「宇都宮・analog books」オススメの一冊『たいせつなこと』【子どものための古書探し】

活字離れが叫ばれている昨今、たまには誰かのぬくもりを感じる「本」を探しにおでかけしてみませんか? 今回オススメする古本屋さんは栃木県・宇都宮市の「analog books」です。店主がオススメする一冊も紹介します。

【子どものための古書探し】は毎月8日更新!これまでの記事はこちら

これまでの【子どものための古書探し】はこちら

静かな熱気漂う「古本まつり」で会える

全国の古本屋さんが集う「古本まつり」。これにワクワクする気持ちをどのように表現しましょうか。体がポッポと熱いのに頭は冷静に「獲物」を探す、まるで本の山を前に、狩人に早変わりするよう。

狩人ですから目当ての「獲物」=本が目に飛び込んできても、決して焦ってはいけません。周りにはライバルたちがぞろぞろ(いる錯覚?)。横取りされてはたまらないので、何でもないフリして本に手を伸ばし、ゆっくりとページをめくっていきます。ほほう、この手触り、読み応えのある文章、美しい挿絵、そしてきちんと手が届く嬉しいお値段。

「古本の神さま!」──まさかの出会いに感謝する瞬間は数知れず。古本まつりならではの醍醐味です。時には古書市と銘打ち、書店やデパート、駅構内や、街かど、いつもの場所で少しの間だけ開催されています。

オープンしているときには電球が灯る

今回ご紹介するのは、そんな古本まつりやイベント出店をメインに活動している「analog books」です。2019年5月にお店をオープンしたと聞き、宇都宮へ向かいました。

壁一面、つくえいっぱいに絵本の山

場所は、宇都宮駅西口改札から田川サイクリングロード沿いに歩くこと12分。ぼんやりとした電球の灯りに人の気配を感じます。

まるでカフェのような外観

お店に入って目に飛び込むのは、壁一面の画集や図録、さらに机いっぱいに並ぶ絵本です。絵本は国内外問わず、色合いも鮮やかなものばかり。豊富な品揃えから、英語版のレオ・レオニ作品を見つけました。日本語版との読み比べもチャレンジしてみたくなりますね。

画集や絵本が平置きされている。本棚には雑誌や書籍

一冊の絵本の下に、またおもしろそうな一冊、そして手を伸ばすとまた一冊。これぞエンドレス。掘り出し物を見つけたくなる、古本まつりの感覚と近いところがありました。

かがむと机の下にもたくさんの絵本

ひと息入れたくなったら、窓際のカウンターで休めますよ。お子さんも一緒に選べるよう、小さな椅子や木のおもちゃが無料で貸出も。時間をかけた本探しに嬉しい空間です。

「今日は開いてるんですね!」

現在の「analog books」は関東へのイベント出店がメインです。そのため時期が重なってしまうと、ひと月に数えるほどの営業ということも少なくありません。オープンした日は、ふらり立ち寄ったお客さんから「今日は開いてるんですね!」と意外な喜ばれ方をすることもあるほど(笑)。

レジ周りも見逃せない。洋書や、布絵本、ポストカードがある

飛び出す絵本は子どもから大人まで興味津々

ゴールは未知数。お店ならではの空間

そんな「analog books」ですが、店の形を取るのは二度目。一度は2007年から2011年までの4年間、日光で古本屋を構えていらっしゃいました。店舗の水漏れと震災というダブルパンチを受け、あえなく閉店へ。約8年ぶりのオープンに、模索する部分も多いといいます。

「本の本」も。小説からエッセイ、アート、ハンドメイド、料理、雑誌まで

そもそも、イベント出店をメインに活動しながらも、お店を出すことになった訳は「縁があって」と店主の片山さん。きっかけは同じくいちょう通りで、一軒隣の老舗の古本屋「秀峰堂」さんから声をかけられたこと。おかげで「秀峰堂」と「analog books」と2軒の古本屋さんが並ぶ景色を楽しめるのですから、思わず縁っていいな感じずにいられません。

また営業日が少ないぶん、お店ならではの空間をつくっていく方法を考えているそう。また読書会やギャラリーなどの方法も探しながら、ゴールは何も決まってないとも明かしてくれました。

海外のトランプも見てるだけで楽しい

オススメの一冊 あなたにとって「たいせつなこと」は

最後に、店主の片山さんからオススメの1冊を選んでいただきました。『たいせつなこと』は、作者の言葉が語り掛ける絵本です。色彩豊かな風景と、詩のような言葉の数々。翻訳は樹木希林さんを母にもつ内田也哉子さん。

草にとって大切なことは? 空にとって大切なことは? あなたにとって大切なことは? 何気ない疑問を投げかけ、忘れてしまいがちな当たり前のことを思い出させてくれる一冊です。

シャイな性格なので、と本で顔を隠す店主・片山さん

片山さんは、弱気になってしまったとき、不安になってしまったとき、この絵本を手に取るのだそう。「つい二日前にも読んで、ぐっときた」と、はにかんでいました。

思いもよらないタイミングで本を届けてくれる古本屋。知る人ぞ知る「analog books」は、みなさんが訪れる場でもすでに出会っているかもしれません。街のあちこちで本に触れる楽しさに気づかせてくれるお店。たくさんの人にさまざまな本と触れ合って欲しい、そんな気持ちが伝わってきます。

イベントではテント型の出店が多い。平置きの本から、吊り下げられた本まで選ぶ楽しみがぐんと増す。※写真は「宇都宮ブックライツ」2019年4月開催時

基本情報

※駐車場なし。(店舗周辺のコインパーキングをご利用ください。)

店長オススメの一冊

『たいせつなこと』

  • 作:マーガレット・ワイズ・ブラウン
  • 絵:レナード・ワイスガード
  • 訳:内田 也哉子
  • 出版社:フレーベル館
  • 刊行年 : 2001年

これからの出店情報

  • 「吉祥寺パルコの古本市」 2019年9月16日(月祝)まで 吉祥寺
  • 「Guinguette ガンゲット」2019年9月14日(土)〜15日(日) 茨城県水戸市
  • 「古花市」2019年9月21日(土)~23日(月祝)群馬県前橋市※当店は21(土)、22日(日)の二日間出店。
  • 「Sen to Sen」2019年9月29日(日)〜30日(月)千葉県柏市
  • 「足利学校門前マルシェ」2019年10月6日(日)栃木県足利市
  • 「クラモノ。」2019年10月19日(土)〜20日(日) 栃木県栃木市

この記事が気に入ったら「いいね!」をクリック!バレッド(VALED PRESS)の最新情報をお届けします!

モバイルバージョンを終了