実用英語技能検定(以下、英検)では、3級以上の試験において筆記試験の後に二次試験の面接が行われます。対面形式で行われる試験のため、英語力以外にも対策しなければいけないことがいくつかあります。筆記試験に合格するほどの英語力があれば合格することは難しくありません。しかし、対策を知っておかなければ、英語力があっても合格することができません。本記事では、合格に必要な対策や面接中に意識するべきことを解説します。本記事を読んで対策をしっかり行いましょう。
英検の二次試験
英検では筆記試験の後の二次試験に面接試験が行われます。英検は5級・4級・3級・準2級・2級・準1級・1級と分かれており、3級の試験から二次試験が課されます。5級と4級は筆記試験のみの実施です。筆記試験の内容と同様に二次試験の内容もレベルが上がるにつれて難しくなります。面接形式のため英語力以外にコミュニケーション能力も求められます。筆記試験と実際に英語を話すことはまったく異なるため、筆記試験とは別の対策が必要です。
二次試験の持ち物
二次試験の際に必要な持ち物は以下の通りです。
- 二次試験受験票
- 本人確認証
- 身分証明書(パスポート・健康保険証・生徒手帳など)
- 筆記用具
- 上履き
これらは必ず持参するようにしましょう。特に二次試験の受験票と身分証明書は忘れないように気をつけてください。二次試験の受験票は一次試験の成績表に付属しています。二次試験は自分の順番が回ってくるまでに待ち時間があります。そのため、見直しノートを持っていくとよいでしょう。見直す時間は十分にあります。また、飲み物や常備薬など自分が必要と思うものを忘れないようしてください。
服装に指定はありません。しかし、カジュアル過ぎる服は避けてください。印象も試験の点数に関係しています。できるだけシンプルな服装を心がけましょう。学生服は面接官への印象がよくなるため、試験当日に着用することもおすすめします。
面接の内容
面接の時間は受験する級によって多少時間は異なりますが、5~10分ほどで終了します。面接内での会話はすべて英語で行われます。そのため、挨拶や受験する級の確認にも英語で答えるようにしましょう。面接の内容は受験する級によって異なりますが、面接官と受験者は問題カードに書かれた内容について会話します。
なお、1級の試験ではスピーチをしなければいけません。英語を話せるだけではなく、自分の考えを持つことも試験の合格には必要です。
なお、英検の面接では「態度点」も評価されるため、スムーズかつ積極的にコミュニケーションできるように面接の流れをあらかじめ理解しておきましょう。
面接の流れ
面接の簡単な流れを説明します。
- 入室
- 面接カードを渡す
- 面接官の指示で着席
- 名前と受験する級を確認
- 問題カードを受け取る
- 問題カードに関する質問に答える
- 自分のことや時事問題の質問に答える
- 5~6問の質問に答えたら、問題カードを返却
- 退出
入室時はノックをします。入室したら挨拶をしましょう。問題カードの内容は難しさが受験する級によって異なります。面接の流れを知っておくことで、次に何をするのか分からず困惑せずに済みます。自分のペースで面接を進めることができれば、自分の持っている力を十分に発揮できるでしょう。
3級の面接内容
3級の面接は問題カードを用いて行われます。問題カードには文章とイラストが書かれています。
- 問題カードに書かれている文章を黙読します。黙読には20秒間与えられます。
- 文章を音読します。音読では声の大きさと発音に注意しましょう。問題カードに書かれている文章の語数は30語程度です。
- 問題カードに関する質疑応答を行います。問題カードに書かれた文章についての質問が1回、イラストについての質問が2回行われます。文章の理解とイラストが何を表しているのかの理解が評価されます。
- 日常生活の身近なことに関する質問が2回行われます。自分の日常生活について答えることができるようにしましょう。
準2級の面接内容
準2級も問題カードを用いて試験が行われます。問題カードの内容は3級で使用されたものより難しくなっています。
- 最初に行うことは問題カードの黙読です。黙読の時間は20秒間です。
- 文章を音読します。問題カードに書かれている文章の語数は50語程度です。
- 問題カードに関する質疑応答を行います。準2級の問題カードには文章とPicture A・Bの2枚のイラストが印刷されています。3級と同様に問題カードに書かれた文章についての質問が1回、イラストについての質問が2回行われます。
- 問題カードの題材に関連した内容について1回質問されます。問題カードを見ずに自身の言葉で答える必要があります。
- 日常生活の話題に関する質問が1回行われます。自分の意見を答える質問がされるため、自分の考えを英語にする力が必要です。難しい質問が来ても積極的に発言することが大切です。
2級の面接内容
2級の面接は名前と受験する級の確認した後に簡単な挨拶をします。
- 問題カードを渡されてから黙読をします。黙読に与えられる時間は20秒間です。
- 文章を音読します。問題カードに書かれている文章の語数は60文字程度です。
- 問題カードに書かれた文章についての質問が1回行われます。
- イラストについて説明を行います。2級の面接試験で使用される問題カードには、文章と3コマのイラストが印刷されています。3コマのイラストがどのように展開しているか理解し、英語で説明しましょう。
- 問題カードに関する質問に答えます。質問内容は問題カードの文章とイラストに関する事柄です。
- 時事問題に関する質問に答えます。時事問題について自分の考えを英語で話す必要があります。
準1級の面接内容
準1級は氏名と受験する級を確認した後に面接官と自由会話があります。
- 自由会話では面接官と簡単な日常会話を行います。
- 準1級の二次試験では問題カードの音読はありません。問題カードに印刷された指示文を黙読し、ナレーション内容を考える時間が1分間与えられます。
- 4コマ漫画イラストの展開説明を行います。冒頭の言い出しは指示文に従って話し始めましょう。
- 問題カードに関する質疑応答が始まります。面接官からイラストに関連した質問が1回行われます。
- 問題カードの題材に関連した質問が2回行われます。問題カードを見ずに答える必要があります。
- 面接官から社会的な問題について質問されます。自分の考えを伝わるように話す必要があります。
1級の面接内容
1級の面接では氏名と受験する級を確認した後に簡単な日常会話をします。
- 自由会話では面接官と簡単な日常会話を行います。
- スピーチの内容を考える時間が1分間与えられます。1級の面接には問題カードではなくトピックカードが用いられます。トピックカードに書かれている内容は問題カードと同じではありません。トピックカードには5つのトピックが記載されています。
- 5つのトピックから1つを選び、スピーチを行います。スピーチの行う時間は2分間です。スピーチの内容が途中でも2分が経過したタイミングで終了します。
- スピーチの後に内容やトピックスに関する質問が4分間行われます。そのため、スピーチの内容に対する自分の考えを1分間でしっかり固めておきましょう。
面接の対策
面接は筆記試験と要領が全く異なるため、対策が必要です。ただし、面接対策は筆記試験ほど時間をかける必要はなく、筆記試験が終了してからでも間に合うとされています。基本の英語力も大切ですが、積極的に自信を持って話すことが重要です。当日慌てずに発言するためにも面接の流れを覚えて、質問内容をある程度予想しておきましょう。
英語力以外にするべき対策は主に3つです。
自分のことを英語で話せるようにする
面接では受験者に関する質問が行われます。名前はもちろんですが、趣味や日常生活全般のことを英語で話せるように準備しましょう。自分のことが聞かれるなら大丈夫と練習せずに面接に臨んでしまうと、言葉が出て来ずに焦ってしまうかもしれません。
趣味や休日の過ごし方など日常生活に関する事柄を英語でノートにまとめておくとよいでしょう。
時事問題について話せるようにする
2級からは受験者に関する質問だけでなく、時事問題に関する質問もあります。最近話題になっているニュースは国内国外にかかわらずチェックしておきましょう。さらに、ニュースを知っているだけでなく、その問題に対する自分の考えを英語で話せるようになる必要があります。考えとは感想ではありません。「かわいそうだと思った」といった感想ではなく「こうすればよいと思います」といった考えを明確にしましょう。
イメージトレーニングをする
面接は流れを知らないとより緊張してしまいます。流れを知っていても緊張はしますが、心構えがまったく異なります。流れを知っておくことで次にされる質問への心の準備をすることが可能です。心の準備は自分の力を発揮するために必要なことです。流れは英検協会のサイト内のバーチャル二次試験で実際の流れを確認できます。各級の面接について説明があるため、自分の受験する級のバーチャル二次試験を確認しましょう。
面接中に意識すべきこと
面接のため英語力以外でも減点となることはたくさんあります。これから紹介することを実践すれば、英語力以外での減点を防ぐことが可能です。英語力があっても英語力以外の部分で減点になることもあります。非常にもったいないため、これから紹介することを意識して面接に挑みましょう。
コミュニケーションを取ろうとする姿勢をみせる
コミュニケーションを取ろうとする姿勢をみせることが大切です。黙ったりうなずいたりするだけではコミュニケーションを取ろうとしているようには見えません。面接官への印象が悪くなってしまいます。
いい印象を与えるためには
- 元気よく話す
- 面接官の顔を見て話す
- 言われたことに対して返答する
以上のことを心がけましょう。これらを意識することでやる気に満ちあふれているように見えて印象がよくなります。
また、何かを渡す際には「Here you are.(はいどうぞ)」一言つけてみてください。印象がよくなり英語を使えることのアピールにもなります。面接では英語だけに力をいれるのではなく、印象がよくなる工夫も行いましょう。
質問が聞き取れなかったら聞き返す
面接官の言っていることがうまく聞き取れなかったときは聞き返しても減点にはなりません。しかし、何度も不自然に聞き返していると減点になるため2度目でしっかり聞き取りましょう。
また、要望はしないように気を付けてください。「聞き取れないのでゆっくり話してください」といった要望は受け付けてもらえません。聞き返す際は「Pardon me?」と英語で聞き返します。聞き取れなかったときは考え込まずすぐに聞き返しましょう。
声の大きさに注意する
声の大きさは面接官にはっきり聞こえる声で話しましょう。評価の対象は発音やイントネーションです。しかし、面接官が聞こえていなければ評価できません。緊張で声が小さくなるため、大きな声で話すことを意識しましょう。また、話すスピードはそれほど重要視されていません。スピードよりも発音の正しさが評価されます。ゆっくりでも発音さえよければ評価につながります。
質問への応答に滞らないようにする
面接官からの質問に対して、応答を滞らないようにしましょう。質問に対して黙って考え込んでいると次の質問へ進んでしまいます。沈黙だけは避けて、話しながら考えるようにしてください。少しでも答える人と全く答えない人では印象も変わります。答えようとしていることが点数になります。考えがまとまっていない、考えを英語にすることができない場合でも、一言でも発言しておきましょう。
質問には2文以上で答える
面接官からの質問には2文以上で答えるように意識してください。3級までは1文でも答えることができます。しかし、準2級からは1文で完全な回答はできません。自分の思っていることだけでなく、なぜそのように思うかの理由も答えるようにしましょう。その2つを答えることで必然的に2文以上になります。
二次試験の面接後
二次試験の面接後から2週間後に合否が発表されます。合否はインターネットから確認できます。インターネットから確認するためには「英検ID」と「パスワード」が必要です。一次試験の成績表に書いているため、紛失しないように保管しておきましょう。二次試験のみが不合格だった場合、1年間は一次試験が免除されます。二次試験だけを受験しなおすことができます。あきらめないで何度も挑戦しましょう。
態度での減点に気を付けよう
英検の二次試験は英語力だけを評価する試験ではありません。英語力が評価のほとんどを占めますが、それ以外も重要です。積極性や声の大きさなども評価の対象となります。英語力以外の減点は意識しておけば防ぐことは簡単です。
また、時事問題や受験者自身のことも、答えることができるように対策しておく必要があります。英語で会話する能力があっても時事問題に関して知らなければ答えようがありません。英語力は短期間では身に付きませんが、英語力以外の対策は短期間でも可能です。そのため、一次試験の終了後は英語力以外を重点的に対策しておくことをおすすめします。