子どものころからの習い事のひとつに、楽器を上げる人もいるでしょう。一般に楽器の習い事とというと、ピアノやバイオリンなどが多いと思いますが、今回紹介する小学6年生のショウタくんが興味をもったのはインド伝統楽器の「シタール」。なぜ「シタール」に興味をもったのでしょうか? 本人に聞いてみました。

インド伝統音楽で用いられる楽器「シタール」とその発展型「シタレレ」

画像: インド伝統音楽で用いられる楽器「シタール」とその発展型「シタレレ」

シタレレという楽器をご存じでしょうか。インド伝統音楽で用いられる楽器「シタール」の奏者ヨシダダイキチ(※)さんが開発した楽器です。

紀元前10世紀には文献に記録が残されているというインド伝統音楽は、ダイキチさんいわく「厳格なしきたりもあり、うかつに踏み込めるジャンルではない」が、その音楽性の楽しさに誰にでも気軽に触れてもらえるようにと、シタールよりも小型でより自由な表現ができるエレクトリック楽器を考案しました。

鎌倉に住む小学6年生のショウタくんは、受験勉強の傍ら、ダイキチさんから定期的にシタレレのレッスンを受けています。親御さんが勧めたわけでも、ダイキチさんが生徒を募集していたわけでもなく、そこにはショウタくんの強い意志があったようです。

初めて聴いたシタールの音色に痺れた、その感性のルーツ

ショウタくんが初めてシタールの音色を聴いたのは、一年前にあるきっかけで訪れたダイキチさんのコンサート。それまではインド音楽もシタールの音色も聴いたことがなかったショウタくんでしたが、ショウタくんいわく「シタールの音がすごくかっこよかった。これだ!と思った」と、そのときの衝撃を語ります。シタールはショウタくんの体にはまだ大きく手が届かないので、シタレレを弾きたい、と思うのにそう時間はかからなかったそう。

「ショウタにどうしてシタレレを弾きたいのかと聞いたら、『ギターとかヴァイオリンとは違って、日本人の心に伝わるものがあるのかなあ。お米とか、仏教とか』と言ったんです。驚きました。おじいさんみたいなこと言うから(笑)」と話すのは、ショウタくんのお母さんの未来さん。

「ショウタなりに、インド音楽に備わっている民族性を解釈していたんだと思います。幼い頃から鎌倉のお祭りで演奏される雅楽に耳慣れていたことも背景にあるのかもしれません」

ショウタくんの感受性の新しい一面に驚いたようでした。

画像: 「そんなこと言ったっけ?」とはにかむショウタくん

「そんなこと言ったっけ?」とはにかむショウタくん

ダイキチさんのコンサートにフロントアクトとして3度目の出演。しかしそれまでには葛藤も

「シタレレは楽しいし、ダイキチ先生は優しい。いつかはシタールも弾いてみたいと思っています」

周囲の大人の予想以上にシタレレを楽しんでいるショウタくん。今はダイキチさんのコンサートのフロントアクト(前座)のメンバーとして出演することもあるほどですが、それまでには自分の中に葛藤もあったようです。

「(ショウタは)自分では気づいていないようだけど、それまで楽しそうに毎日弾いていたシタレレに距離を置いていた時期がありました。“音が合わない”という感覚があったみたいで。スランプですね。ダイキチ先生をはじめとする皆さんに優しくし見守っていただいて乗り越えられましたが、表現活動をする上でこれから何度も来るであろう葛藤の中に初めて踏み込んだのだと思います」

未来さんは「ショウタはよい大人に恵まれている」と、しきりに周囲への感謝の言葉を口にしていました。

シタレレは、アジア人としての源流に誰でもコネクトできる楽器

「シタールの練習は、師匠から弟子へ口伝(くでん)で行われます。譜面に起こすことももちろんできますが、体験したほうが早いんですね。もともとアジア人、とくに日本人は曖昧で抽象的な表現を好みます。シタレレは誰でもアジア人に備わっている精神や文化を感覚的に演奏に落とし込んで楽しむことができる、というのがコンセプト。ただ、僕自身ギターも弾くということもあって、シタレレはギター的表現もできるようにしています」

インド伝統音楽の、難しさも愉しさも知っているダイキチさんだからこそ、作ることができたシタレレ。「ショウタくんを中心に、シタレレから音楽に触れる子どもたちが増えてくれたら」とダイキチさんは期待しています。

画像1: シタレレは、アジア人としての源流に誰でもコネクトできる楽器

取材を行ったこの日は、ダイキチさんのシタールソロコンサートの当日でした。

フロントアクトではダイキチさんと、ショウタくん、同じくシタレレのレッスンを受けているマイさんも加わり、3人で演奏。緊張した様子も見せず、淡々と演奏するショウタくん。演奏曲は、ダイキチさんが作曲し、ショウタくんがタイトルを付けたものでした。

画像2: シタレレは、アジア人としての源流に誰でもコネクトできる楽器

情報に流されず好きなモノやコトを選ぶことができる「自分指針の審美眼」を養う

「これまで、ショウタがやりたいと言った習い事はできるだけやらせて、応援する姿勢を取ってきました。その中で残ったもののひとつがシタレレです。マイペースでちょっと自由人な性格をありのまま受け入れてくれるダイキチ先生のレッスンの方針や、シタレレのコンセプトがショウタには合っていたんだと思います」

また、未来さんはショウタくんにアートに触れる機会も積極的につくってきたそう。

「子どもの審美眼を育てる必要性は強く感じています。子どもの感受性や表現力はときに感動的なほど美しい。子どもがもっとアートに触れる機会が増えてほしいと思います」と未来さんは話してくれました。

※ヨシダダイキチ プロフィール

シタール奏者/作編曲家。シタールの名門イムダード派7代目ウスタード・シュジャート・カーンに師事。インド各地やアジア各国、欧米での公演。ボアダムス・YOSHIMIOとのユニットSAICOBABでの活動やUAへの楽曲提供、2019年秋から放送されたNHK連続テレビ小説「スカーレット」劇中曲参加やさまざまなメディアへの出演、多彩なアーティストとの共演などインド古典音楽に留まらず多方面で活動。

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