方や統計)T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
T5. ICTを活用する能力
O12. 指示通りに一つ一つ式を書いたりプログラミングの命令文をのようなものを生成するスキルをサポートするC1 Thinking skills (考える力を身につける)T1. 自分で考え学ぶことのできる能力
T2. 自分がもつ文化を大切に思い、それを表現する能力
T4. 多様な状況やメディアにおける言語表現と親しみ、使い分ける能力
T5. ICTを活用する能力
画像: フィンランドにも、“数学が苦手”という子どもがいますが……

フィンランドにも、“数学が苦手”という子どもがいますが……

数学を嫌いにならないように

人の認知の仕方や考え方にはさまざまな特徴があり、その特徴が“数学的な考え方”にフィットしている人と、そうでない人がいます。しかしどんな人でも今、私たちが生きている社会の中では、数学的/論理的な思考が必要となります。

このカリキュラムを読み解いていくうちに、以下のことを感じました。

“どんな特徴をもつ子どもも、数学を嫌いにならないために、数学の方から子どもに歩み寄っていくといく”というイメージです。歩み寄りにも、さまざまなパターンがあり、「簡単なものからはじめる」「複数の学び方から選べる」「子どもにとって身近なことに置き換える」「楽しく感じられるようアレンジする」「手を動かすプロセスを入れてみる」など。

『できないから、練習しよう』と鍛え上げるだけではない、柔軟性を感じられました。

次回は、フィンランドのカリキュラムの”Environmental studies”(日本で言う“生活科”に近い)についてお届けします。

【コラム】フィンランドの秋

フィンランドの秋は、8月中旬からはじまっています。学校がスタートし新学年がはじまるのも8月中旬から。9月になるとヘルシンキでも紅葉がはじまり、人々は屋外でピクニックしたり、ジョギングやサイクリングをして“暗くて寒い”冬の前の時間を楽しみます。

日本の人にとっての“国内旅行”の感覚で、隣国のスウェーデン・エストニア・ノルウェーなどへよく旅行をし、冬でも日光を浴びることのできるスペインやイタリアなども人気の旅行先です。2020年は、まだスペイン・イタリアへの渡航ができないため、私の友人は車で国内旅行をし、いつか海外旅行できる日を楽しみにしているようです。

フィンランドに住む友人は「いつまでこの状況が続くのか、国内のすべての都市へ行き尽くしてしまったらどうしよう(笑)」などと言っています。フィンランド人にとって、フィンランドはあまり見どころがない、という認識が強いようです。

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