作品の裏にあるストーリーに着目せよ 子どもが創造性を発揮する瞬間を見逃さないためには

小中学生向けのプログラミング道場「CoderDojo Kashiwa」を主催・運営する宮島衣瑛氏のところには、駆け込み需要的にプログラミング教育の依頼が増えているようです。今回は中でも宮島氏がおもしろいと思った授業を2つ紹介します。

プログラミング教育の依頼が増えている

小学校は3学期に入り1ヶ月が経ちました。私のところにくるプログラミング教育の依頼も駆け込み需要的に増えている状態です。

学習指導要領的には5年生算数、6年生理科、総合的な学習の時間での取り組みがそれぞれ例示されていますので、まずはそのあたりをしっかりと1年のどこかで扱うことをおすすめします。

今回は、子どもが創造性を発揮する瞬間について紹介します。最近参観したり実際に私が行った授業では、子どもたちはたくさんの創造性を発揮して、プログラミングに取り組んでくれていました。中でも私がおもしろいと思った2つの事例をご紹介します。

【CASE1】6年生理科「電気の利用」の授業

これは2021年の1月に訪問した埼玉県の小学校での出来事です。

この日は担任の先生が主導して、プログラミングを使った電気の利用の授業でした。この授業は、手回し発電機を使ってコンデンサに電気をため、それを無駄なく使うためにコンピューター制御していくというのが主な活動内容です。

子どもたちには、電気を無駄なく効率よく使うためにはどのような工夫をすればよいかを訪ねます。多くの場合、人がいるときだけ電気をつける、明るいときには電気を消すといった工夫がでてきます。このアイデアをプログラミングして実際に作っていきます。

ここで扱うプログラミング自体は、大して複雑ではありません。たとえば、人感センサー(またはカメラ)になにか反応があったときだけ電気をつけるプログラムは次のように作ることができます。

人が動いたときだけ電気をつけるプログラム例

この日の授業もだいたい同じように進んでいきました。子どもたちの中からでてきたアイデアをプログラミングによって形にしていくプロセスは、どの現場でもワクワクで溢れています。先生の指導もあり無事にプログラムを完成させ、ここから余白の時間に入ります。

理科室にあったモーター付きのプロペラやスピーカーをコンピューター制御してみたり、Scratch に興味がある子どもたちは、そちらを改造したり思い思いの活動をしています。

そんな中、あるグループの子たちがモーター付きのプロペラを扇風機に見立てて、実際の製品と同じようなものを作り始めました。

扇風機を組み合わせている図

このグループのおもしろかった点は、ただ扇風機をつないで終わりにするのではなく、ソフトウェア側で実物を再現しようとしたところでした。以下の写真は、風量の強弱を設定しようとしている場面です。

扇風機をソフトウェア上で再現しようとしている図

自分たちが作りたいと思ったものに向かってさまざまな試行錯誤を繰り返していく過程こそが、プログラミング教育によって育まれる力だと言えるでしょう。

このグループは、最後にクラス全体で作ったものを発表していましたが、自分たちが自信をもって作ったものについて話すわけですから、自然に堂々と話すことができていました。

【CASE2】5年生算数「正多角形の作図」の授業

これはつい先日訪問した千葉県の公立小学校での出来事です。この授業は学習指導要領にも例示されているプログラミングを使った学習活動です。これまで学習した正多角形の性質を使って、Scratchで実際に作図していきます。

この授業では私が講師を務め、2時間かけてプログラミングをしていきました。まずは正方形を作図し、繰り返しと角度の関係についておさえます。次に正三角形を子どもたち自身に書いてもらいますが、多くの場合「60度回す」と設定してしまい正六角形の半分の形ができあがります。

正三角形を描くためには、動かすネコの視点に立ってプログラムする必要がありますので、正解は120度になります。あまりピンと来ていない子どもが多ければ、実際に教室の中を歩きながらイメージを掴んでいきます。

次に正五角形、正六角形…と続き、最終的には回す角度と繰り返す数の関係を見出し、どんな図形であっても描けるようになります。

正七角形を描くプログラム例

さて、普通の授業ではここで終わりですが、私は創造性の余白の観点から自由に作図を楽しむ時間を取っています。自分がこれまで学習してきた内容を総動員して、画面いっぱい好きなように作図をする時間です。

あるクラスの女の子が以下のような図形を作図しました。

子どもが作図した作品

星型を描く角度を発見したこともそうですが、注目すべきは真ん中の丸い図です。彼女いわくこれは月を表現しているとのことなのですが、よく見ると目と口がついており笑っている顔が表現されています。彼女は目を描くために、ネコを少しだけ動かして止め、口を描くために円を途中まで描いて止めていました。

このような工夫にはまさに創造性が溢れています。私はこれを見たときにとても感動したと同時に、彼女の中に目的達成のためにプログラミングをする力が着実にあるのだということを感じました。

創造性の種類

創造性がなんたるかを厳密に定義することは極めて困難です。また、なにをもって創造性が育まれるかなどは、解明するのにまだまだ時間がかかるでしょう。Scratchを開発したMITメディアラボのレズニック教授は、創造性を大きく2つに分類しています。

1つ目は「Big “C” Creativity」。大文字のCから始まる Creativity です。これは、ノーベル賞級の発明やイノベーションなどの創造性を指しています。一方で、「Small “c” creativity」は、自分自身にとって新しく、自分の生活に役立つ新しい方法を思いつくことだとしています。日本語で言うならば、創意工夫や試行錯誤といった言葉が適切でしょう。

私が今回紹介した2つの事例は、あくまでも代表して取り上げたものであって、他の子どもたちも「Small “c” creativity」を発揮していました。私たちは子どもが作ったものを出来栄えや見た目のクオリティで判断しがちですが、大切にするべきはその子にとってなにが新しい発見または学びだったかということ、そしてそれをどのように表現しているのかという点でしょう。

見た目が派手だから完成度が高いから、創造的であるというのは大いに間違いです。ぜひ子どもたちが作った作品の表面のみを見るのではなく、その裏にあるストーリーに着目してみてください。きっと見え方が大きく変わってくるはずです。