2020年「プログラミング教育」の必修化で何が変わるのか?

2020年から小学校で「プログラミング教育」の必修化がスタートします。しかし、いまだその詳細をつかめず、漠然とした不安を抱える人も多いのではないでしょうか? 本記事では、なぜプログラミング教育を必修化するのか、授業はどう変わるのか、また中学や高校ではどうなのかなど、さまざまな疑問を解説します。

【ポイント】

  • プログラミング教育の必修化は令和2年度から
  • 小学校では、主に5~6年生の算数、理科の教科書に登場
  • 中学では技術分野で、高校の情報科では共通必履修科目に登場
  • 直感的に学べる教材が充実しているので、楽しみながら学べる

「情報活用能力」の育成を目指して

文科省(文部科学省)が学校(小中高)で教える科目の内容を定めた「学習指導要領」が平成29~30年度に改定され、「新・学習指導要領」が令和2年(2020年)度より実施されます。なかでも最大の話題は、「プログラミング教育」が小学校で「必修化」されることです。

ただし「必修化」と言っても、「国語」や「算数」のような科目と同じように「プログラミング」という新たな科目が増える、ということではありません。「算数」や「理科」など、これまであった科目のなかに「プログラミング教育」の要素が必ず組み込まれる、ということです。

しかし、なぜ「必修」なのでしょうか? それは国語のような「言語活用能力」以外に、「情報活用能力」の育成が「学習の基盤となる資質・能力」として位置付けられ、そのために特に「プログラミング教育」を充実させることが目標となったからです。

これからの時代、パソコンやスマートフォンなどIT機器の使用は、今まで以上に暮らしや仕事に組み込まれることが予想されます。単に道具として使いこなすだけでなく、その仕組みを知り、能動的に活用することが、将来どのような暮らしをするにせよ、どのような仕事に就くにせよ、重要であると考えられているのです。

学習指導要領の改訂の変遷

これまで「学習指導要領」は、ほぼ10年ごとに改訂が行われ、その時代に必要な内容が盛り込まれてきました(表1参照)。

改定年 特徴
昭和33~35年 科学技術教育の向上
昭和43~45年 算数に「集合」を導入
昭和52~53年 ゆとり教育(目標内容の絞り込み)
平成元年 「生活科」の導入、道徳教育の充実
平成10~11年 「総合的な学習の時間」の新設
平成20~21年 小学校に「外国語活動」を導入
平成29~30年 小学校に「プログラミング教育」を導入
表1 改定時における学習指導要領の特徴

「平成元年」の改定では、第1章の「総則」の最後の部分にあたる「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」に、「視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用」が強調されていましたが、この時期にはまだ「コンピュータ」は登場していませんでした。

これが、平成10~11年の改定では、「視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用」に加えて、「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ、適切に活用する」学習活動を充実させることが新たに加えられました。つまり、この時点から小学校教育にコンピュータ教育が開始されました。

平成20~21年の改定では、「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ、適切に活用する」具体的な内容として、「コンピュータで文字を入力」するなどの「基本操作」と「情報モラル」を身に付けることが書き加えられました。SNSの利用が広まり、教育の現場で書き込み内容などの指導が必要となってきたのです。

そして今回の平成29~30年の改定では、総則「第3教育課程の実施と学習評価」において、「コンピュータで文字を入力」するなどの「基本操作」の習得に加えて、「プログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」を計画的に実施することが明記されました。

これまでの次元とは異なり、コンピュータを使えるようにする、というだけではなく、コンピュータの仕組みや原理を知り、能動的に使えるようにすることが目指されています(表2参照)。

改定年 情報関連の特徴
平成10~11年 コンピュータ教育の導入
平成20~21年 コンピュータの基本操作と情報モラルの習得
平成29~30年 プログラミング教育の導入
表2 情報関連の導入の変遷

プログラミング教育が導入される科目

プログラミング教育は、単一の科目ではなく、いくつかの科目のなかで、必要に応じて登場します。主に、算数や理科、総合的な学習などで、プログラミングを行う場面が例示されています。学年別でみると、1年生の算数からプログラミングにふれている教科書もあるようですが、大半は、5~6年生の算数や理科で登場します。

5年生の算数では、「図形」のところでプログラミングが扱われています。正多角形や円を書く手順を考えるという題材(Scratchなどを使用)です。これは、「正多角形の作図を行う学習」として位置づけられているもので、「正確な繰り返し作業を行う必要があり、更に一部を変えることでいろいろな正多角形を同様に考えることができる」ことを学ぶためです。

6年生の理科では、「物質・エネルギー」における「電気の利用」のところに現れます。センサーやLEDを使って人がいるときだけ明かりがつく装置をつくるうえで、プログラムを作成し、コンピューターに命令を出させるという題材(レゴWeDo 2.0、ArtecRobo、MESHなどを使用)が、教科書に載る予定です。これは「与えた条件に応じて動作していることを考察し、更に条件を変えることにより、動作が変化することについて考える」ことを学ぶためです。

「論理的思考力」を身に付けることが強調されているものの、具体的には、教育用プログラミング言語やツール(電子ブロックやロボットキットなど)を教材として操作することになります。

中高におけるプログラミング教育

「新学習指導要領」は、小学校以外では、中学校は令和3年度から、高等学校は令和4年度から実施されます。

中学校では、技術・家庭科(技術分野)の教科書に、情報セキュリティに加えてプログラミングに関する内容が加わる予定です。「プログラムによる計測・制御」は必修で、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」も学びます。

また、高等学校では「情報科」の「共通必履修科目」である「情報I」が新設され、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎に加えてプログラミングが加わる予定です。

これまで情報科では「社会と情報」と「情報の科学」の2科目のうちの1科目をとる「選択必履修」のカリキュラムでしたが、「情報の科学」を履修する生徒の割合は約2割で、約8割は、高等学校でプログラミングを学ばずに卒業していたことから、「情報I」を新設し必修化しました。

まとめ

これまで、パソコンやスマートフォンの使用が一般化しても、「プログラミング」をする人はそれほど多くはありませんでした。しかし、これからの時代の仕事や暮らしを考えると、子どものころから「プログラミング」(とその背景にある論理的思考力)を学んでおくことが大切だと考えられ、小学校教育から必修化を進めることになりました。

はじめての試みなので不安も多いとは思いますが、教育用に開発されたプログラミング言語やツールは直感的に操作できるように工夫されていますので、むしろお子さんにとっては楽しみながら覚えることができる機会が増えることになると思います。保護者のみなさんも、プログラミングはハードルが高いと感じる方がいると思いますが、あまり身構えず、教材を通じてお子さんと一緒に学んでいくといいのではないでしょうか。

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