日本人の多くは、英語の発音に自信がありません。単語や文法が合っているにも関わらず、相手に言葉が通じない場合は、「発音」が問題の可能性があります。
この記事では、英語の発音が苦手な方に向けて「英語の発音のコツ」をご紹介します。
英語の発音が難しいのはなぜ?
日本人が英語の発音を難しく感じる理由は、2つの言語の間にさまざまな違いがあるためです。その違いを理解したうえで発音を学べば、上達への近道となるでしょう。
ここでは、英語と日本語における文字表記と発音の違いについて解説します。
文字に規則的な読み方が存在しない
日本語は基本的に「あいうえお」から始まる50音の組み合わせによって発音します。
一方、英語は同じ文字(アルファベット)であっても、単語によって音が変わることがあります。文字の組み合わせや条件によって異なる発音になり、日本語のような一定の規則性がありません。そのため日本人は、日本語における「文字表記と音の規則性」についとらわれてしまい、英単語を覚えても正しい発音に応用できないケースがあるのです。
▼同じ文字表記でも発音が異なる例
発音記号 | aの発音 | |
apple | ǽpl | æ=(ア)と(エ)の中間 |
April | éiprəl | ei=(エィ)エは強く、ィはぼかす |
※近い音としてカタカナで発音を表しています
※アメリカ英語での発音の違いです
日本語の発音にはない音が多い
英語には日本語では使用しない音も存在あります。聞きなれない音の場合、聞くことも話すことも難しく感じるでしょう。これは、発音する際の口や舌の動きが日本語と異なるためです。
日本人にはなじみがなく初めは難しく感じてしまいがちですが、繰り返し練習することで正しい発音に近づくことができます。新しいスポーツに挑戦するような気持ちで、口や舌の動きを訓練することから始めてください。
ただし、日本語の発音にはない音を無理にカタカナに当てはめて覚えると、正しい発音ではなく「カタカナ英語」が身に付いてしまいます。耳から聞こえる音のとおりに覚えるよう意識しましょう。
日本語にはない発音のルール
英語にはアクセントの付け方やイントネーションにルールがあり、単語と単語をつなげて話したり、発音を変化させたりするルールも存在します。
発音記号どおりに発音できたとしても、このようなルールに定まった発音ができていないと「棒読み」になり、相手に理解されにくいことがあります。
英語においてアクセント(強弱)で強く発音する場所は、単語のなかに1つか2つ程度です。音の強弱をつけて発音することで、英語らしい発音になるでしょう。
英語と日本語の音の違い

日本語の母音は「あ・い・う・え・お」だけです。母音を発音するとき、口の中で空気をこもらせることはありません。子音は唇・舌・歯を使って空気を切って発します。
また、「ん」「っ」といった特別な音を除けば、子音の後ろに母音を付けて発音することになります。たとえば「か」と発音するとき、子音「k」と母音「a」を合わせて「ka(か)」と発します。
一方英語では、子音だけを発音することが多くあります。日本語でも子音を無意識に使っていますが、母音と組み合わせた発音に慣れているため、子音だけを発音することに慣れるまで時間がかかることがあります。
英語の母音はアイウエオだけではない
英語の母音は日本語よりも多く、細かく分類すると26個も存在します。日本語の「あ・い・う・え・お」と似てはいますが、同じようで違う発音を区別する必要があるでしょう。
例えば、日本語の「あ」に似た音は3種類あります。「ʌ」「ӕ」「ɑ」の発音記号で表されます。
ʌ | (オ)と(ア)の中間 |
ӕ | (ア)と(エ)の中間 |
ɑ | (ア)の口で(オ) |
母音ははっきりと響く音となり、単語の母音部分は強く発音します。よく使われる母音については繰り返し練習しましょう。
子音で終わる音に慣れる
英語は子音だけで発音する音が豊富にあります。日本語のように、「子音に母音を付けて発音する」と伝わりにくくなってしまいます。
発音の覚え方としては、単語の読みをカタカナで書いてしまわないことです。たとえば、「cat」の「t」は破裂音です。「ッ」や「トッ」の息だけに近い音です。この単語の読み方として「カァトッ」と書いてしまうと、「to」に含まれる母音「o」も一緒に発音してしまうため、誤った発音となってしまいます。発音は耳で覚え、子音の音を注意深く聞いて発音に慣れるようにしましょう。
英語発音のルール

英語には特有の発音ルールがあります。このルールを覚えておくと発音がよりネイティブに近づくため、ポイントを押さえておきましょう。
※発音のニュアンスを理解しやすいよう、表にカタカナ読みを入れています。
連続する単語をつなげて読む「連結」
リンキング、またはリエゾンと呼ばれる連結のルールがあります。連続する単語をつなげて発音するルールです。つながる部分が母音か子音かによってつながり方が変わります。
つながる部分 | 例 | 本来の読み | つなげた読み |
子音+母音 | keep out | キープ アゥトッ | キーパゥトッ |
母音+母音 | go ahead | ゴゥ アヘッド | ゴゥワヘッド |
子音+子音 | help you | ヘルプ ユー | ヘルピュー |
母音+母音のときは発音しづらいため、間に「w」や「y」が入った音になります。
連続する単語の発音を変えて読む「同化」
音がつながって変化することをアシミレーションといいます。連結との違いは、前後の子音が影響しあって、スペルとは別の音に変化するところです。
例 | 本来の読み | つなげた読み | 変化した音 |
miss you | ミス ユー | ミシュー | ス→シュ |
get you | ゲットッ ユー | ゲッチュー | トッ→チュ |
音を省略する「脱落」
本来は発音するはずの音を発音しないというルールをリダクションといいます。連結した単語の間や文末の音が省略されます。省略される音はアクセントのない弱い音が多いです。
例 | 本来の読み | 省略読み | 省略された音 |
good time | グッドゥ タィム | グッタィム | 単語の間の「d」 |
I did it | アイ ディドゥ イットッ | アイディディッ | 文末の「t」 |
文章中にある意味の弱い単語は弱く発音する

文章中にある意味の弱い単語は、弱く発音した方が相手に意味が理解されやすくなります。テキストを見ながら英語のリスニングをしているとき、言っているはずの単語がよく聞き取れないと感じることがあるでしょう。たとえば、be動詞や前置詞(forやfrom)は、前後の文脈から想像できます。ネイティブの場合、そのような単語は弱く発音する傾向にあります。
イントネーションにもルールがある
標準的な日本語では、抑揚のない平坦な話し方をします。しかし、英語はイントネーションの付け方で意味合いを含めることができます。イントネーションとは声の抑揚で、調子を上げ下げすることです。そのため、英語を日本語と同じような平坦な調子で話すと、意味が通じにくくなってしまいます。
ここからはイントネーションの基礎である語尾の上げ下げについてご紹介します。
陳述文・平叙文でのイントネーション
陳述文や平叙文と呼ばれる、情報を伝えるだけの文は「文末を下がり調子」に話します。
日本語でも説明文や肯定文は、同様に下がり調子で発音します。
I am a tennis player.⤵ | 私はテニス選手です。 |
命令文でのイントネーション
人に指示をする際は命令文を使います。英語の命令文では、多くの場合、主語が省略されて動詞の原形からはじまります。命令文についても「文末を下がり調子」に発音します。
Don’t smoke here.⤵ | ここでタバコを吸わないで。 |
感嘆文でのイントネーション
驚きや感動、関心など表す文を感嘆文と言います。感嘆文は「What」か「How」で始まり、文末に感嘆符の「!」を付けます。感嘆文も「文末を下がり調子」で発音します。
What a beautiful flower this is!⤵ | これはなんて美しい花でしょう! |
How fast you run!⤵ | あなたはなんて速く走るんでしょう! |
疑問詞がついた疑問文のイントネーション
疑問文のうち「Who・What・When・Where・Why・Which・How」の疑問詞から始まるものは、「文末を下がり調子」に発音します。
What are you doing?⤵ | あなたは何をしていますか? |
How many eggs did you buy?⤵ | あなたは卵をいくつ買いましたか? |
Who are those boys?⤵ | あの男の子たちは誰ですか? |
Yes・Noで答える疑問文のイントネーション
受け答えが「Yes」か「No」のどちらかになる疑問文は、「文末を上がり調子」に話します。疑問詞を使った疑問文と区別すると表現の幅が広がります。
Did you go to Osaka last week?⤴ | あなたは先週大阪に行きましたか? |
質問に聞き返すときのイントネーション
相手の質問や問いかけに対して聞き返すときは、「文末を上がり調子」に話します。よく聞こえなかったときや、驚いて聞き返すときも上がり調子になります。
Are you a student?⤴ →a student?⤴ | あなたは学生ですか? 学生かですって? |
and・orを使い、いくつかの単語を組合わせるとき
「鉛筆とノート」「パンかごはん」といったように、いくつかの単語を挙げる文は「and」か「or」を使って表します。
3つ以上の単語を挙げるときは、最初はカンマ(,)で区切り、最後の単語の前が「and」や「or」になります。
イントネーションは「and」か「or」より前の単語は調子を上げ、後ろの単語は調子を下げてください。最後の単語だけを下がり調子に話すことで相手に伝わりやすくなります。
We visited Osaka⤴,Kyoto⤴,and Nara.⤵ | 私たちは大阪と京都と奈良を訪れました |
Is he your brother⤴ or friend⤵? | 彼はあなたの兄弟ですか?友達ですか? |
発音が上達しない原因

英語の発音が上達しない理由は、覚え方の順番を見直してみましょう。英会話の基礎は発音です。発音を上達させることで、英会話力を効率的に伸ばせるようになります。
ここからは、発音が上達しない原因を踏まえつつ、正しい発音を身に付けるための覚え方について紹介します。
英字やスペルを覚えることから始める
一般的には、日本人の英語学習はアルファベットを覚えることから始まります。アルファベットを覚えることで、単語や文のスペル覚えやすくなります。
しかし、スペルを覚える際、ローマ字読みをする人がいます。スペルを暗記するには、正しい発音を聞きながら覚えるようにしましょう。英語圏の子どもたちの場合と同様に、最初は単語を音として覚えることから始め、次に覚えた音を組み合わせてスペルを完成させると、正しい発音が身に付きやすくなります。
カタカナ読みにあてはめている
「カタカナ読み」を続けていると、発音の上達を妨げてしまいます。カタカナ読みでは子音を表現できないため、正しく発音できません。
また、英語語は母音が多様なため、カタカナでは表現しきれません。書くときは発音記号を使い、カタカナに頼らずに音を覚えるようにしましょう。
フォニックスで発音ルールを学ぼう
フォニックスとは、英語圏の子ども向けのスペル暗記法です。発音とアルファベットの関係性をルール化し整理すると、単語を正しく発音でき、発音からスペルを理解できるようになります。
フォニックスは発音とスペルを同時に学習できるため、効率よく英語学習を進められます。ただし、フォニックスのルールに該当しない、例外的な単語も存在することには気をつけなければなりません。
ここからは、基本的なフォニックスのルールについてご紹介します。
※フォニックスのルールを理解しやすいよう、表にカタカナ読みを入れています。
フォニックスの読み方とは
フォニックスのルールに従ったアルファベットごとの音や、組み合わせの音を理解する必要があります。以下の表では、フォニックスの発音ルールと、各アルファベットにおける音に近い読み方をカタカタで表記しています。
文字 | 読み | 文字 | 読み |
a | ア(æ) | n | ヌ |
b | ブ | o | ア(ɑ) |
c | ク | p | プ |
d | ドッ | q | ク |
e | エ | r | ル |
f | フ | s | ス |
g | グ | t | トッ |
h | ハ | u | ア(ʌ) |
i | イ | v | ヴ |
j | ジュ | w | ウッ |
k | ク | x | クス |
l | ル | y | ィヤ |
m | ム | z | ズ |
例えば、「bus」という単語のフォニックス読みは「bブ・uア・sス」です。フォニックスのルールを学ぶことで発音とスペルの関係性を掴むことができます。
この他にも、2文字で1つの音となる「ch」→「チ」や、「sh」→「シュ」といった規則性があります。
長母音・短母音について
母音である「a・e・i・o・u」という5種類のアルファベットは、「長母音」と「短母音」2とおりの音があります。
長母音 | 短母音 | |
a | エィ | (ア)と(エ)の中間 |
e | イー | エ |
i | アイ | (エ)と(イ)の中間 |
o | オゥ | (ア)の口で(オ) |
u | ウー | (オ)と(ア)の中間 |
長母音はアルファベットの読み方に類似しており、短母音は短い音のためローマ字読みに類似しています。この長母音と短母音は条件によって使い分ける必要があります。
母音+子音の組み合わせ
母音のすぐ後に子音ひとつが続く単語の場合には、短母音で発音します。
単語 | フォニックス読み | 発音 |
bed | bブ・eエ・dドッ | ベェドッ |
基本的なフォニックスルールに従った単語であれば、初めて見る単語でも発音できるでしょう。
子音+母音の組み合わせ
単一の子音と母音の組み合わせの場合は、長母音で発音します。
単語 | フォニックス読み | 発音 |
we | wウッ・eイー | ウィ |
この他にもさまざまなフォニックスルールがあります。すべてのルールの細部まで覚える必要はありません。
「単語の読み方には規則性があること」を念頭に置き、単語を見て発音にチャレンジし、正確な発音だったかを検索エンジンなどで確認することで、フォニックスルールを掴む練習になります。また、フォニックスの学習教材はYouTubeやアプリで試すこともできます。自分にあった教材を探してみてください。
英語を発音するコツをつかもう

フォニックスのルールについて解説してきました。続いては、発音のコツを掴む練習に入りましょう。発音を練習するときは、英語の音声を聞き、耳から英語に慣らすことが重要です。
洋画や海外ドラマの英語を聞こう
洋画や海外ドラマで使用されている英会話をたくさん聞きましょう。通勤の途中や家事をしながら聞き流すだけで結構です。最初から難しく考えていては長続きしにくいため、なるべく多くの時間「英語を聞くこと」に重視してみましょう。
お子さまに限らず、大人も楽しめるディズニーアニメは発音がはっきりとしているためおすすめです。何度も聞いているうちに、子どもたちは自然に口真似をはじめることが多く、発音の練習にも最適です。それぞれの発音の特徴やイントネーション、音の変化を注意深く聞くことで、より早く英語の音に耳が慣れることができます。
音声データ付きテキストは音声だけを聞こう
音声データ付きの英会話テキストを購入した際には、まずは音声のみを聞きましょう。さきにテキストを開いてしまうと、文字の情報が入ってしまうため、脳内で「音から文字へ変換する」スキルが上達しにくくなってしまいます。
音声のみを聞き続けることで、今まで聞き取れなかった音が聞こえるようになります。その時点で、聞こえたフレーズを真似してみましょう。最後にテキストを開いて、聞こえた音とスペルが合致しているかを確認します。この方法を繰り返すことで、聞いた英会話を文字化できるようになってきます。
自分の発音を聞いてみよう
自分がきれいに発音できているかを確かめるため、録音して聞いてみましょう。母音を強く発音できているか、長母音・短母音の使い分けができているか、子音を正しく発音できているか注意して聞いてみてください。イントネーションやアクセントの間違いもポイントごとに確認しましょう。
確認しながら自分の発音を聞くことで、自分の苦手とするポイントを発見できます。苦手なポイントは、鏡を使って口や舌の動きにも注意して練習してみましょう。「音声を聞く」「発音する」「確かめる」といった3つのステップを繰り返して、きれいな発音で英語を話すスキルを身に付けましょう。