科学教育よりもエンターテインメント性を重視。チームラボの作品もある「シンガポールの博物館」【日本と世界のサイエンスミュージアム】

シンガポールと言えばマーライオンなどが有名ですが、子ども科学教育として重要な役割を果たす「サイエンスミュージアム」は、どのようなものがあるのでしょうか。筆者が直接シンガポールに行って確認してきました。

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ヨーロッパとアジアの海運貿易の要衝「シンガポール」

日本から飛行機で約7時間半、北緯1度7分の赤道に近い国、シンガポール。広さは724.2平方キロメートル(2018年現在)と、東京都23区(626.6平方キロメートル:2019年6月1日現在)より1割ちょっと大きい程度。そこに約564万人(2019年1月時点)が居住する都市国家です。よく東京23区と同じくらいの広さと紹介されることもありますが、それは昔の話しで、今は23区よりも早いペースで海が埋め立てられ、土地の拡張が行われています。

港を中心に発展してきたので、観光スポットとして知られるマーライオン像や高層ビルが密集する中心市街も、海から近いエリアにあり、年間1850万人(2018年次)と実に人口の3倍以上の観光客が訪れる観光都市でもあります。丘なども削り取って埋め立てに利用していることもあり、高低差が少なく歩きやすいです。

また、地下鉄やバスも整備されているので、タクシーを使わなくても、博物館や美術館を巡れるのは魅力です。さらに、ゴミを捨てるだけで罰金になることも有名ですよね。だから街中は非常にきれいです。

シンガポールは海運都市

シンガポールという土地は、ヨーロッパとアジアとの海運貿易の要衝であり、16世紀ごろからポルトガル、オランダ、スペイン、イギリスの支配下となり、太平洋戦争(第二次世界大戦)では日本が占領するなど過酷な運命をたどってきました。

1965(昭和40)年8月9日に都市国家として独立を果たしてから、わずか54年しか経っていません。それにもかかわらず、急速な経済成長により世界的金融センターとして注目を集めているのは、国の政策として独立前からの交易や海運拠点機能と合わせて、アジア地域への投資拠点化することに特化していることによります。

今回は、そんなシンガポールで訪問した博物館と植物園、動物園をご紹介します。

シンガポール国立博物館

シンガポールで最初に訪れるべきはシンガポール国立博物館です。ここでは、シンガポールで育まれてきた文化とともに、歴史とどういった背景でどのような政策が取られてきたのかを知れます。

植民地時代に各民族が団結して反乱を起こさないように居住地域を分離していたものを、独立後は集合住宅(マンション)一棟ごとに各民族の割合に応じた入居者数を義務付けることで融合を進めているといった、急成長した国家らしい課題克服の施策や発想の転換は、課題解決の考え方の参考にもなります。

曜日にもよりますが、日本語の無料ボランティアガイドも実施されています。筆者が訪問したときは、日本人が日本人向けの情報を補足しながらガイドしてくれたので、非常に深く理解できました。訪問される際には、ガイドのスケジュールも確認するのがオススメです。

太平洋戦争当時の日本軍戦車

海運博物館・水族館

海運貿易が主要産業のひとつであることから、海運と水族館という海に関する博物館も設置されています。海運博物館と水族館はそれぞれ独立したテーマを扱っていますが、運営母体が同じでチケットも個別または両方のいずれでも購入できるようになっています。

とくに秀逸なのは、海の上の船や貿易について学んでから順繰りに降りていって、続けて海の下について知る水族館を見られるようにつながっていることです。ただし一方通行になっており、水族館から海運博物館には行けないので、見学する際には注意が必要です。

アートサイエンス・ミュージアム

アートサイエンス・ミュージアムは、科学的手法を取り入れた作品を取り扱っています。訪問した2019年9月には、3企画の展示が同時に行われており、大型のバルーンに、月をプロジェクション・マッピングしたアート作品などが展示されていました。

この会場で日本と大きく違うと感じたのが、企画展示用に屋内に建付けた壁などの仕上げに関するものです。日本国内の博物館では、期間限定で開催される企画展などで臨時に作られる展示室の壁などは、裏側も含めて体裁よく化粧板などが取り付けられているのが一般的です。

ところが、シンガポールは板の裏側がむき出しの場合が少なくありません。最初見た際には、むき出しの板自体も展示の一部かと思ったほどです。展示体験自体に影響がない部分は気に留めないのか、もったいない精神なのかはわかりませんが、潔い割り切りです。

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイは、シンガポール紹介の写真にもしばしば登場する、エンターテインメント性が高い撮影スポットも多いことで有名な植物園。ツリー状の形のものは、実際には人工物でできたタワーで、木の成長にともなって絡みつきながら変化しています。

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ

園内にはドーム型植物園「フラワードーム」と「クラウド・フォレスト」が併設されています。とくにクラウド・フォレスト内にある人工山は35mあり、この山を回りながら植物を観察するのですが、どちらかというと写真の撮影スポットとしてのレイアウトを重要視している印象です。

クラウド・フォレスト

ナイトサファリ

シンガポールの動物園の代名詞ともなっているのが「ナイトサファリ」です。これは園内をトラム(園内バス)に乗りながら、夜の動物の様子を観察するものです。夜の動物の様子を直接見れる動物園は、国内でも多くはないのでぜひ訪問してみてください。ナイトサファリだけあって、園内が大変暗く、肉眼では見えるものの、コンパクトカメラでは撮影できなかったほどです。

ナイトサファリ入り口

ナイトサファリは、昼間は歩いて回れる動物園をカートに乗って巡ります。ついつい夜にばかり目が行きますが、朝から夕方にかけては普通の動物園として(別料金で)営業しています。遅くとも夕方までに行って一通り見た上で、夜の様子も見るのがオススメです。狭い土地を有効活用するアイデアとなっています。

昼の動物園

ここまで読んでお気づきかもしれませんが、シンガポールには科学教育に特化した常設の科学館は見当たりません。一方、国立博物館とアートサイエンス・ミュージアムの2ヶ所で日本のチームラボの作品が常設展示されていました。つまり、写真撮影の見栄えを意識した撮影スポットや展示が、ほぼすべての施設にあり、エンターテインメント性を重視した場作りが優先事項であることがうかがえます。

一方、国土の広さの制約を、立体的な構造や時間帯によって演出を変えることなどによって、2倍、3倍の体験を提供しているのがシンガポールの施設の特徴と言えます。

ここで紹介した施設だけであれば、まる2日で見て回れ、3日あれば他の博物館や美術館にも足がのばせます。エンターテインメント性の高さでは際立っているシンガポールの各施設に、ぜひ一度訪問してみてください。

アートサイエンス・ミュージアムでのチームラボ常設展示

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基本情報

シンガポール国立博物館 (National Museum of Singapore)
・住所:93 Stamford Road, Singapore 178897
・公式サイト:https://www.nationalmuseum.sg
・開館時間:10:00〜19:00
・休館日:なし
・見学目安時間:1.5時間
・入館料:大人 $26.00(約2000円)〜小人$19.00 (約1500円)
・オーディオガイド:なし
・日本語ガイドツアー: Webサイトにて要確認

海事博物館 / 水族館 (The Maritime Experiential Museum / S.E.A. Aquariumu)
・住所:8 Sentosa Gateway, Singapore 098269
・公式サイト:https://www.rwsentosa.com/en/attractions/the-maritime-experiential-museum/highlights
・開館時間:10:00〜19:00
・休館日:なし
・見学目安時間:1.5〜2時間
・入館料(2館分):大人 $45.00(約3600円)〜小人$35.00 (約2,800円)
・日本語ガイド:なし

アートサイエンス・ミュージアム(ArtScience Museum)
・住所:6 Bayfront Ave, Singapore 018974
・公式サイト:https://jp.marinabaysands.com/museum.html
・開館時間:10:00〜19:00
・休館日:なし
・見学目安時間:1.5〜2時間
・入館料(全展示):大人 $40.00(約円)〜小人$30.00 (約 円)
・日本語ガイド:$10.00 (追加料金)

ナイトサファリ(The Night Safari)
・住所:80 Mandai Lake Rd, Singapore 729826
・公式サイト:http://www.nightsafari.com.sg
・開館時間:19:15〜24:00
・チケット販売:17:30〜23:00
・休館日:なし
・見学目安時間:1.5時間
・入館料:大人 $49.00(約3,900円)〜小人$33.00 (約2,600円)
・日本語ガイド:$10.00 (約800円)