次回開催が危ぶまれるMaker Faire Bay Area 2019。でも子どもたちの熱気はすごかった【シリコンバレーのSTEM教育】

メイカー(Makers、ものをつくる人々)の祭典Maker Faire Bay Areaが、アメリカ・シリコンバレーのサンマテオ・イベントセンターで開催されました(2019年5月17日〜19日)。主催のMakerMedia社の解散により次回の開催が危ぶまれていますが、筆者も会場を訪れ、子どもたちの展示を中心に見てきたので、その様子をレポートします。

「ヤング・メイカー」が活躍した今年のベイエリア

メイカーフェア(Maker Faire)は、メイクマガジン(Make: Magazine)を発行する米メイカーメディア(Maker Media)社のライセンスのもと、世界200箇所以上で開催される世界最大のDIY(ものづくり)の祭典です。アメリカ・シリコンバレーで開催されるメイカーフェア・ベイエリア(Maker Faire Bay Area)は、最大規模の「フラッグシップ」フェアと呼ばれ、2019年で14回目となります。来場者12万人以上、500以上の展示物が集結する最大規模のメイカーフェアです。

今年は18歳以下のメイカーを対象とした「ヤング・メイカー(Young Makers)」カテゴリが新たに設けられ、子どもたちが主体となる展示が100以上もありました。とくに金曜日は小学生だと$10で入場できたため、担任の先生が引率のもと、スクールバスで訪れる小学生もたくさんいました。

大人顔負けの「ヤング・メイカー」の作品たち

では、2019年のメイカーフェアで見た多くの展示から、ヤング・メイカーの子どもたちの作品を中心にいくつかご紹介します。

「自作ランプシェード」を自力で設計した11歳

サンラフェル在住のアンガス・ラフェルミナ(Angus LaFermina、Gus)くんは11歳。パリのデザイナーであるジュリー・ランソム(Julie Lansom)の作品からインスパイアしたオリジナルランプシェードを製作しました。レーザーカッターを自力で習得し、2ヶ月の試行錯誤を経てここまでこぎつけたそう。MDF材で枠組みをつくり、これに糸を巻き付けた作品です。

「最初は大変だったけど、今は1時間半くらいで完成するよ」とは本人の弁。金曜日のオープン直後に話を聞きましたが、なかなかどうして堂々とした受け答えっぷりです。

Sputnik Lamps

Arduinoでつくったミニ・テトリス

11歳のアルプ・メテ・セネル(Alp Mete Senel)くん。6歳のときにコーディングをはじめ、7歳で簡単なゲームをつくったりしていたのですが、2019年はArduino Miniに8×8マトリクスLEDを4つつなげ、ジョイスティックとスピーカーを付けてテトリスを完成させました。実は兄と2人でやっている別のプロジェクトもあったのですが、自身のプロジェクトも同時に仕上げたうえでの堂々の展示です。

アクリル板でキチンと筐体もつくり、モバイルバッテリーにUSBでつなげて動作します。

実際のゲームの動きはYouTube動画をご覧ください。

MAX72 Tetris

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DIYピンボールマシンを完成させた12歳

12歳のオーウェン・シェーファー(Owen Schafer)くん。Arduino互換機を使ったピンボールマシンを自力で完成させました。

見た目が地味じゃないかって?いやいや、3Dプリンターですべてのパーツを製作し、バンパーにボールが当たるのをArduinoで把握して、光や音とともに液晶に得点を表示するという手の込みようです。

本人は寡黙で、説明はそっけない感じ。ただ黙々と他の子どもたちにマシンを遊ばせて、不具合が出たら都度直していました。裏を見ると努力の跡がうかがえます。

DIY Pinball Machine

ラズパイ上で顔認識プログラムを使いこなす14歳

サンタバーバラのヤング・メイカー、ジェームズ・ウォルシュ(James Walsh)くんは6歳のときからメイカーフェアに参加している14歳。今年の展示はRaspberry PiとOpenCVを使った顔認証プログラム
。この認識精度が変装によってどのように変化するかを調べました。

実際に私の顔をその場でRaspberry Piに学習させ、つけ髭やメガネで認識スコアがどのように変化するかをリアルタイムに見れます。14歳になると展示物そのものだけではなく、見せ方もうまくなってきます。テーマの選び方、パネルを使ったプレゼンテーションの仕方を含めて、よく工夫されているなと思いました。

ベイエリアから世界へ〜メイカーフェアを通じた「学び」

開催直前の5月10日、地元紙サンフランシスコ・クロニクルに「メイカーフェア・ベイエリアは2019年が最後になるかもしれない」という記事が掲載されました。運営コストの高騰とスポンサー確保の問題から、広大な敷地を持つ、サンマテオ・イベントセンターでの開催が難しくなりつつあるのは事実のようです。

しかし、メイカーフェアはここサンマテオでのフラッグシップの他に、サンノゼやオークランド、ギルロイ、アラメダなど、シリコンバレー各地でも開催されています。個人や小規模チームでもものづくりができるようになった今、子どもたちを含むすべての参加者が「自分のつくりたいもの」をつくり、それを自由に発表することで「学び」がある。この事実は、フラッグシップのメイカーフェア開催そのものが厳しくなろうとも、不変であるように思います。事実、メイカーフェアは規模の大小を問わず世界中で開催され、その輪はより大きく広がっています。

日本ではこの2019年8月に東京ビッグサイトでMaker Faire Tokyoが開催されます。みなさんもお子さんと一緒に足を運ばれてはいかがでしょうか?