イヤイヤ期を迎えると、子どもはいろいろなことをやりたがるもの。でもそれが危険なこともありますよね。そんなとき、実はサインデザインが役立つって知っていました? “兼業主夫”である筆者が、仕事のノウハウを子育てでも活用する方法をお教えします。

イヤイヤ期突入とベビーゲート問題

先日、我が娘がめでたく2歳の誕生日を迎えました。親になってから2年、本格的に兼業主夫生活をはじめてから1年。長かったような短かったようなどちらとも覚束ない感覚ですが、とはいえ、まだまだ先が長いことだけは確定していて、さらに気を引き締めないといけないなと感じている今日このごろです。

ところで実は、うちではベビーゲートやベビーサークルといった類の商品をいまだに使ったことがありません。マンション住まいなので室内に階段がないことや、娘自体もなんだかんだ大人しい子だったので「まあ必要になったら購入するか」くらいのまま、ズルズルと2歳までその機会が訪れなかったのです。

ところが1歳半を過ぎて少ししたあたりから、いろいろなことに興味をもって活発に動くようになったり自己主張が強くなってきたり(いわゆるイヤイヤ期ってやつですね)何かと困りごとが増えてきました。

とくに困るのが、料理中にキッチンに入ってきてしまうこと。さすがに危ないので、そのたびに「危ないから入らないでね」と声かけをしたり、いったん料理を中断してキッチンの外に移動させたり。なかなか料理が捗らないし、危ないことこの上ない状態になってきてしまいました。

画像: 料理中に突入してくるのは大変危険ですので、おやめください

料理中に突入してくるのは大変危険ですので、おやめください

境界線に思いを馳せる

とはいえ、今さらベビーゲートを買うのもなあ(そもそもベビーゲートのお値段、けっこうしますしね…...)。どうせなら、物理的に彼女の興味関心を制限するのではなく、自発的に行動を抑えてくれる方法はないものか、と思いを巡らせていました。

そこでふと思ったのが、彼女はけして私の作業部屋には入ってこない、ということ。

在宅で仕事をしているため作業部屋として使っている一室があるのですが、そこには工具などの危険なものも多く置いてあります。なので、何度となく娘には「ここは危ないから入っちゃダメだよ」と伝えており、娘もそれに従って部屋の中には入ってこようとはしません。

キッチンのときとほとんど同じような伝え方をしているのに、なぜ作業部屋には入らずキッチンには入ってしまうのだろうと疑問だったのですが、よく見てみると、作業部屋の扉の下部分には銀色の枠(建築用語で沓摺り(くつずり)というらしい)があったのです。

画像: これが例の“沓摺り(くつずり)”の部分

これが例の“沓摺り(くつずり)”の部分

「もしかして彼女はこの部分を“境界線”として認識しているのでは?」と、この発見から、ひとつの仮説が思い浮かびました。

また最近コロナの影響で、お店のレジ前に間隔を空けて並ぶための「線」や「足跡マーク」が描かれるようになりましたよね。娘と一緒に買い物に行った際、「この線(マーク)のところで待とうね」というとキチンとその上で立ち止まってくれるんです。

この発見も“境界線説”を後押ししてくれるようにみえます。

画像: 2歳の誕生日に行ったディズニーランドでもちゃんと線に合わせて並んでいました

2歳の誕生日に行ったディズニーランドでもちゃんと線に合わせて並んでいました

なるほど、では日常にもそういう目印となる「線」や「マーク」を追加してみよう!と実験をしてみることにしました。以前の記事でも書いた「プロトタイピング」の考え方で手元にある道具で簡単に実施してみます。

実験!線やマークを描いてみよう!

まずはキッチン。キッチンとリビングの境目にマスキングテープで線を引き、大袈裟に「立入禁止」と書いてみました。

画像: キッチン前の立入禁止マーク

キッチン前の立入禁止マーク

線を一緒に見ながら「ここから先は危ないから入っちゃダメだよ」と教えてみると、これが効果テキメン!それまで無秩序に入ってきていたキッチンにほとんど立ち入らなくなりました。こちらに何か訴えたいことがあっても線より手前で止まって「とうちゃーん」と呼んでくれるようになり、キッチンに不用意に入ってくることはなくなりました。

たまに楽しいことをしているときなど(小躍りとか笑)注意が散漫になっていて入ってきてしまうこともありますが、そのときにも「あ、線を超えてるよ」と言うとハッと気づいた顔をして線まで戻ってくれます。

ということで、キッチン編は実験大成功となりました。ただ、ひとつ成功するともうひとつ試してみたくなるのが人間の性。今度はお風呂の脱衣所にマークを追加してみることにしました。

娘は最近、絶賛イヤイヤ期に突入していまして、とくにお風呂に入る前の服を脱ぐときやお風呂から上がった後の体を拭くときに、イヤイヤしたりフニャフニャしたりしてしまうことが多くなりました。

そこで脱衣所の手をつきやすい高さ(たまたま洗濯機の扉がちょうどよかったのでそこ)に「手」の形のマークを貼ってみることにしました。着替えや体を拭く際に、そこに手を置いてもらってフニャフニャを防止する作戦です。

これも、マスキングテープを何枚か重ねて手の形に切っただけで、簡単につくって試してみることに。

画像: 「手」のマーク。ちゃんと本人の手の形をとってつくってみました。

「手」のマーク。ちゃんと本人の手の形をとってつくってみました。

「てって(手)マークに、てってポンして」と言うと、これもすんなりやってくれました。

こちらはやってくれるときとやってくれないときのムラがあって、服脱ぐのイヤイヤモードに完全に入ってしまったときなどはやってくれないことも多いのですが、それでも脱衣所での攻防はかなり減って、だいぶラクにはなりました。

日常生活にも「サインデザイン」を

私はエンジニアなのでそこまで詳しくはないのですが、世の中には「サインデザイン」という分野があるそうです。商業施設や公共空間などでよく見る、トイレやエレベータを案内するあのマークを「サイン」と言い、それらを適切にデザインしてお客さんに過不足なく必要な情報を提供することを「サインデザイン」と言うようです。

グローバライゼーションやバリアフリーの観点から、サインは誰もが直感的に理解できるように工夫してデザインされているそうで、きっとそれはまだ認知機能が発達途上にある子どもにも有効に機能するのだと思います。(前述したレジ前の足跡マークなんて、まさに「ここで止まるんだよ」ということが直感的に理解できますよね。)

今回試してみたことはいわば広い意味で「サインデザイン」だったわけですね。(簡単につくっただけなので、デザインとしてはまったく洗練されてはいませんが……。)

ただ線やマークを置いてみただけですが、人間の脳は勝手にそこに「境界」や「目印」としての役目を見いだしてしまう、というのはおもしろい発見でした。デザインの世界ではこうした「物と人との間に働く認知の関係性」のことを「アフォーダンス」というそうで、それこそ、ありとあらゆる製品デザインにそのノウハウが活用されているようです。

これまで子どもの活動を物理的に無理に制限してしまうような仕組みには、どこか「押しつけがましさ」を感じてしまい、我が家ではあまり積極的に導入できていませんでした。ただ、家庭の中でもこういった「押しつけがまし過ぎない仕組み」を取り入れていくことで、子どもも親も、自然に過ごしながら日常生活を送っていけると理想的だなと感じています。

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