最近、コロナの影響もあり、学校での清掃を生徒ではなく先生がやることに、賛否両論が上がっています。ところでこの校内清掃は、海外ではどのように行われているのでしょうか。実際に海外で教鞭を執っている先生に聞いてみました。

学校教育における清掃は違法労働?

ホストの目から政治を発信する活動をしている私の友人が、興味深い内容をSNSに投稿していました。

日本の学校教育における、放課後の掃除は

  1. 児童労働
  2. 強制労働
  3. 無償労働

という3つに当てはまり、国際基準でいうと「違法労働」と考えられることもある、というのような内容でした。

世界20カ国以上の学校を訪れてきた私にとっても、これは非常に興味深いテーマです。今回は「生徒による清掃」をテーマに、世界各国の事例とあわせて、日本における「生徒による清掃」の在り方を考えていきます。

海外の学校では誰が清掃している?

画像: 海外の学校では誰が清掃している?

日本の清掃について論じる前に、まず事実を並べておくと、義務教育の中で生徒や教員に「清掃」を義務づけている国は少ないです。とくに先進国ほど清掃は業者に任せるケースが多いです。

たとえばフィンランドを例に挙げると、一般的に清掃は清掃業者が担当します。「図工の授業でゴミが出たら、自分たちで掃除する」といったことはよく見かけますが、「毎日のように教室を掃除する」ということは一般的ではありません。同様のことは、イギリス、アメリカのような先進国でも見受けられます。

一方で、生徒が日常的に「清掃」を担当する国もあります。たとえば、フィリピンの学校を訪れると、清掃している子どもはよく見かけました。2018~2019年にかけては、エジプトでも「清掃」を教育の一環に取り入れる学校がつくられていて、日本式の教育システムを土台としているようでした。

まとめると、「清掃は業者がやるべきだ」と考えている地域もあれば「清掃は教育の一環に取り入れるべきだ」と考えている地域もあるということになります。日本以外のすべての国で、生徒による清掃が反対されているわけではありません。

では、海外の教育関係者と「日本の学校における清掃」について話したとき、どのような意見が出てくるのでしょうか。

多くの人たちにヒアリングしましたが、当然同じ国の関係者でも意見が分かれることもありました。さまざまな意見の中から、賛成、反対それぞれの代表的な意見をピックアップしました。

日本の清掃について、好印象だったフィンランド人の先生

画像: 日本の清掃について、好印象だったフィンランド人の先生

フィンランドで、実際に日本の小学校を訪れたという小学校の先生がいました。彼女は、日本の清掃については驚きを感じつつも、子どもたちが自分たちで清掃することには賛成しているそうです。

というのも実際に彼女の学級でも、「公のスペースをきれいに使う」ということに課題を感じているらしく、清掃を通じて公共の場所をきれいに使ったり、積極的に掃除したりするような姿勢を身につけてほしいと話していました。

これはまさに、日本国内で清掃が教育の一環として組み込まれている目的の一つでしょう。実際に世界中の大きな街を訪れると、日本の街は世界トップレベルでゴミが少なく、清潔だと感じます。ロシアW杯でも、試合後に後片付けをする日本人サポーターが世界から称賛されたニュースは有名ですよね。

すべての原因が「学校教育の中で清掃が重視されているから」とは言い切れませんが、「学校教育の中の清掃」は一定の効果を発揮しているのではないでしょうか。

日本の清掃について、ある提案をくれたイギリス人の先生

画像: 日本の清掃について、ある提案をくれたイギリス人の先生

一方で、あるイギリス人の先生は、このような意見をくれました。

「たしかに、生徒が清掃することには一定の効果はあり得るでしょう。しかし清掃の習慣を身につけるにしてはあまりに多くの時間を割きすぎていませんか。たとえば、学校で100の時間をかけて、校内清掃をする生徒がいたとしても、家で自分や家族の服を洗濯するのにどれだけの時間を使うのでしょうか。

多くの生徒は、家庭のことは親に任せっきりです。自立のために教育するのであれば、学校での清掃時間を少し減らしてでも、家庭でも清掃する習慣をつけるべきではないでしょうか。高校生であれば、アルバイトすることで自立に向かっていくこともあり、イギリスではそれが一般的です」

高校を卒業するまでに洗濯をした経験なんて両手で数えるほどしかなかった自分にとっては、耳が痛い指摘でした。たしかに100の時間があれば、「校内清掃に40,家庭の清掃に30,アルバイトに30」といったような時間の使い方をしたほうが、自立を促す教育としては重要とも感じます。

欧米では、家庭でも学校でも「自立」というキーワードを重視すると聞いてはいましたが、とてもわかりやすい具体例だと感じました。

そして彼女の意見で重要なのが、「学校の清掃時間を減らしてでも」というところ。授業を受けて、掃除して、部活をしてから、塾に行って、帰宅は20時で、学校の宿題もある…というような中学生に、洗濯も行わせるにはスケジュールがハードすぎます。

「何かを増やすためには、何かを減らす」ということを怠ると、スケジュールは無限に増えていきます。この課題を乗り越えるには、多少予算を割いて清掃スタッフを雇ってでも、生徒の清掃の負担は軽くするべきでしょう。

それができないのであれば、生徒に清掃させるのは「教育のため」ではなく、少なからず「コストカットのため」となり、つまりは児童労働であるという批判がされてもおかしくありません。「たかが10~20分程度の清掃で大げさな」とも思うかもしれませんが、清掃に給食の配膳、日直の仕事など、すべての仕事量を5年、10年続けるとなれば膨大な仕事量になります。

世界各国の教育者と話して、私が感じたこと

画像: 世界各国の教育者と話して、私が感じたこと

「校内清掃は教育課程の中で重要だから、これからも続けていくべきだ」

「自立心を育てるのであれば、校内清掃だけでなく、家庭での清掃も重視するべきだ」

これらはそれぞれ根拠があり、完全に対立するような意見ではありません。しかしながら「両方よさそうだから、両方取り入れよう」としてしまうと、先生の仕事も子どもたちのタスクも無限に増えていってしまいます。

たとえばですが、毎年ある決まったひと月だけ、清掃業者が校内清掃を行い、生徒は毎日20分ほど家庭で家事することはできるかもしれません。乗り越えないといけない課題は山のようにあり、まだまだ現実的なアイデアではありませんが、それでも諸外国が学校清掃にかけている予算から比べると、遥かに少ない金額で実行できるでしょう。

場合によっては、予算をかけずにクラス規模で取り組めるようなよいアイデアがほかにあるかもしれません。いずれにしても、海外から見た「日本の学校の生徒による清掃」という視点をもとに、少しでもよい変化につながるよう進めていきましょう。

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