スウェーデンの船舶会社Wallenius Marine(ワレニウス・マリン)は、再生可能な「風」のエネルギーで動く世界最大級の船「Oceanbird(オーシャンバード)」を開発しています。スウェーデンといえば毎年6月に公表される「SDGsランキング」の2020年版で1位となった国。そんなサステナビリティ先進国であるスウェーデンの企業の取り組みを紹介します。

スウェーデンの会社が風の力で動くエコな船を開発!

スウェーデンのWallenius Marine社が開発している「Oceanbird」という名前の船は、風力で電力をまかなうことで、地球温暖化などの気候変動に影響を与える温室効果ガスの排出量を90%削減できるようになります。風をおもな動力源とするこの船は12日間で大西洋の横断が可能です。

船の大きさは長さ200メートル、幅40メートルで、7,000台の自動車を収容して運行できます。風を受ける帆は高さ80メートルもありますが、伸縮自在の構造になっているので、船が橋の下を通過する際や強風で速度を落とす必要がある場合は帆の面積を減らせるようになっていて、海面105メートルから45メートルに下げることが可能です。

この特殊な帆は鋼と複合材料でできていて、360度回転しあらゆる方向から最適な風をキャッチします。そのため従来の化石燃料を用いるエンジンでの運航よりも排出量を90%削減できるというしくみです。なお安全対策や寄港時のため船には補助エンジンも装備されていますが、通常は風力を使用します。

またこの船はユニークなデザインをしています。従来の帆船がもつマスト(帆柱)の2倍もの高さがあるため印象的な見た目ですが、環境に配慮した船が増えた未来の世界では、このような船が当たり前になっているかもしれませんね。

本設計の船は2021年中にオーダー開始、2024年の発売を目指しています。最初は貨物船の開発となりますが、今後はクルーズ船などあらゆるタイプの船に展開される予定です。

「Oceanbird」の開発はWallenius Marine社、スウェーデン王立工科大学(KTH Royal Institute of Technology)、SSPA(スウェーデンの海事研究機関)の緊密な協力による共同プロジェクトです。

商用船から温室効果ガスはどれくらい排出されているの?

世界のエネルギー起源Co2排出量のうち、国際海運セクターが占める割合は2.1%。少ないように見えますが、およそドイツ1国分の排出量に相当します。新興国等の経済成長に伴って貿易量がいっそう増大すれば、国際海運分野の排出量はさらに増えると見込みまれます。このような背景から海運分野での積極的な取り組みが求められているのです。

国連機関のIMO(国際海事機関)は、2018年4月に温室効果ガス削減戦略を採択し、今世紀中のなるべく早期に国際海運からのゼロ排出を目指すことを公表しています。その前段階の目標として、2030年までに平均燃費40%改善、2050年までに総排出量50%削減を掲げています。(※排出量基準年:2008年)

船舶事故で船の燃料が海へ流出。海の環境への影響も

画像: 船舶事故で船の燃料が海へ流出。海の環境への影響も

現代の暮らしに欠かせない貿易のネットワークは大型商用船によって支えられていますが、巨大な船の運航には1日数十トンもの燃料を大量消費するため、化石燃料の中でもコストが安いC重油が用いられてきました。しかしC重油の燃焼時には硫黄酸化物(SOx)などで環境汚染の原因(酸性雨や光化学スモッグなど)となるため、段階的に規制が強化されています。

また船舶の重油流出事故も地球環境にとって重大な問題です。最近では2020年7月にモーリシャス沖で日本企業が所有.運行する貨物船が座礁し、燃料の重油が流出する事故がありました。この事故で周辺海域のサンゴ礁やマングローブ林など貴重な海の生態系が汚染される映像や写真を目にした人も多いと思います。貨物船の運行によって便利で豊かな暮らしを享受できている一方で、自然環境へ多大な影響を与えるリスクを抱えていることも忘れてはなりません。

SDGs先進国「スウェーデン」ってどんな国?

このような潮流の中、スウェーデンの企業によって開発が進められているエコな船「Oceanbird」。そのスウェーデンといえば、世界各国のSDGs達成度を数値化してランキングを発表している「持続可能な開発に関する報告書/Sustainable Development Report」の2020年版で166か国中1位となった国です。スウェーデンがどんな国なのか、SDGsランキング2020年版でどんな評価を受けたのかを見てみましょう。

【スウェーデンの基本情報】

  • 面積:約45万平方キロメートル(日本の約1.2倍)
  • 人口:約1,022万人(2018年11月スウェーデン統計庁)
  • 首都:ストックホルム(市人口約96万人/2018年11月スウェーデン統計庁)
  • 言語:スウェーデン語
  • 通貨:スウェーデン・クローナ(SEK)
  • 主要産業:機械工業(含:自動車),化学工業,林業,IT
  • GDP:5,511億ドル(2018年IMF)<一人当たりGDP:53,873ドル>

「SDGsランキング2020」第1位!スウェーデンの評価ポイントは?

「SDGsランキング2020」でスウェーデンは「84.7」ポイントをつけ第1位となりました。(2位デンマークとは1.6ポイント差、日本は17位)

高い評価(SDG achieved)となったSDGsのGOALは「1.貧困をなくそう」「3.すべての人に健康と福祉を」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」でした。

日本で課題となっている「5.ジェンダー平等を実現しよう」について、スウェーデンでは国会の女性保有議席割合が目標値50に対し46.99で達成に近く(日本は9.91)、さらに男性の賃金中央値に対する男女賃金格差指標は目標値0に対し7.1(日本は24.5)になるなど、ジェンダー平等に関する実社会での成果が評価されています。

一方、スウェーデンが低い評価(Major challenges remain)を受けたGOALは「12.つくる責任、つかう責任」「13.気候変動に具体的な取り組みを」でした。

「12.つくる責任、つかう責任」では一人あたりの電子.電気機器廃棄物量(kg)の削減が進んでいないこと、「13.気候変動に具体的な取り組みを」ではエネルギー(石油、天然ガス、石炭など)の消費から生じるCO₂の排出量などに課題が残っていることがわかります。

この記事で紹介した風の力で動く船「Oceanbird」の開発プロジェクトは、スウェーデンの課題となっている「気候変動に具体的な取り組みを」の目標を達成に近づける大きな一歩となることが期待されますね。

未来の船に期待!

現代化社会では天候や風向きに左右されない計画的な運行やより速く効率的な移動が求められきたため、エンジンを搭載して重油を動力とした船が設計されてきました。しかし、ずっと昔の時代から人々は船に帆を張り、風を利用して動かしてきました。スウェーデンの進んだ設計技術によって、今再び、風の力が船に活かされようとしています。

持続可能な方法で世界中に貨物を運ぶ未来に向け前進するスウェーデン企業の環境に優しい船「Oceanbird」。環境への影響を最小限に抑えるこの船が海運業界の環境対策に大きな変化をもたらすかもしれません。

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