「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉と理念が浸透してきているなか、どのように活動していけばいいのでしょうか。そのヒントを探るために、ファッションモデルから気候活動家に転身した小野りりあんさんにインタビューしました。

私たちがすべきことは何か

「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉と理念が、社会に浸透してきています。目標達成に向けた「活動」に取り組むコミュニティも、若い世代を中心に拡大中で、「私たちがすべきことは何か」を、個人が真剣に考えるタイミングを迎えています。

今回、お話をうかがった小野りりあん(以下、りりあん)さんは、モデルとして活躍しながら地球の危機を訴え続けている環境活動家。インスタグラムやYouTubeでは、気候変動を中心にさまざまな情報を発信、活動の悲喜こもごもや、環境に配慮したライフスタイルも伝えています。

スタートラインは今の私たちと同じ、「何から始めたらいいんだろう」だったりりあんさん。インタビューで語られた明快なアドバイスは、勇気をもらうと同時に、私たちの心を軽くしてくれます。

画像: 誰でも声をあげられる社会に モデル兼気候活動家の小野りりあんさんが目指すもの【SDGs】

小野りりあん

モデル・気候アクティビスト活動家
社会問題に向き合っていた母や仲間の影響で、7、8歳のころから環境問題に関心をもつ。
14歳のときにスカウトされて、ファッションモデルに。22歳で「世界をもっと知りたい!」と世界中を旅した後、25歳で30ヵ国以上の生徒が集まるデンマークの学校へ留学。帰国後に活動家の道を歩み出す。
その後、飛行機に乗らない「世界一周エコ旅」を敢行。現在はモデルを続けながら、ともに活動する仲間とアクティビストハウスで暮らす。国内外のコミュニティと横のつながりを広げるべく奔走中。

__@_lillianono___ 小野りりあんインスタグラム
__@activistshouse__  アクティビストハウス(活動家の家)
__@green.tea.official__  オンラインコミュニティ GreenTEA

誰でも「環境は大事だ!」と声を上げていい

画像: 誰でも「環境は大事だ!」と声を上げていい

検索などで「SDGs 私たちにできること」と調べると、「エコバッグを必ず持っていく」「マイボトルを持ち歩く」など取りかかりやすいものから、「世界中に安全な水とトイレを届ける」「世界から飢餓をなくす」など、個人ではなかなか難しいものまで、さまざまなものが紹介されています。

りりあんさんは、飛行機を使わずに「エコな世界旅行」をしたり、肉食を避けた食生活を送ったり※1と、環境問題を意識したライフスタイルを貫いています。環境問題に声を上げるなら、やはり「地球にやさしい生活」を徹底すべきなのでしょうか。

※1 飛行機と肉食を断絶……航空機や畜産業は大量の二酸化炭素を排出するため、減らすべきだと考えている活動家は多い

りりあん 
決してお肉を食べないとか、飛行機に乗らないとか、そういう行動をしていないと活動家を名乗れないというのは、なんとなく腑に落ちません。私もグレタ※2さんも、食肉や飛行機を放棄していますが、それほど重要ではないんです。

本音を言うと、プラスチック容器に入った牛丼をがっついているような人でも、環境対策を求めていいと思っています。特に気候変動は命にかかわる問題で地球を壊してしまう社会システム自体を変えていかないと一人の生活を正すだけではどうにもならないのです。それを理解した上で、誰でも「環境は大事だ!」と言えるような、そんなムーブメントになってほしいです。

今後は、さらに活動に対するハードルが下がって、「そこからのスタートでいいよね」って認め合えるようになったらいい。そしてアプローチが違う者同士も仲間として一緒に活動をしていく、そんな方法がないか試行錯誤しているところです。

※2 グレタ・トゥンベリ……18歳の環境活動家。FridaysForFutureを立ち上げた。

仲間を探すことが、活動の第一歩

幼いころから環境問題に関心があったというりりあんさんですが、「ひとりでは何もできない」と考え、その思いは長い間「封印」してきたそうです。いよいよ行動に移したのは、25歳のとき。デンマークへの留学がきっかけでした。

りりあん 
デンマークの学校に行ったときに、国際的な問題を話し合える世代に出会えたのは大きかったです。それがとても心地よくて、日本に帰ったらすぐに話ができる同世代を見つけようと思いました。帰国後は、NGOのメーリングリストに入って勉強したり、署名をしたり、できることをいろいろしました。

仲間を探しに行ったのは、2015年11月。東京で行われた「気候マーチ」に、初めてひとりで行ったんです。いま振り返ってみても、「勇気をもってよく行動したな、一歩踏み出したな」と思います。そのとき、気候変動対策に必要なダイベストメント※3をしたり、NGOのプロジェクトを応援したりと、とても楽しかったんです。これは、とても大きな経験でした。それまでは単独で行動することが多かったのですが、話せる仲間に出会えたことで、徐々に活動について口に出すことが増えていきました。

※3 ダイベストメント……投資撤退。石油・石炭・ガスなどの化石燃料に関する事業に融資をしている銀行から、資金を引き上げる活動

気持ちが伝われば、跳ね返されない

画像: 気持ちが伝われば、跳ね返されない

大きな一歩を踏み出して以来、「本当にステキな人たち」との出会いが重なったというりりあんさん。その後は、国内外の活動家と対談してインスタグラムで発信したり、オンラインの座談会に参加したり、街頭でスピーチしたりと、活動の幅をどんどん広げています。一方で、活動を本格化させたとき、一部、ネガティブな反応もあったそう。それをどう乗り越えたのでしょうか?

りりあん 
私が環境問題に関わるようになってから、会う回数が減った友達はいました。でも、離れていった人はいません。最初は話すのに勇気が必要だったけれど、みんな受け入れてくれたんです。私の活動を見てくれているし、『実は気候変動に興味があった』と言ってくれる子もいました。

友達や身近な人には、『どうしてこの行動をするようになったか』を話すといいと思うんです。『私、この事実を知った時に、すごくびっくりしちゃって。だから行動を変えてみようと思ったんだ』という感じで。行動の背景に大きな気持ちがあると相手に伝わると、跳ね返されないと思います。

相手に押しつけないことも大切です。「自分の考えを伝える時、相手の考えを変えることよりも、相手の考えと選択しを尊重するのが大事」というスタンスでいれば、関係は壊れないと思います。

無理と思って休みたくなったことも。で、休んだ

活動していくうちに、失敗や落ち込むことがたくさんあったというりりあんさん。一進一退の日々に疲れてしまうこともあるといいます。

りりあん
現在、Green TEA※4というミーティング活動をしていますが、私自身「もう間に合わない」と落ち込むときがあって。もう無理だと思って、ちょっと休みたくなったときがありました。それで実際に休んだのですが、結果的によかったです。そのときに、たくさんの人に支えられました。「誰かが頑張ってくれているから、今はりりあんは無理しなくていい」って言ってくれる人もいて。本当にそうだなと思ったんです。マイペースでやりたいことを、やりたい分だけ実行していこう、というのをスタンスにしたんです。

※4「GreenTEA(Team Environmental Activists)」……りりあんさんが立ち上げたオンライン上の「ミーティングルーム」。若い人はもちろん、多くの母親たちも参加している。仲間を探す場所としても活用できる。
__@green.tea.official__

子どもには、ものを買うこと以外の幸せの見つけ方を教えたい

2020年度からの新学習指導要領に「持続可能な社会の創り手の育成」が明記され※5、親子でSDGsの目標に向けて行動する機会が増えそうです。

※5 SDGsの担い手育成(文部科学省)

りりあん 
私が接している子どもたちは、周囲に大きな影響を与えています。ある1人の女の子が「スピーチを磨きたい」と気候活動家の先輩に教えてもらっているのですが、そういう姿を見ると、希望を感じます。これからも、サポートしていきたいですね。

この活動には、もちろん親御さんが見守ってはいますが、語っていることはまぎれもなく「子ども自身の声」です。「親が助言しているのだろう」と思われないように、親御さんはあまり口を出さないようにしているそうです。本当は言いたいこともあるけれど、前に出ないようにしているみたいです。

いま私たちが生きている資本主義社会は、人々に「ほしい」と思わせ、お金を出させる社会です。
子どもたちには、モノを買う以外の幸せの見つけ方を教えてあげたいですね。ゼロウェイスト運動※6を始めた家族は、お金をモノではなく、経験に使っているそうです。「一緒に楽しんで、思い出を作ることが幸せなんだ」と実感できる経験を重ねることが大切、と話していました。

※6 ゼロウェイスト運動……無駄、ゴミ、浪費をなくそうという運動。

いま動かなければ、間に合わない

画像: いま動かなければ、間に合わない

子どもの将来性について質問をしたとき、「将来まで待てないんです。今(が大切)なんです」と、言葉をかみしめるように語っていたりりあんさん。「人口の3.5パーセントが参加する社会運動は成功する」というデータ※7 をもとに、目標を達成するための横のつながりを広げる方法を模索しているといいます。

※7 ハーバード大学の政治学者エリカ・チェノウェスが実証
https://www.bbc.com/future/article/20190513-it-only-takes-35-of-people-to-change-the-world

りりあん 
気候変動について話す人が増えることが大切だと思っています。子どもでも研究者でもミュージシャンでも、いろいろなコミュニティで話される必要があるのです。

いま私は、気候変動に関する基礎知識を、YouTube上でまとめることを考えています。そこにグラフや資料を無料でダウンロードできるようにするんです。正確な知識や情報を、誰でも話せるようになるツールになればいいと思っています。

それに、世の中にはよりよい社会を目指して戦っていたり、動いていたりする組織がたくさんあります。ジェンダー、労働、障害者など、テーマはさまざまですが、それぞれの組織が、お互いのことを認識して、仲間という意識が生まれるだけで、お互いに助け合えるはずです。

どうしたら連携が取れるのか、自己紹介をすればいいのか、具体的な方法はまだ不確かです。ですが、いろいろな人たちに話を聞くことで、少しずつ形づいて来ています。社会のために動いている全員が、連携できるものを作りたいです。

アジアの中でも、日本は特に声を上げづらい文化だと思います。なので私がつくるものは、海外とも連携していけるものを考えています。日本の変化を応援したいと思っている人が、海外にはたくさんいるなという実感もあるんです。

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