フィンランドの小学校1、2年生のカリキュラムの中で、国語、数学に続く主要な教科とされる「Environmental studies」の概要について共有しましょう。直訳すると「環境学」となりそうな教科ですが、日本でいうと「生活科」に近いものだと考えられます。

環境と言っても「仕事環境」や「子育て環境」に近い

日本では、少し前まで「環境(≒environment)」と聞くと「自然環境(海や川、森林、動物など)」をイメージすることが多かったかと思いますが、最近では「仕事環境(同僚・報酬・デスク周り・オフィスなど)」や「子育て環境(保育園の充実、公園の有無、交通量、買い物のしやすさなど)」というように、“ある事柄に関連するもので、物理的なものに限らない”といった定義で使われることが増えてように感じます。

フィンランドの小学校1、2年生における「Environmental studies」のenvironmentは、後者の意味合いが強く、子どもが今現在や未来を生きていくための広義の環境を指す教科となります。本記事では、本来の意味をそのまま伝えるため、和訳はせずに「Environmental studies」として表記します。

「Environmental studies」をどう捉えているか

Environmental studies is an integrated subject which comprises the fields of knowledge of biology, geography, physics, chemistry, and health education and includes the perspective of sustainable development.
 
「Environmental studies」は、(地球全体としての)持続可能な発展という視点に根差した、「生物」「地理」「物理」「化学」「保健体育」といった教科の基礎を学ぶ教科である。

Viewpoints of both natural and human sciences are integrated in environmental studies. In environmental studies, the pupils are considered a part of the environment in which they live.
 
「Environmental studies」では、自然科学と人間科学の両方の視点から物事を捉え、そこでは子どもたちも環境の一部としてみなされる。

Respect for nature and a life of dignity in compliance with human rights are the basic principles in teaching and learning.
 
この教科を教え、学ぶ際には「自然」と「人権」への敬意をもつことが大切。

「Environmental studies」では子どもたちがこれから生きていく上で経験したり(生活の中で)、学んだり(生活や学校で)することの素地として、「人は、心身の健康を保つことが大切で、自分の一つ一つの行動が、周囲の人や環境にどのような影響を与えるか、また周囲の人や環境の変化は何に起因しているのかを理解すること」を目的として設計されています。

それゆえに、「multidisciplinary(複数の教科と相互に関わり合う)」性質をもった教科として位置づけられ、国語・算数・宗教・アートなどの授業と連携しながら、子どもたちがcriticalな視点をもって周囲の環境や情報を取得し・処理し・産み出し・表現し・評価し・報告するようなスキルを、身につけることを学びの主眼と置いています。

「Environmental studies」のタスクは何か

また、前述の通りこれから学校で学ぶであろう「生物」「地理」「物理」「化学」「保健体育」などの教科の基礎知識として、以下の内容をカバーするようカリキュラムに書かれています。

  • 「生物」の素地として、人間の身体と自然環境・その前提となる“地球”について学びます。
  • 「地理」の素地として、地球のさまざまな地域の環境と身近な環境、そしてそこに住む人々について学びます。
  • 「物理」の素地として、自然界における物理現象について、できるだけ子ども自身のリサーチを通して得られた情報を理解し、説明するということを学びます。
  • 「化学」の素地として、さまざまな”物質”の違いや変化について実験をし、観察し、説明をすることを学びます。
  • 「保健体育」の素地として、自分たちが安全でよい状態でいられるためには、どんなものが必要でどんなことをすべきかを考えられる能力を養います。

子どもが自分の周囲の環境に興味と関心をもつことが大事

国語、数学などの他教科に書かれていることと同様ですが、「Environmental studies」を学校で教える際に重視されていることは、子どもが自分の周囲の環境(それが生物的なものであれ、地理的なものであれ)に興味と関心をもつことです。

そのためには、「大切だから、学びましょう」というアプローチではなく、「まずは自分がいい状態になることが大切です。周りにはどんなものがあるかな?自分がいい状態であるためには、周りのものはどんな風であったらいいかな?」と子ども中心のアプローチから入ること。そして子どもの興味・関心を起点として周囲の環境や人間の身体や心について、遊びやリサーチ・問題解決を通して学ぶことが、この教科の理想とされています。

次回は、フィンランドの小学校1、2年生の「Environmental Studies」おける、カテゴリー化された“学びのねらい”“学ぶ内容”と「Transversal Competences(全教科に共通する“身につけるべき能力・スキルのようなもの”)」がどう関連しているのかについて明確に書きたいと思います。

【コラム】ヘルシンキの秋

ヘルシンキは、ちょうど紅葉の時期。白樺やメイプルなどの木々が色づき、湾や湖の近くでのウォーキングをしていた4年前が、懐かしく思い出されます。

今回の主題である「Environmental studies」の授業でも、「紅葉」はよく扱われており、アートや工作・地域間の紅葉時期の比較・木の種類による色の違いなど、さまざまな角度からの学びとなっています。

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